高付加価値サービスの創造とは CS経営(その28)

◆なぜ、あの企業の「顧客満足」はすごいのか

 
 
 

2. 企業の垣根を越えた「付加価値創造」: 穴吹興産株式会社グループ企業

(3) グループ各社の「力」が結集した最高の施設

 あなぶきメディカルヶアでは、あなぶきグループの新スローガン「一生を、全力で。」に則り、「人生の新たな出会いが拡がる」をスローガンに、「健康や生きる力、ご入居前よりもっとお元気に!」を目標にスタッフ一同が心を合わせて取り組んでいます。
 
 ちなみに老人ホーム最年長のYさん(90代)は、毎日、I階の食堂前でリハビリに励んでいる。ご入居前は寝たきり状態だったが、何という変わり様だろう。スタッフの助けを借りながらリハビリを重ねたところ、ついには、自力で車いすから立ち上がることができるまでになったそうです。
 
 「Yさんは今、器具を活用して歩く練習をしています。リハビリつて非常に大切なんです。動かなかった身体がリハビリで動くようになるんです。すると、その人の生きる力がわいてきます。ともかくご入居されたときよりも元気になっていただくよう、私たちは力を注いでいるのです」と、36室の個室住宅型有料老人ホームの施設長である石川福氏は語るのです。
 
 ここでの毎日の心を込めた食事の提供は、「穴吹エンタープライズ株式会社」のフーズケア課が行なっているサービス事業である。穴吹エンタープライズが、グループ会社全体の顔となっているのは、過去に昭和天皇もお泊まりになった高松国際ホテルをはじめとするホテル7施設、名門の旅館くらしき、香川県県民ホール(県の指定管理者事業・アルファあなぶきホール)ほかの運営を行なっているからです。
 
 このように、グループ各社の力を結集し。顧客を中核とした「融和」「ボーダレス化」「糊代」と「融合」により、さまざまな高付加価値サービスを創造し、顧客に評価されています。
 
 そして、あなぶきメディカルケアは、人手不足が深刻な業界において、従業員満足により、創造力に富んだ働きがいのある楽しい職場を醸成しています。
 
 また、この業界においては珍しく、介護福祉士の存在が人々の安全と安心を担保しています。介護福祉士の宮司沙也加氏は、夜間訪問介護の責任者でもあり、「夜は定期的に様子を観察し、昼とは異なったノウハウの伴った対応」に力を注いでいます。オペレーターと介護スタッフが、各I人ずつ夜間に駐在し、どのような小さな要望の変化であったとしても、すぐにその場に駆けつけ対応するのです。
 
 同ホームには、入居者の日々の健康管理のための看護師も常駐しています。看護師は、日常の健康チェックや病院への受診の付き添い、処方薬の管理、薬の服用、服用後のフォローなど、きめ細かい配慮を仕事としています。
 
 ここで、入居者の方々の日常生活の一端を紹介しましょう。
 
 ランチの時間。食堂に入居者の方々が集まり始めました。食事以外に談話室も兼ね、お茶、手芸などのふれあいと憩いの場としても活用されています。
 
 なかでも食事は皆さんの一番の楽しみの時間。おいしく感じ、健康になれ、幸せ感一杯になるよう、穴吹エンタープライズ・合田保富料理長がホテル仕込みの本格的な料理の献立のもと...
に腕を振るい、心をこめて提供しています(2005年、合田料理長は優れたフランス料理人に贈られる「ディシプルードーオーギュストーエスコフィエ」を授与されました)。
 
 各地で展開されているあなぶきメディカルケアの施設で出される料理の献立は、すべて穴吹エンタープライズ本部のある四国高松で企画され、きめ細かい指示のもと、各地・地元の食材を活用し、料理も味も地域色を出せるよう工夫し、入居者の方々に大変喜ばれています。
 
 これこそが穴吹グループならではの「結束力」と「融合力」であり、顧客に対する、シームレスで、高付加価値を創造する活動の一端を示す姿です。
 
【出典】 武田哲男 著 なぜ、あの企業の「顧客満足」は、すごいのか PHP研究所発行
筆者のご承諾により、抜粋を連載
 

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