印刷理論 スクリーン印刷とは(その1)

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 今回から連載で、スクリーン印刷について解説します。今回は、第1回です。
 

1. スクリーン印刷の進歩と印刷理論

 
 スクリーン印刷は、スクリーンメッシュ・版やスキージ、印刷技術進歩にインキ、ペーストの印刷性能が追随し、特に1990年からの四半世紀で著しい技術進歩を遂げました。しかし、これらのスクリーン印刷の技術進歩の本当の意味での恩恵を受けることができたのは、一部の特定の製品分野での経験者に限り、真にこの技術の素晴らしさを理解し、可能性を信じる人は,まだまだ少ないと思います。
 
 1990年代初頭、私は、エレクトロニクス分野でのスクリーン印刷の最先端分野でこの技術の真のポテンシャルを目の当たりにし、多くの先輩、同僚に原理やメカニズム、管理手法について質問しましたが、納得のいく、整合性のある回答は得ることができませんでした。当時は、スクリーン印刷のどの分野でも、明確な理論がなく、それぞれの分野での経験に基づく多くの技量、テクニックだけが存在し、スクリーン印刷は経験が必要な職人芸的技術であると思われていました。
 
 私は、スクリーン印刷にも本来理論があるはずであると考え、無いのであれば、自分で仮説を立て、検証、修正を繰り返し、独自の考え方で理論を構築してきました。その後、数多くの印刷経験や優れたペースト技術者の助言から、インキ・ペーストの側から印刷プロセスを解明することで多くの現象が説明をつけられることに気が付きました。最近では、グラフィック・加飾印刷の分野のスクリーン印刷でも、同様の考え方で管理可能になる事が理解され始め、私自身も、すべての分野のスクリーン印刷が共通の考え方で管理できると確信できるようになりました。
 
 しかし、未だに多くの方は、スクリーン印刷に対する誤解やプロセス技術としての不信感を抱いていると思われ、この技術がものづくりの現場に十分に活用されているとは言えません。その理由は、スクリーン印刷における正しい技術情報が絶対的に不足していることと、狭い範囲の経験に頼っただけの正確でない技術情報が氾濫し、それによりネガティブなイメージも蔓延しているためだと思われます。
 
 私が考える正しい技術情報とは、単なる経験だけからの対処療法的な手法でなく、どの角度から検証しても納得できる理論があるということです。私が25年間の多方面での実践経験で検証し構築した印刷理論である、インキ・ペーストの身になって考える「ペーストプロセス理論」に則り、技術情報を解説します。
 
 印刷技術
 
 

2. ペーストプロセス理論

 
「ペーストプロセス理論」は、私が25年間の実践と検証から構築した、全ての分野のスクリーン印刷に共通するプロセス構築の考え方です。
 
 スクリーン版条件と印刷条件は、云わば、高品質印刷のための「前提条件」であり、印刷品質はインキ・ペーストの有する固有の印刷性能により決定されると考え、逐次的に要素技術の適正化を行います。
 
 インキ・ペーストの印刷性能は、揮発性、濡れ性及び粘性と弾性でほとんど決まります。高品質スクリーン印刷プロセス構築とは、「前提条件」を適正化し、インキ・ペーストの機能を維持しながら印刷性能を向上させることです。
 
スクリーン印刷図1.ペーストプロセス理論と従来の考え方の比較
 
 従来のスクリーン印刷の考え方は、図1.左側のように三つの要素の重なったポイントを探し出すというもので、いわば三つ巴の考え方です。この考え方では、三つの要素が等分の影響力を持っているかのように考えがちです。実作業では、印刷作業者は、自分では、変更しにくいインキ条件やスクリーン版条件を固定して、変更が容易な印刷条件だけを熱心に変更することになります。スクリーン版業者は、メッシュ仕様や乳剤の種類を頻繁に変更しようとします。インキ・ペースト業者は、顧客の印刷条件に合わせて、むやみに性状を改質します。このよ...
 今回から連載で、スクリーン印刷について解説します。今回は、第1回です。
 

1. スクリーン印刷の進歩と印刷理論

 
 スクリーン印刷は、スクリーンメッシュ・版やスキージ、印刷技術進歩にインキ、ペーストの印刷性能が追随し、特に1990年からの四半世紀で著しい技術進歩を遂げました。しかし、これらのスクリーン印刷の技術進歩の本当の意味での恩恵を受けることができたのは、一部の特定の製品分野での経験者に限り、真にこの技術の素晴らしさを理解し、可能性を信じる人は,まだまだ少ないと思います。
 
