新工法 スクリーン印刷とは(その3)
2018-02-14
今回から、連載で、スクリーン印刷について解説しています。今回は、第3回です。
近年、0402や0201サイズの微小電子部品の実装のためのクリームはんだ印刷において従来の「コンタクト印刷」では、「欠け」や塗布量のばらつきの問題が大きくなってきました。この原因は、下図のように、「時差版離れ」では、マスク開口へのペースト充てん後、開口部のペーストが時間経過で「疑似固体化」し、版離れさせる為であり、この工法の原理的な問題であると考えられます。
これに対して、「同期版離れ」の通常のスクリーン印刷は、ペーストを流動状態のまま充てん、版離れを行うため、「欠け」が発生せず、塗布量のばらつきも小さくなります。従来のコンタクト印刷の利点と通常のスクリーン印刷の「同期版離れ」を組み合わせた「同期版離れコンタクト印刷」工法を提案します。この新工法は、メタルスキージの前方部では、マスクと基材はコンタクト状態であり、マスクの開口が大きい場合でも、ペーストがストローク方向に漏れてにじむことはありません。後方部では、スクリーン版の反発力で流動状態のペーストがメタルスキージの移動に追随する「同期版離れ」を実現しています。
この連載では、スクリーン印刷される流動体の呼称としてインキ又はペーストという用語を使用しています。英語名ink は、インクとよばれることもありますが、(社)日本印刷産業連合会での正式名称はインキとのことであり、こちらを使用します。ペーストとは、エレクトロニクス業界でよく使用される言葉で、比較的粘度が高いペースト状のインキのことを指します。大手のインキメーカーでは,印刷インキをリキッドインキとペーストインキに分けて呼ぶこともあるようです。インキもペーストも印刷される材料のことで同じ意味で使用できます。加飾インキ、エッチングレジストインキ、厚膜ペースト、銀ペースト、絶縁ペーストなどがあります。
この連載で提案している「ペーストプロセス理論」の考え方では、高品質スクリーン印刷における条件のほとんどは、「前提条件」であり、適切な知識と論理的な考えで、適正化し、標準化することが可能です。印刷条件も適正な印刷条件範囲が決まっており、高品質スクリーン印刷のためには、インキ・ペーストの印刷性能と機能を両立する事が最も重要であるとしています。
現在、インキ・ペースト以外の要素技術のすべては、日本国内で調達可能です。正しい知識と経験で適切なサプライイヤー、製品を選択することが可能になります。しかしながら、それぞれの応用分野で、高い機能と印刷性能を兼ね備えたインキ・ペーストを入手するには困難が伴うことが多々あります。なぜなら、現状では、インキ・ペーストのサプライヤーの印刷性能に対する認識がバラバラで定まっていないからだと思われます。未だに、「印刷品質は、顧...
客が技量を使って何とかしてくれる。」と期待したり、逆に適正でない前提条件の下での、顧客の我儘ともいえる要求に応えようと努力したりしているとも思われます。正しい考え方で作った印刷性能が高いインキ・ペーストは、前提条件」を適正化していれば、誰が印刷しても、「必ず良い結果が出る」と信じるべきです。
インキ・ペーストサプライヤーと印刷加工メーカーの双方が「ペーストプロセス理論」を正しく理解し、実践を繰り返すことで、機能と印刷性能を両立したインキ、ペーストが数多く市場に出回ることになると思います。