1. IT分野の技術者の方々について
「森谷さん、IT分野の仕事に従事する技術者の中で文書を書くことができない技術者は多いですよ・・・」
これは、IT分野の会社で仕事をされていた方と以前お会いしたとき、その方が私に話されたことです。
また、IT分野の技術者の方々について以下のようなことも話されていました。
コンペティションで技術提案書を提出する場合、ITに関する仕事に従事する会社の中には、技術提案書の作成を外注する会社もあるそうです。このような会社の技術者の方は文書を書くことが苦手だからだそうです。
会社員時代、公共事業に関する仕事を受注するため役所に提出する技術提案書を何度か書いたことがあります。
土木分野では、技術提案を考える担当者が技術提案書を書いていました。技術提案書の作成を外注することはありませんでした。他社も同じだと思います。
土木分野とIT分野は業界が違うので、技術提案書の書き方を土木分野にいた者の視点から述べることはできません。しかし、「外注先が技術提案書を書くことができるのだろうか?」という疑問を持ちます。
「技術提案の内容に関する様々なことが頭の中に入っている担当者だけが技術提案書を書くことができる」と自分の経験から思っていたからです。
私たちの生活は、IT技術がなければ成立しません。
例えば、銀行のATMのシステムはIT分野の技術者の方々も係っていると思います。ATMがあるので自分の口座から現金を簡単に引き出すことができます。ATMがなかったら銀行の窓口で現金を下ろす必要があります。この方法では手間と時間がかかります。
このように、IT分野の技術者の方々は私たちの生活を支える重要な仕事をされています。しかし、文書を書くことが苦手な方も多いようです。
2. 真の技術者とは
外部の会社が企画するセミナーで講師を務めることがあります。セミナーのテーマは「わかりやすい文書の書き方」です。
セミナーに出席された方に、「なぜ、このセミナーに出席されたのですか?」とお聞きすると、「『君の書く文書はわかりにくいので勉強してこい』と上司から言われた」と答える方が以外と多いのです。
製造分野の技術開発部門に所属されている方は、「自分では、自分が書いた内容でわかると思って文書を書いているが、上司から、『わかりにくい文書だ』と言われます」と話されていました。
IT分野の技術者の方々もこれと同じなのかもしれません。すなわち、文書を書くことができるが、わかりやすい文書(読み手に内容が明確に伝わる文書)を書くことができないのかもしれません。
技術の...
成果を読み手(例えば、顧客)にわかりやすく伝えることも技術者の重要な仕事です。
その意味から、「専門分野の技術+わかりやすい文書(読み手に内容が明確に伝わる文書)を書くことができる技術」を持った技術者が真の技術者だと思います。
このことは、IT分野の技術者の方々や製造分野の技術者の方々だけに限ったことではなく、あらゆる分野の技術者の方々に共通したことです。
“わかりやすく書く”ということを常に頭の中に入れて仕事で必要な文書を書いてください。
【参考文献】
森谷仁著、「技術者のためのわかりやすい文書の書き方」、オーム社、平成27年3月20日