 1990年代初頭、私は、エレクトロニクス分野でのスクリーン印刷の最先端分野でこの技術の真のポテンシャルを目の当たりにし、多くの先輩、同僚に原理やメカニズム、管理手法について質問しましたが、納得のいく、整合性のある回答は得ることができませんでした。当時は、スクリーン印刷のどの分野でも、明確な理論がなく、それぞれの分野での経験に基づく多くの技量、テクニックだけが存在し、スクリーン印刷は経験が必要な職人芸的技術であると思われていました。
 
 私は、スクリーン印刷にも本来理論があるはずであると考え、無いのであれば、自分で仮説を立て、検証、修正を繰り返し、独自の考え方で理論を構築してきました。その後、数多くの印刷経験や優れたペースト技術者の助言から、インキ・ペーストの側から印刷プロセスを解明することで多くの現象が説明をつけられることに気が付きました。最近では、グラフィック・加飾印刷の分野のスクリーン印刷でも、同様の考え方で管理可能になる事が理解され始め、私自身も、すべての分野のスクリーン印刷が共通の考え方で管理できると確信できるようになりました。
 
 しかし、未だに多くの方は、スクリーン印刷に対する誤解やプロセス技術としての不信感を抱いていると思われ、この技術がものづくりの現場に十分に活用されているとは言えません。その理由は、スクリーン印刷における正しい技術情報が絶対的に不足していることと、狭い範囲の経験に頼っただけの正確でない技術情報が氾濫し、それによりネガティブなイメージも蔓延しているためだと思われます。
 
 私が考える正しい技術情報とは、単なる経験だけからの対処療法的な手法でなく、どの角度から検証しても納得できる理論があるということです。私が25年間の多方面での実践経験で検証し構築した印刷理論である、インキ・ペーストの身になって考える「ペーストプロセス理論」に則り、技術情報を解説します。
 
 印刷技術
 
 

2. ペーストプロセス理論

 
「ペーストプロセス理論」は、私が25年間の実践と検証から構築した、全ての分野のスクリーン印刷に共通するプロセス構築の考え方です。
 
 スクリーン版条件と印刷条件は、云わば、高品質印刷のための「前提条件」であり、印刷品質はインキ・ペーストの有する固有の印刷性能により決定されると考え、逐次的に要素技術の適正化を行います。
 
 インキ・ペーストの印刷性能は、揮発性、濡れ性及び粘性と弾性でほとんど決まります。高品質スクリーン印刷プロセス構築とは、「前提条件」を適正化し、インキ・ペーストの機能を維持しながら印刷性能を向上させることです。
 
スクリーン印刷図1.ペーストプロセス理論と従来の考え方の比較
 
 従来のスクリーン印刷の考え方は、図1.左側のように三つの要素の重なったポイントを探し出すというもので、いわば三つ巴の考え方です。この考え方では、三つの要素が等分の影響力を持っているかのように考えがちです。実作業では、印刷作業者は、自分では、変更しにくいインキ条件やスクリーン版条件を固定して、変更が容易な印刷条件だけを熱心に変更することになります。スクリーン版業者は、メッシュ仕様や乳剤の種類を頻繁に変更しようとします。インキ・ペースト業者は、顧客の印刷条件に合わせて、むやみに性状を改質します。このような方法で、時間をかけて、見つけた最適条件は、結果的に非常に狭い範囲でしか再現できず、量産時のプロセス安定性を損ないます。
 
 「ペーストプロセス理論」では、高品質な印刷のための適正な印刷条件とスクリーン版の条件は、目的によりおのずから決まっており、それを前提として印刷した結果は、インキ・ペーストの印刷性能で決定するという考え方です。このため、前提条件の適正化となぜそうするべきかの考え方が最も重要となります。今後、この連載の中で「ペーストプロセス理論」は、詳しく解説します。
 
 次回は、なぜ、これまでスクリーン印刷が管理困難と思われてきたか、から解説を続けます。
 
  

 

【関連解説:印刷技術】

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この記事の著者

佐野 康

明確なスクリーン印刷理論を用い、納得できる具体的手法により、エレクトロニクスのみならず全ての分野の高品質スクリーン印刷技術の実践をお手伝いします。

明確なスクリーン印刷理論を用い、納得できる具体的手法により、エレクトロニクスのみならず全ての分野の高品質スクリーン印刷技術の実践をお手伝いします。


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