革新的テーマを生むための4つの要件

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 前回は、革新的テーマ発見のために自社の強みを抽出することを解説しました。今回は、革新的テーマを生むための4つの要件です。ここまで、スパーク(化学変化、新結合)によって革新的テーマを生み出すための3つの原料「市場知識」「技術知識」「自社の強み」のうち、「自社の強み」について議論してきました。これらの原料は、放っておいて自然に収集さるものではありませんし、また原料が揃っても、自然にテーマが生まれるものでもありません。これら原料の必要性を認識した上で、企業として革新的テーマを生むための仕組みを作る必要があります。今回は、その仕組みを構成する4つの要素について見て行きます。

 

1.環境を用意する 〜『緊急度』を優先する

 仕事を分類する2つの軸に、『重要度』と『緊急度』があります。この2つの軸に沿って、それぞれ「高い」、「低い」に分けることで、4つの象限から構成されるマトリクスの図を作ることができます。

 通常、『重要度』も『緊急度』も高い業務は、放っておいても優先的に取り組まれます。また『重要度』が低くても、『緊急度』が高い仕事も、同様に優先的に取り組まれます。しかし、『重要度』が高くても、『緊急度』が低い仕事は、それでなくても多忙な中では、よほどの時間的な余裕が生まれない限り、取り組みがなされることはありません。

 革新的テーマを創出する仕事というものは、この『重要度』は高いが『緊急度』が低いというまさに典型的業務です。このため、日々『重要度』が高かろうが低かろうが優先的に取り組まれる『緊急度』の高い業務の中に埋没してしまうのです。

 しかし、ステージゲート法は不確実性に対処するための重要なコンセプトである「多産多死」を前提としています。そのステージゲート法を機能させるためには、どうしても『緊急度』優先という慢性的な問題を乗り越えて、革新的テーマを創出するための活動に取り組む環境を用意しなければなりません。

 

2.多様なソースから情報・知識を集める

 市場情報、技術情報、自社の強みといった情報・知識を集める前提として、「多様性」が重要となります。水素ばかり集めてもスパーク(爆発)は起きないように、水素と化学反応を起こし、爆発させるための別の材料、例えば酸素が必要となるのです。

 多様性がもたらす効果については、「集団はきわめて優れた知力を発揮するし、それは往々にして集団の中で一番優秀な個人の知力よりも優れている。」(『みんなの意見は案外正しい』ジェームス・スロウィッキー著、角川グループパブリッシング)ということがあります。これは多くの人が経験していることですし、効果があるからこそ、多様な人間から構成される人類は、多様性により可能となる創意工夫により長い歴史の中で進歩してきたとも言えます。

 したがって、革新的テーマを創出する際は、積極的に「多様性」を求めて、情報・知識を収集しなければなりません。そのために、自社の組織を最大限に活用(個人→職場のグループ→会社全体)し、さらには社外の他のステークホルダーを広く求めて、情報・知識を収集する必要があります。この10年ぐらいで世界中の企業で注目を浴びているオープンイノベーションは、まさにそのためのものです。加えて、このような多様性を求める活動を通じて、自分自身の「個人」としても、単一の視点ではなく、多様な視点を自分の頭の中に持ち、頭をやわらかくする、という作業もしていかなければなりません。頭をやわらかくすると、情報・知識の感受性が増幅され、より多様な情報が収集されるという良循環を生み出すことができるようになります。

 

3.テーマの創出に向け、情報・知識を『圧縮』する

 天才は、多様な情報・知識を集めさえすれば、スパークを起こせるかもしれません。しかし、企業での活動では、一握りの天才に頼らず、普通の人達も革新的テーマを継続的に創出できる仕組みが必要です。

 ですので、多様な知識に基づき、革新的アイディアを創出する方法論が必要となります。...

