4つのメカニズム スクリーン印刷とは(その8)

 

【目次】

    【関連解説:印刷技術】

    前回のその7に続いて解説します。
     

    1. スクリーン印刷の4つのメカニズム

     
    スクリーン印刷のメカニズムを、次の四つに分類して考えると、理解が深まります。
     
    1.   スキージによる版上インキ・ペーストのローリング
    2.   スクリーン版開口部へのインキ・ペーストの充てんと掻き取り
    3.   スクリーン版の反発力による版離れ
    4.   基材の上でのインキ・ペーストのレベリング又は形状保持
     
    ローリングのメカニズムは、インキ・ペーストをスキージ移動により、版上でローリングさせることで、均一な性状にするものです。均一な印刷品質を得るための重要な前提条件となります。間違っても「ローリングの下向きの力で、インク・ペーストを版の開口部に充てんする」と考えるべきではありません。
     
    このことは、スキージの角度を垂直にして、ローリングさせても印刷できないことからも理解できます。
     
    充てんと掻き取りのメカニズムは、スキージのアタック面でインキ・...
    ペーストを版開口部に充てんし、余分な版上のインキ・ペーストをスキージのエッジ掻きとる動きです。掻き取りの深さが、ベタ印刷での印刷膜厚に影響を与えます。
     
    版離れのメカニズムは、版開口部に充てんされ基材表面に密着したインキ・ペーストを、スキージの移動に合わせて、スクリーン版の反発力を利用して引きはがすものです。スクリーン版の反発力がインキ・ペーストの基材に対する粘着力より小さいと版離れが遅れる不具合が発生します。
     
    レベリング又は形状保持のメカニズムは、基材上の印刷されたインキ・ペーストが自らの粘弾性や濡れ性の影響でレベリングしたり、形状保持をするものです。特に基材の表面状態の影響を受けます。
    充てん、掻きとり、版離れのイメージ図を次に示します。
     
     

    2. スクリーン印刷の4条件

     
    スクリーン印刷の4つの条件は、次の考え方で適正化します。
     

    (1) スクリーン印刷のクリアランス

     
    版離れに影響を与える最も重要な条件で、前提条件です。メッシュ強度、版テンションが適正であれば、スクリーン枠内寸の1/300とします。この値であれば、10000ショットの印刷でもスクリーン版はひずみません。
     

    (2) スクリーン印刷のスキージ印圧

     
    スクリーン版上のインキ・ペーストを均一に掻きとるための十分な印圧が必要です。押し込み方式では、印圧は、1.0mm~2.5mm程度、エアー圧方式での実荷重では、スキージの長さ1cmあたり、400~800グラム程度です。
     

    (3) スクリーン印刷のスキージ角度

     
    充てん力を増減する最も重要なパラメータです。通常印刷では、80~60度。高粘弾性ペーストや段差基材への印刷では、55度~35度。穴埋め印刷では、30度~15度とします。55度以下の角度の場合には、「斜め研磨スキージ」を使用することを推奨します。
     
     

    (4) スクリーン印刷のスキージ速度

     
    充てん力を増減できます。にじみやすい傾向の場合は、速度を速くし、かすれやすい場合には、速度を遅くします。一般的に高粘度ペーストでは、50~100mm/sec、粘度インキでは、200mm/sec以上で印刷します。印圧が低い場合、スキージ速度が速すぎると膜厚均一性が低下することがあります。
      

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