「即興劇」でコミュニケーション活性化 CS経営(その35)

 
  
 

◆なぜ、あの企業の「顧客満足」はすごいのか

5. 「即興劇」でコミュニケーション活性化-株式会社インプロジャパン

(1) インプロは役者だけのものではない

 「即興劇」(Improvisational Theatre・Improvisation)、簡略化して、「インプロ」(Impro)と呼ばれるものそれは、役者、俳優たちが演技力を磨き、プロとして、ストーリーーの本質を理解し、演技に幅と奥行き、演技者としての人格を高めるために活用されている取り組みで、アメリカ・ハリウッドの役者たちが身につけてきた手法の一つです。
 
 もともとは、台本を準備せずに、その場で即興的に参加者が演じる演劇ですが、決められたルールを前提にしたパフォーマンスの連続が、劇全体を優れたものへと作り上げていくのです。台本がないため、どのような方向に、どのような形で進んでいくのか参加者もわからないのですが、結果として、皆の感性と瞬間的な創造力により、魅力的で、しかも刺激的な全体像が構築されるのです。
 
 つまり、参加者全員が、その場の状況に合わせて、直感的に理解し、整合性を持たせながら、新たに自己の認識を付加し、互いに演技力を磨いていくということです。そのため、インプロにおいては、決められたルールから外れずに、しかし、自由に、柔軟に、そして、創造的に新たな要素を生み、魅力的な内容に作り込んでいく作業が必要になります。
 
 それぞれが工夫を凝らし、アイデアがちりばめられた演技に対して、参加者だけでなく、観客、見ている人たちもまた、意外性、刺激を感じ、そこから誕生する魅力あるストーリー展開に目を見張るでしょう。全体と個、個と個、複雑で順列と組み合わせのような予測できない展開、何か起こるか、何か現れるか、準備した取り組みではないだけに、見る人は引きっけられ、引き込まれるのです。
 
 このように、シーン、状況に合わせて、自主的に、即興で、場面を構成するチームカ、その融合、阿吽の呼吸がインプロだと私は捉えています。
 

 ●「インプロ」に「ゲーム」を加えた「インプロゲーム」

  1.   レクリェーションーゲーム
  2.   企業研修・インプロゲーム
  3.   大学授業・インプロゲーム
  4.   子供・幼児対象インプロゲーム
 
 なお、一つひとつのプログラムにはさまざまなメニューがあり、800種類、1000種類、あるいは1500種類を超えているともいわれています。
 

(2) どのようなことに活用されているか

 インプロジャパンの代表取締役社長・池上奈生美氏は、インプロトレーニングの普及に取り組んでいます。池上氏は自身が子役として活躍した時期もあったようですが、社名が示すとおり、名実ともに理論はもとより、実践面においても日本の第一人者です。
 
 振り返ってみると、毎日新聞カルチャーシティ講師をはじめ、アメリカーテキサスでの国際インプロフェスティバルにおいて最優秀賞を受賞した輝かしい経歴を持つ方です。また、NHK教育テレビ『シャキーンー』のインプロコーナーを監修し、東京国際インプロフェスティバルは現在3回目の運営実績を持っています。
 
 子供の教育にも熱心で、自社で行なう会場でかなりの頻度で子供たちの育成に力を注いでいます。とくにコミュニケーションがとれない子供たちの教育には力を注いでいて、いずれは幼児から小学校・中学校へとインプロゲームを導入し、教育の一環とした位置づけをしたいと念願し、さまざまな活動を行なっています。
 
 たとえば、講演・研修事業。子供たちを対象としたケース、企業のスタッフ育成、特別な課題-非営利型一般社団法人エチケットーサービス向上協会(ESA)では、調査結果に表出している顧客の不満、すなわち「気づき」「気くばり」「気づかい」の3つの気と「臨機応変」「機転を利かす」の2つの資質を身につける「気の実アカデミー」の常任講師として池上氏をお招きし、受講者に喜ばれ、企業からも評価を受けています。
 
 また、ワークショップ事業も主催し、数々の課題解決に挑戦しています。たとえば、先に挙げたコミュニケーションがとれない子供たちの増加。年を追うごとに企業にも影響が及び、コミュニケーションがとれない新人社員たちが増えているために「チームビルディング」、すなわち、顧客対応力強化、発想力強化、プレゼンテーション能力強化といったトレーニングを実施し成果をあげています...
 
 ちなみに、子供たちと親たちが共に演じる2歳児以上のクラス(ESAとのコラボレーション)では、講師がもちかける課題、たとえば「象さん、わかるかな? 二人一組で象さんになってみよう」と言うと、親または保護者と子供が工夫して、子供が象の手をぶらぶらさせて鼻を演じ、大人は象の身体を演じるのです。このプログラムによってコミュニケーションカを身につけることができます。また、成人、企業人の場合は二人一組となって他のペアとコンタクトをとったり、またはお互いにぶつからないように配慮したり……と気づき・気配り・気づかいをするなどを自然体で身につけるなどの例が挙げられます。ちなみにこのような取り組みの対象は、当然のことながら企業をはじめ、官公庁、組合や各種団体、教育関連分野にも及んでいます。
 
 次回は、5.「即興劇」でコミュニケーション活性化、(3) マナーを身につけずに大人になった管理職たちの悲劇の解説です。
 
【出典】 武田哲男 著 なぜ、あの企業の「顧客満足」は、すごいのか PHP研究所発行
筆者のご承諾により、抜粋を連載
  

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