 前回は、革新的テーマ発見のために自社の強みを抽出することを解説しました。今回は、革新的テーマを生むための4つの要件です。ここまで、スパーク(化学変化、新結合)によって革新的テーマを生み出すための3つの原料「市場知識」「技術知識」「自社の強み」のうち、「自社の強み」について議論してきました。これらの原料は、放っておいて自然に収集さるものではありませんし、また原料が揃っても、自然にテーマが生まれるものでもありません。これら原料の必要性を認識した上で、企業として革新的テーマを生むための仕組みを作る必要があります。今回は、その仕組みを構成する4つの要素について見て行きます。

 

1.環境を用意する 〜『緊急度』を優先する

 仕事を分類する2つの軸に、『重要度』と『緊急度』があります。この2つの軸に沿って、それぞれ「高い」、「低い」に分けることで、4つの象限から構成されるマトリクスの図を作ることができます。

 通常、『重要度』も『緊急度』も高い業務は、放っておいても優先的に取り組まれます。また『重要度』が低くても、『緊急度』が高い仕事も、同様に優先的に取り組まれます。しかし、『重要度』が高くても、『緊急度』が低い仕事は、それでなくても多忙な中では、よほどの時間的な余裕が生まれない限り、取り組みがなされることはありません。

 革新的テーマを創出する仕事というものは、この『重要度』は高いが『緊急度』が低いというまさに典型的業務です。このため、日々『重要度』が高かろうが低かろうが優先的に取り組まれる『緊急度』の高い業務の中に埋没してしまうのです。

 しかし、ステージゲート法は不確実性に対処するための重要なコンセプトである「多産多死」を前提としています。そのステージゲート法を機能させるためには、どうしても『緊急度』優先という慢性的な問題を乗り越えて、革新的テーマを創出するための活動に取り組む環境を用意しなければなりません。

 

2.多様なソースから情報・知識を集める

 市場情報、技術情報、自社の強みといった情報・知識を集める前提として、「多様性」が重要となります。水素ばかり集めてもスパーク(爆発)は起きないように、水素と化学反応を起こし、爆発させるための別の材料、例えば酸素が必要となるのです。

 多様性がもたらす効果については、「集団はきわめて優れた知力を発揮するし、それは往々にして集団の中で一番優秀な個人の知力よりも優れている。」(『みんなの意見は案外正しい』ジェームス・スロウィッキー著、角川グループパブリッシング)ということがあります。これは多くの人が経験していることですし、効果があるからこそ、多様な人間から構成される人類は、多様性により可能となる創意工夫により長い歴史の中で進歩してきたとも言えます。

 したがって、革新的テーマを創出する際は、積極的に「多様性」を求めて、情報・知識を収集しなければなりません。そのために、自社の組織を最大限に活用(個人→職場のグループ→会社全体)し、さらには社外の他のステークホルダーを広く求めて、情報・知識を収集する必要があります。この10年ぐらいで世界中の企業で注目を浴びているオープンイノベーションは、まさにそのためのものです。加えて、このような多様性を求める活動を通じて、自分自身の「個人」としても、単一の視点ではなく、多様な視点を自分の頭の中に持ち、頭をやわらかくする、という作業もしていかなければなりません。頭をやわらかくすると、情報・知識の感受性が増幅され、より多様な情報が収集されるという良循環を生み出すことができるようになります。

 

3.テーマの創出に向け、情報・知識を『圧縮』する

 天才は、多様な情報・知識を集めさえすれば、スパークを起こせるかもしれません。しかし、企業での活動では、一握りの天才に頼らず、普通の人達も革新的テーマを継続的に創出できる仕組みが必要です。

 ですので、多様な知識に基づき、革新的アイディアを創出する方法論が必要となります。アイディア発想法など、様々な方法論が試され、方法論に落とされているので、有効なものを選択し、自社の中で活用していくことが必要です。

 なお、方法論も進化していますので、最新の方法論については常に目を光らせ、情報収集をするという活動も重要です。

 

4.組織構成員が意欲をもち『発火』させる

 最後に忘れてはならないのが、個人レベルでの意欲です。いくら仕掛け(ハード)を用意しても、最終的にアイディアを創出するのは(集団の構成員としての)個人です。個人の意欲が高くなければ、最終的に『発火』はしません。個人が常に高いエネルギーレベルを維持し、高いハードルや不確実性を内在する革新的テーマを生み出す苦しみを超える仕組みもなければいけません。 

 こういったソフトの問題は心の問題ですので、そのマネジメントは簡単ではありません。しかし、イノベーティブな組織からのこのマネジメント法を学ぶことはできます。これらについても、いずれ議論したいと思います。

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この記事の著者

浪江 一公

プロフェッショナリズムと豊富な経験をベースに、革新的な製品やサービスを創出するプロセスの構築のお手伝いをいたします。

プロフェッショナリズムと豊富な経験をベースに、革新的な製品やサービスを創出するプロセスの構築のお手伝いをいたします。


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