ステージゲートでの事業評価,顧客は価値に対し対価を払う!

更新日

投稿日

 今回は事業評価の項目として極めて重要な、顧客提供価値について説明します。

 

1.事業評価項目としての顧客提供価値の重要性:顧客は価値に対して対価を払う

 以前にも述べたように、ステージゲート法のゲートの役割は、徹底して事業成功の視点から、テーマを評価することです。事業で成功する第一の要件は、顧客がその製品(プロジェクトの最終成果としての)に対し、価値を見出し対価を払ってくれることです。なぜなら、まずなによりも顧客が対価を払ってくれるのは、自社製品がもたらす価値に対してというきわめて「当り前」の事実があるからです。また、その提供価値により売上高や利益率が大きく影響されます。

 このように、顧客提供価値は事業評価の出発点であり、当然事業の評価項目にも顧客価値についての評価項目がなければなりません。これは革新的テーマであろうと改善的テーマであろうと、その重要性は変わりません。

 

2.ステージゲート法の大きな役割:顧客価値実現機会の発見とコンセプトへの翻訳

 顧客は価値に対し対価を払う点について、異論のある方はあまりいないと思います。しかし、実際の技術開発にしても製品開発にしても、この点が忘れがちです。それはなぜでしょうか?その理由は、適切な顧客価値提供機会を見つけ出す仕事が難しいからです。特に、革新的な製品であればなおさらです。結果的に、安易に他社製品の真似や顧客から直接の要求のあったテーマに取り組むということが起こりがちです。

 実は、この問題に対処するために、どう顧客提供価値の機会を見つけるのか、それをどう確実な製品コンセプトに翻訳するのかについてのプロセスを示すのがステージゲート法の重要な役割の一つなのです。このような視点からのステージの様々な活動はいずれ説明するとして、今回はゲートに絞って議論をします。

 

3.ゲートでの評価項目と評価の為の知見

 具体的な評価の質問事例としては以下の質問があります。

-提供顧客価値は明確か?  

-当該製品・技術は大きな顧客価値を創出するか?  

-当該製品・技術は長い期間にわたり継続的に顧客価値を創出するか?  

-当該製品・技術が提供する顧客価値は新しいか?

-他社が既に同じもしくは他の方法で提供していないか?

 これらの視点からの適性な評価をするには、ゲートの評価者であるゲートキーパーは(そして創出価値を見極め、その実現のための計画を立て、それを実行するプロジェクトチームも)、顧客はどのような場合に価値を認識するかについても理解しておかなければなりません。

 顧客はどのような場合に、価値を認識するのでしょうか?それは、消費財と生産財とではかなり異なりますが、今回は生産財についてお話します。

 

4.顧客による価値認識:生産財の場合

 生産財の顧客がどのような場合に価値を認識するかは、経済的価値、すなわち収益への貢献に尽きます。その点は、経済性以外の点でも価値が認識される消費財よりも明確です。

 生産財の価値提供分野を以下と考えるのべきだと、私は考えています。

 生産財の価値提供は金銭的価値と非金銭的価値に分けることができます。金銭的価値は、顧客の全体コスト・リスクの低減、顧客製品の販売数量の拡大、顧客の製品売価の上昇に分けることができます。つまり、コスト・リスクが低減することができることと、売上が拡大することです。コスト低減と売上高拡大の方策は大きく異なります。上で生産財では経済的...

 今回は事業評価の項目として極めて重要な、顧客提供価値について説明します。

 

1.事業評価項目としての顧客提供価値の重要性:顧客は価値に対して対価を払う

 以前にも述べたように、ステージゲート法のゲートの役割は、徹底して事業成功の視点から、テーマを評価することです。事業で成功する第一の要件は、顧客がその製品(プロジェクトの最終成果としての)に対し、価値を見出し対価を払ってくれることです。なぜなら、まずなによりも顧客が対価を払ってくれるのは、自社製品がもたらす価値に対してというきわめて「当り前」の事実があるからです。また、その提供価値により売上高や利益率が大きく影響されます。

 このように、顧客提供価値は事業評価の出発点であり、当然事業の評価項目にも顧客価値についての評価項目がなければなりません。これは革新的テーマであろうと改善的テーマであろうと、その重要性は変わりません。

 

2.ステージゲート法の大きな役割:顧客価値実現機会の発見とコンセプトへの翻訳

 顧客は価値に対し対価を払う点について、異論のある方はあまりいないと思います。しかし、実際の技術開発にしても製品開発にしても、この点が忘れがちです。それはなぜでしょうか?その理由は、適切な顧客価値提供機会を見つけ出す仕事が難しいからです。特に、革新的な製品であればなおさらです。結果的に、安易に他社製品の真似や顧客から直接の要求のあったテーマに取り組むということが起こりがちです。

 実は、この問題に対処するために、どう顧客提供価値の機会を見つけるのか、それをどう確実な製品コンセプトに翻訳するのかについてのプロセスを示すのがステージゲート法の重要な役割の一つなのです。このような視点からのステージの様々な活動はいずれ説明するとして、今回はゲートに絞って議論をします。

 

3.ゲートでの評価項目と評価の為の知見

 具体的な評価の質問事例としては以下の質問があります。

-提供顧客価値は明確か?  

