印刷機 スクリーン印刷とは(その7)
2018-02-23
前回のその6に続いて解説します。
スクリーン印刷機とは、基材を固定し、スクリーン版をセットし、スキージを動作させる装置であり、量産印刷において、装置の不具合で印刷品質が低下することは、ほとんどありません。スクリーン印刷機は、スクリーン版の形状とスキージの動作の違いで次の3種類に分けられます。
最も多く使用されている通常のスクリーン印刷機のタイプです。スクリーン版は、矩形の枠にスクリーンメッシュを貼った平型版です。フラットの印刷テーブル上に基材を固定し、スキージを移動させて印刷します。ロール to ロール印刷の場合は、間欠送り機構になります。
スクリーン版は、フラットベッドと同様の平型版です。 ボトルの曲面印刷機と同様の構造で円筒形のシリンダーの側面に吸着した基材に印刷するタイプです。スキージは、固定したままでスクリーン枠を水平に往復移動させ、それに同期させシリンダー回転させます。枚葉高速印刷に有効です。
円筒形のスクリーン版を使用し、スキージを固定して、円筒形版を回転しながら印刷します。版を円筒形にする必要があり、版にテンションをかけることができない為、剛性のある開口率の小さい板状のメッシュシートを使用します。低粘度インキを使用した高速捺染印刷に有効です。
いずれの印刷方式でも、印刷品質は、使用するスクリーン版の仕様、品質とインキ・ペーストの印刷性能で決定されることは同じです。
いかなる印刷も刷版の品質にインキ・ペーストの印刷性能が追随して技術が進歩をしてきました。逆はありません。例えば「このインキは、10μmラインの印刷ができるが、残念ながらその刷版がまだ無い。」とは言えません。
一般印刷である平版オフセット、グラビア、フレキソ印刷では、既に15年以上前に刷版の技術限界の製品が開発され、インキも印刷品質の面では、技術限界に達したと言えます。昨今、急成長を遂げている「ネット印刷」の会社は、ほとんどは社内で印刷を行いません。
なぜなら、どの外注先に委託しても印刷品質は同じであるからです。つまり、ほとんどの印刷会社が技術限界の90%以上のレベルで量産を行っていると言えます。なお、これら、一般印刷での現在の課題は、印刷品質でなく、多品種少量生産への対応となってきています。
一方、スクリーン印刷では、未だに、ほとんどの会社が技術限界に達しているとはいえず、難易度の高い印刷では、特定の印刷加工メーカーしか請けることができません。私の考えでは、一部のエレクトロニクス関連の印刷分野を除いて、ほとんどが、スクリーン印刷の技術限界の50%程度しか活用していないと思われます。私が考えるスクリーン印刷の技術限界とは、技術限界レベルのスクリーンメッシュと刷版を使用して、インキ・ペーストの印刷性能と機能を極限まで高めた安定性の高い量産印刷のことです。
多くのスクリーン印刷が、技術限界の50%程度しか活用してないということは、逆に考えれば、技術とビジネスのこれからの「伸びしろ」が非常に大きい分野であるとも言えます。今でも、従来のスクリーン印刷のレベルでもそれなりにビジネスが成り立っているのですが、正しい考えで技術レベルをさらに向上させることで、プロセスを安定させ、コストを低減するとともに他工法などを代替できる可能性も大きくなるということです。
製造業で利益を上げる最も有効な手段は、設備コストを抑制し、必要なものを必要なだけ、必要な時...
に高い歩留まりで作ることです。スクリーン印刷は、一般印刷工法と比べて、生産速度は劣りますが、設備コストが廉価で多品種少量生産にもっとも向いている印刷工法です。また、エレクトロニクス分野で利用されているフォトリソプロセスなどの「サブトラクティブ工法」に対して、スクリーン印刷は、本当の「アアディティブ工法」であり、材料使用効率が高く、環境負荷を低減できる利点があります。
「ペーストプロセス理論」の考え方でスクリーン印刷を「技術限界」に近いレベルで活用することで、製造プロセスのコスト低減と低環境負荷を両立し、新たな市場が創造できると期待します。