スピン印刷 スクリーン印刷とは(その11)

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【関連解説:印刷技術】

 前回のその10に続いて解説します。
 

1. スクリーン印刷での「スピン印刷」の実践

 
 スクリーン印刷で「スピン印刷」は、実現できないと思われている方が多いと思います。因みに、「スピン」とは、同心円状のラインパターンで、スクリーン印刷では最も難易度が高い印刷の一つです。
 
 印刷ができない理由は、スクリーン版に「モアレ」が発生するために、印刷においても同様の「モアレ」が起こると思われているからです。本当でしょうか。
 
 そもそも「モアレ」とは、二つの規則的な模様が重なった際に起こる幾何学的な干渉縞のことです。スクリーン版で視認できる「モアレ」は、同心円状の乳剤パターンと格子状のスクリーンメッシュの重なりで起こります。一方、基材の上に高品質に印刷されたインキは、乳剤パターンに忠実に転写されるため、干渉するものがなく「モアレ」は起こり得ません。つまり、「スピン印刷」でも、インキと版を適正化して高品質に印刷すれば、「モアレ」のない印刷が可能であると言えます。
 
スクリーン印刷図1. スピン柄でのにじみやすい箇所 
 
 実際にスピンパターンを印刷すると図1のようにスキージの入り側の部分で「版離れ」が極端に悪くなり、スキージ方向ににじみが発生しました。この対策として、超強度スクリーンメッシュHS-D360CL29乳剤厚15μmで、クリアランス量を、標準の2倍に設定し、「版離れ」の問題を解決しました。さらに、インキのにじみを防ぐためにスキージ角度75度、スキージ速度300mm/secで印刷しました。インキは、溶剤の揮発性が遅く、粘弾性が高い新規加飾インキを使用することで、「モアレ」やにじみのない連続印刷が実現できました。
 
スクリーン印刷図2. ライン幅120μmのスピン印刷(各部の拡大写真)
 
 

2. スクリーン印刷での「非接触印刷」

 
 スクリーン印刷は、ゴム製のスキージでスクリーン版を押し下げ、基材に接触させ印刷します。この押し下げた際の圧力を「スキージ印圧」と呼び、通常は、スキージの先端が1.0~2.0mm程度が変形するようにします。この際、「印圧は、1.0~2.0mmである」と言います。
 
 一方、スクリーン印刷では、スキージのアタック角度を小さくするとインキに対して加わる下向きの力を大きくすることができます。この原理を利用することで、スクリーン版を基材に接触させない状態でもスクリーン版の開口部から下向きにインキを突出させることができます。つまり、マイナスの印圧でも印刷が可能になります。
 
 ステンレス200メッシュのスクリーン版のにラインパターンを形成して、印圧を-0.20mmでスキージアタック角度20度、スキージ速度30mm/secで印刷することで安定した非接触印刷が実...

 

【関連解説:印刷技術】

 前回のその10に続いて解説します。
 

1. スクリーン印刷での「スピン印刷」の実践

 
 スクリーン印刷で「スピン印刷」は、実現できないと思われている方が多いと思います。因みに、「スピン」とは、同心円状のラインパターンで、スクリーン印刷では最も難易度が高い印刷の一つです。
 
 印刷ができない理由は、スクリーン版に「モアレ」が発生するために、印刷においても同様の「モアレ」が起こると思われているからです。本当でしょうか。
 
 そもそも「モアレ」とは、二つの規則的な模様が重なった際に起こる幾何学的な干渉縞のことです。スクリーン版で視認できる「モアレ」は、同心円状の乳剤パターンと格子状のスクリーンメッシュの重なりで起こります。一方、基材の上に高品質に印刷されたインキは、乳剤パターンに忠実に転写されるため、干渉するものがなく「モアレ」は起こり得ません。つまり、「スピン印刷」でも、インキと版を適正化して高品質に印刷すれば、「モアレ」のない印刷が可能であると言えます。
 
スクリーン印刷図1. スピン柄でのにじみやすい箇所 
 
 実際にスピンパターンを印刷すると図1のようにスキージの入り側の部分で「版離れ」が極端に悪くなり、スキージ方向ににじみが発生しました。この対策として、超強度スクリーンメッシュHS-D360CL29乳剤厚15μmで、クリアランス量を、標準の2倍に設定し、「版離れ」の問題を解決しました。さらに、インキのにじみを防ぐためにスキージ角度75度、スキージ速度300mm/secで印刷しました。インキは、溶剤の揮発性が遅く、粘弾性が高い新規加飾インキを使用することで、「モアレ」やにじみのない連続印刷が実現できました。
 
スクリーン印刷図2. ライン幅120μmのスピン印刷(各部の拡大写真)
 
 

2. スクリーン印刷での「非接触印刷」

 
 スクリーン印刷は、ゴム製のスキージでスクリーン版を押し下げ、基材に接触させ印刷します。この押し下げた際の圧力を「スキージ印圧」と呼び、通常は、スキージの先端が1.0~2.0mm程度が変形するようにします。この際、「印圧は、1.0~2.0mmである」と言います。
 
 一方、スクリーン印刷では、スキージのアタック角度を小さくするとインキに対して加わる下向きの力を大きくすることができます。この原理を利用することで、スクリーン版を基材に接触させない状態でもスクリーン版の開口部から下向きにインキを突出させることができます。つまり、マイナスの印圧でも印刷が可能になります。
 
 ステンレス200メッシュのスクリーン版のにラインパターンを形成して、印圧を-0.20mmでスキージアタック角度20度、スキージ速度30mm/secで印刷することで安定した非接触印刷が実現できました。ディスペンサーでインキを吐出しながら一筆書きする原理と似ていますが、パターンが連続しているため大面積を1ストロークで描画できます。基材が版との接触を嫌うものや、予めウエットのコーティングが施されている場合にも利用できます。
 
スクリーン印刷図3.非接触スクリーン印刷のイメージ図
 
スクリーン印刷図4.非接触印刷したウエット状態の外観
 
 スクリーン印刷工法の一つの可能性として利用してみてください。
   

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この記事の著者

佐野 康

明確なスクリーン印刷理論を用い、納得できる具体的手法により、エレクトロニクスのみならず全ての分野の高品質スクリーン印刷技術の実践をお手伝いします。

明確なスクリーン印刷理論を用い、納得できる具体的手法により、エレクトロニクスのみならず全ての分野の高品質スクリーン印刷技術の実践をお手伝いします。


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