評価点基準は明確に定義すべきか?という質問に対して、当然と思う方が多いと思います。この点に関しては、メリットとデメリットがあり、私は両者を考えた上でその定義の明確性のレベルを決めるべきと考えています。
1.評価点基準を明確に定義するメリット
評価点基準を明確に定義するメリットには、以下があります。
(1)評価点の一貫性が保てハードル点の信頼性が向上する
評価点基準を明確に定義・記述することで、評価点に一貫性が出てきます。テーマ毎にその点数の意味が違っては、評価の基準がぶれてしまうことになります。その結果、ハードル点を設定する場合には、その信頼性を損なってしまうことになります。
(2)プロジェクトチームの目標が明確になる
2点目に、プロジェクトチームがゲートでの承認のために目指す目標が明確になります。評価項目が明示されているだけでは、十分ではありません。この目的のためには、その評価項目においてどの水準を達成しなければならないかが、記述が明示されている必要があります。
(3)評価点付けが容易になる
最後に、評価点基準が明確ですから、評価点付けが容易になります。また、評価点付けに時間が掛かりません。
以上、そもそもステージゲート法の導入目的が上のものであり、これをせずしてステージゲート法を導入する理由がないと考える方もいるかもしれません。しかし、実は評価点基準を明確に定義することによる、大きなデメリットもあるのです。
2.評価点基準を明確に定義するデメリット
評価点基準を明確に定義するデメリットとは、不確実性が大きい環境下では、明確で理解し易い、議論し易い評価点基準を作ることが難しいことです。
例えば売上高の評価をする場合には、 どの程度の規模の売上高が期待できるか? 売上高算定のロジックは適正か? そのロジックの前提は確実か? など、評価においては複数の要素を考慮して評価をしなければなりません。
売上高などの比較的単純は評価項目でも、このように2つや3つの要素を考えなければなりません。ましてやビジネスモデルの適正などの面での評価は、考慮すべき要素は数多く出てきます。
例えば、 自社の強みを反映したビジネスモデルになっているか? 自社が担う機能はビジネスモデルによる価値創出において重要な機能となっているか? パートナーは明確か? パートナーの選定は適切か? ・・・・ といったように、考慮すべき要素は非常に多くなります。
これらの要素を明確に評価点基準の文章に落とし込み明示することは、現実的には可能です。項目をより詳細な下のレベルの評価項目に因数分解し、その評価項目で評価点基準を設定すれば良いのです。しかし、その結果、評価項目の数は膨大になり、評価者がそのテーマの評価の全体像、すなわち森から細かい評価、すなわち木や枝に意識が移ってしまうことです。これはテーマ評価においては避けるべき状態です。
これらの枝の中で重要な要素のみを選び、評価項目とするという考え方もありますが、テーマによりどれが重要かは変わるもので、やはり網羅性は大切です。
以上のメリット・デメリットに、どう対処したら良いのでしょうか?
3.不確実性が低い既存製品もしくはその周辺テーマ
不確実性が低く、社内で市場や事業が良く理解され、それらの理解が共有されている場合には、不確実性に関わる評価項目を削除することができますので、評価項目数は少なくて済みます。従って、明確な評価点基準を設け評価をすることのデメリットは、大きくはありません。その...
4.不確実性が高い新しい事業・製品
一方上で説明したように、不確実性が高い場合には、上位の評価項目(森の視点から評価できるように、評価項目は8つ程度以下)の単位で、大まかな評価点基準の定義に基づき、評価を行なうのが適切と思います。大まかな定義というは、大変良い、良い、普通、悪い、大変悪いといったレベルの表現で設定された評価点基準です。
この場合評価点付けを行なう評価者は、自分自身の頭で関連する様々な要素とその要素の重要性を総合的に考え、評価点付けを行います。
ステージゲート法は、意思決定支援の仕組みであり、意思決定を代替する仕組みではないことに注意しなければなりません。