フッ素樹脂塗料、選択のポイントとは(その1)フッ素樹脂とは
2018-09-03
フッ素樹脂塗料は、耐熱性、耐薬品性、耐候性、非粘着性、低摩擦等フッ素樹脂の持つ優れた性質を活かして機械部品や厨房器具、建物の外壁等様々な分野で利用されています。フッ素樹脂塗料と一口に言っても非常に種類が多く、目的や加工性を考慮せずに塗料を選択、加工すると効果が得られないばかりか、逆に被塗物を損傷させてしまう場合もあります。ここでは、製品化されている主なフッ素樹脂塗料の種類と、産業用途に向けてフッ素樹脂塗料を選択するにあたってのポイントについて2回に分けて解説致します。
フッ素樹脂はフッ素を含む樹脂の総称で、フッ化オレフィンを重合して得られる樹脂です。代表的なフッ素樹脂としてPTFE(Polytetrafluoroethylene)がありますが、PTFEはフッ化オレフィンの一つである4フッ化エチレンを重合させて得られます。オレフィンの水素原子に置換されるフッ素原子の数が増える程、耐熱性、耐薬品性、非粘着性等の性質がより発揮されるようになります。また、フッ化オレフィンと他の分子を共重合させて溶剤への溶解性を高めたフッ素樹脂や官能基を持たせたフッ素樹脂も製品化されています。
フッ素樹脂塗料の分類方法として様々な方法がありますが、ここでは主なフッ素樹脂塗料について塗料の形態と成膜形態で表1のように分類しました。塗料形態は塗装方法や環境面との関連性が大きく、成膜形態は加工条件や膜物性との関連性が大きくなります。
表1. フッ素樹脂塗料の分類
成膜形態は、➀溶融型、②変性型 ③反応型 ④乾燥型に大別されます。
溶融型は、フッ素樹脂が溶融、冷却固化して連続膜になるもので、加工温度は使用するフッ素樹脂の融点以上が必要になります。一般にフッ素樹脂は自己接着性がないため、溶融型のフッ素樹脂塗料は下塗り層であるプライマーを必要とします。溶融型のフッ素樹脂塗料の中でも特にPTFE樹脂、PFA(Perfluoro alkoxy alkane)樹脂、FEP(Perfluoro ethylene propylene copolymer)樹脂を用いた塗料は、耐熱性、非粘着性、耐薬品性等、フッ素樹脂が持つ性能を最大限に発揮します。
変性型は、PAI(Polyamide-imide)やPES(Polyether sulfone)等の耐熱性樹脂の溶液にフッ素樹脂を分散させた塗料で、フッ素樹脂の弱点である耐傷性や機械的強度を耐熱性樹脂が補っています。耐熱性樹脂が接着性を持つので、プライマーは不要となります。耐熱性に関しては、耐熱性樹脂の種類にもよりますが、溶融タイプの塗料より劣る場合が多くなります。
反応型はフッ素樹脂分子に官能基を持ち、硬化剤としてイソシアネートやメラミンを用いるもので、比較的低温で硬化することができます。反応型の塗料は、被塗物の材質によってはプラ...
イマーが不要となります。また、硬化剤の選択や改質剤の導入により様々な特性を持つ塗膜を作ることが可能ですが、耐熱性に関しては上記、溶融タイプ、変性タイプよりも劣ります。
乾燥型は塗料中の水または溶剤が揮発することにより、塗膜が形成されるもので、低温で皮膜を形成することが可能です。図1に代表的なフッ素樹脂塗料の成膜プロセスを示します。
図1. フッ素樹脂塗料の成膜プロセス(プライマーは省略)
次回は、4.フッ素樹脂塗料の選択から、解説を続けます。