【製品機能 連載目次】
TRIZの中に、機能や属性から検索してヒントを得る技法があります。知識ベースとか逆引き辞書とか言われているEffectsと呼ばれるツールです。筆者は、TRIZと出会う前、アイデアに困り切羽詰まった時、次のような方法で、ヒントを模索していました。知財部のデータベースをパラパラめくって図や課題解決プロセスを斜め読みしたり、書店や図書館にある書籍のタイトルや見出しに目を通したり、異分野の展示会などでアナロジーのヒントを探ったりしていました。実はこれらが、Effectsのコンセプトだったのです。
1. 機能による分類(物理・化学・生物学的効果のデータベース)
現在の抽出されたアイデアが不十分だと思われる場合に適用します。Effectsのコンセプトは、解決策の百科事典と呼ばれているほどです。機能によって分類されたヒントとなる定理、原理、科学的現象、特性等は、効果的なアイデアの切り口のヒントとなります。
このような、知識の機能による分類は、さまざまな産業間や学問分野間に存在している境界を引き剥がすのに、非常に効果的な方法となっています。可能な新しい解決策を見つけるためにそのようなデータベースを使えば、仮にそれらの解決策を理解できなくとも、少なくとも解決策のヒントになります。例えば、図1のようなキーワードが機能と物質の状態でマトリクスとした時の物理・化学・生物学的効果のヒントになるわけです。
図1. データベースの機能による分類事例
2. 機能を用いた特許の検索方法
特許のデータベース検索には、特許庁のデータベ―ス、J-PlatPat、WIPO PATENTSCOPE、Google Patents等が無料で使えるようになっています。つまり、潜在的に巨大な量のデータベースに誰でも容易にアクセスできる時代なのです。そのデータを利用しない手はないはずです。TRIZをベースとした検索技術を活用すれば、検索作業を各段に簡単にできます。データを検索する主な手順を以下に述べます。
(1)事前準備としてまず手元に用意すべきものは、必要としている具体的な解決策の明確な定義、自分
の問題の解決策として提供しようとしている有用な機能、および 制約条件です。
(2)次に、問題や課題に関係しそうな知的財産が、どれだけの量あるのかを概観することです。これを
するには、まず具体的な要件を考え、段々とこれを抽象化して図に示されているような一般化した
機能の候補を選びます。
(3)前に定義した制約条件を使って、検索の視野範囲を限定し、特定の機能と固体、液体、気体、場等
のキーワードと併せて検索を実行します。
(4)最新の解決策選択肢を探しているのなら、登録済み特許ではなく、出願段階の特許の検索から始め
ることになります。
(5)選んだキーワードを特許のテキスト全文を対象にして検索することが普通は望ましい。もしこれで
あまりにもヒット件数が多くなるなら、キーワードを絞り込みます。
3. 特許検索の具体例(TRIZ実践と効用(1)体系的技術革から引用)
例えば、見つけたいもの(コト)を、「液状石鹸を汲み上げる装置」とします。そして、「できるだけ製造コストが安いもの」「ユーザーがポンプを操作するたびに、一定量の石鹸が信頼性高く出てくること」「既存の製造能力を使えること」等を制約条件とします。
・具体的な要求: 一定量を汲み出す、液状石鹸のポンプ
・抽象化した要求:液状石鹸を汲み上げる&高粘度の液を動かす
◆米国特許データベース
- 「液体」and「石鹸」and「ポンプ」= 1211件 検出
- (「動かす」or「汲み出す」)and「粘性のある」and「液体」= 6975件 検出
...
「ポンプ」(タイトル中に)and「液体」= 1604件 検出
「ポンプ」(タイトル中に)and「液体」and「コスト」= 570件 検出
「ポンプ」(タイトル中に)and「石鹸」= 32件 検出(これは制限しすぎ)
「セルフ」and「ポンプ」(タイトル中に)= 43件 検出
(「セルフ」and「ポンプ」and「石鹸」= 0件 検出(!))
【参考文献】
粕谷茂:図解これで使えるTRIZ/USIT(日本能率協会)
Darrell Mann 他、TRIZ実践と効用(1)体系的技術革
◆関連解説『TRIZとは』