前回のその1、課題解決への取組み、(2)に続いて解説します。
(3) 三次元CADデータの活用
三次元CADデータを用いて前節の課題解決に取り組みました。そこで、図6のように製品開発および生産準備における三次元CADデータの活用について、目指す方向として図6のように整理しました。
図6. 目指す方向とイメージ
この目指す方向では、前節の取組みに対し、次のように課題を拡げました。まず、マニュアルのWEB3D化については、設計者の意思や意図を正確に伝える手段として検討しました。また、製品の精度把握については、リバースエンジニアリングとして取り組みました。また、新たな課題として三次元CADデータのモデリングやFEMなどの活用とデジタル・モックアップも取り上げることにしました。これは、三次元CADデータの利用範囲を拡げることで業務効率が向上し、コンカレント化も進むものと考えられたからです。これらの課題については、原因解析で取り扱ったいくつかの品質問題を主な事例として取り組みました。
4. 取組み事例
(1) WEB3D化の取組み
設計者の意思や設計意図を伝える手段として、WEB3Dを活用しました。その結果、試作の製作前に問題点が抽出され、解決されることが多くなりました。
図7. WEB3Dの取組み事例
(2) リバースエンジニアリングへの取組み
製品の精度把握以外に、他社製品の調査目的でリバースエンジニアリングに取り組みました。苦労した点は、効率よく形状測定を行うための、試料固定方法と、測定後の形状作成です。試料の固定には、㈱ナベヤのフレックスサポート(E-992)を使いました。また、得られた点群データから形状を作成するには、点群を面で捉えるデッサン力が必要となります。
図8. リバースエンジニアリングの取組み事例
(3) 三次元CADへの取組み
三次元CADデータに寸法線などを付加し、設計図面とする動きがあります。[2]従来の製図に対し3D図面と呼ばれているが、新しい利用方法として取組みました。また、PDQ(Product Data Quality)についても、モデルを試作し、体感できるようにしました。
図9. 三次元CADへの取組み事例
(4) デジタル・モックアップへの取組み
シミュレーション技術により、製品組立や動作検証など三次元CADデータで行い、問題点の解消や課題抽出後に試作の製作を行いました。
図10. デジタル・モックアップの取組み事例
5. コンカレント・エンジニアリング
これらの取組みを通してコンカレント・エンジニアリングが具体化してきました。しかし、当時の勤務先の役員判断により2008年3月で本研究は打ち切られました。理由は、人材育成に経費と時間を費やせない点と、必要時に外部委託で解決することにしたためです。筆者は現在は退職し、これ...
らの事例を紹介しながら、事業化について模索しています。
【参考文献】
[1] XVLによるエンジニアリングWeb3Dアニメーション入門, 千代倉弘明・望月達也・鳥谷浩志 著, 森北出版, 2007.
[2]㈳日本自動車工業会ホームページ『クルマと情報化』 http://www.jama.or.jp/cgi-bin/it/download_01.cgi