-当該製品・技術は大きな顧客価値を創出するか?  

-当該製品・技術は長い期間にわたり継続的に顧客価値を創出するか?  

-当該製品・技術が提供する顧客価値は新しいか?

-他社が既に同じもしくは他の方法で提供していないか?

 これらの視点からの適性な評価をするには、ゲートの評価者であるゲートキーパーは(そして創出価値を見極め、その実現のための計画を立て、それを実行するプロジェクトチームも)、顧客はどのような場合に価値を認識するかについても理解しておかなければなりません。

 顧客はどのような場合に、価値を認識するのでしょうか?それは、消費財と生産財とではかなり異なりますが、今回は生産財についてお話します。

 

4.顧客による価値認識:生産財の場合

 生産財の顧客がどのような場合に価値を認識するかは、経済的価値、すなわち収益への貢献に尽きます。その点は、経済性以外の点でも価値が認識される消費財よりも明確です。

 生産財の価値提供分野を以下と考えるのべきだと、私は考えています。

 生産財の価値提供は金銭的価値と非金銭的価値に分けることができます。金銭的価値は、顧客の全体コスト・リスクの低減、顧客製品の販売数量の拡大、顧客の製品売価の上昇に分けることができます。つまり、コスト・リスクが低減することができることと、売上が拡大することです。コスト低減と売上高拡大の方策は大きく異なります。上で生産財では経済的価値につきると述べましたが、非金銭的価値は直接的に収益に結び付くものではないものの、最終的には経済的価値をもたらす場合があります。例えば、社内向けと社外向けとでは活動も異なり、顧客の『社内』のステークホルダーである人材・組織力の向上(例えば従業員の能力の向上)、そして顧客の『社外』のステークホルダーに対する社会的価値の向上(例えば、顧客の製品の環境対応性の向上)などです。

 覚え易いように、私はこれらの価値提供分野をCUPOS(Cost、Unit、Price、Organization、Society)という名前をつけています。

 それぞれ5つの分野でどう顧客提供価値を実現するかについては、次の機会に議論したいと思います。

   続きを読むには・・・


この記事の著者

浪江 一公

プロフェッショナリズムと豊富な経験をベースに、革新的な製品やサービスを創出するプロセスの構築のお手伝いをいたします。

プロフェッショナリズムと豊富な経験をベースに、革新的な製品やサービスを創出するプロセスの構築のお手伝いをいたします。


「ステージゲート法」の他のキーワード解説記事

もっと見る
革新的テーマを継続的に創出するための内発的動機付け

     研究開発担当者の心理的な面に働きかけ革新的なテーマ創出を促す「ポジティブ要因」(強制的ではなく主体的に取組ませる要因...

     研究開発担当者の心理的な面に働きかけ革新的なテーマ創出を促す「ポジティブ要因」(強制的ではなく主体的に取組ませる要因...


ステージゲートプロセスの活用(その1)

1.ステージゲートプロセスの目的    ステージゲートプロセスは、日本では研究開発テーマを管理する手法と理解されていますが、その理解は正しく...

1.ステージゲートプロセスの目的    ステージゲートプロセスは、日本では研究開発テーマを管理する手法と理解されていますが、その理解は正しく...


自部門内 研究テーマの多様な情報源(その1)

 情報源に多様性を求める場合、一番身近なのが、自部門内で様々な情報を集めることです。身近にもかかわらず、意外と活用されていないのではないでしょうか?もちろ...

 情報源に多様性を求める場合、一番身近なのが、自部門内で様々な情報を集めることです。身近にもかかわらず、意外と活用されていないのではないでしょうか?もちろ...


「ステージゲート法」の活用事例

もっと見る
積極的情報発信の事例

  「情報の収集のための積極的情報発信」の必要性については、りんご(情報)を収穫するのに、一つ一つのりんごをりんごの木からもぎ取るのではなく、りんごの木の...

  「情報の収集のための積極的情報発信」の必要性については、りんご(情報)を収穫するのに、一つ一つのりんごをりんごの木からもぎ取るのではなく、りんごの木の...


3Mにおける組織内の知識・情報活用の事例

 研究テーマの設定、推進にあたって、組織内の知識・情報(特に技術に関する)の活用は極めて有用ですが、それを徹底しているのがイノベーションで有名な3Mです。...

 研究テーマの設定、推進にあたって、組織内の知識・情報(特に技術に関する)の活用は極めて有用ですが、それを徹底しているのがイノベーションで有名な3Mです。...


オープンイノベーションにおけるライトハウスカスタマーの事例2件

 情報・知識を多様化するコンセプトとして、オープンイノベーションが注目されています。今回は、そのための情報発信先としてのライトハウスカスタマーについて、B...

 情報・知識を多様化するコンセプトとして、オープンイノベーションが注目されています。今回は、そのための情報発信先としてのライトハウスカスタマーについて、B...