1. スピードと誠意をもって現場に駆けつけろ
前章で紹介したサンスターの素晴らしいクレーム対応には、読者の皆さんに学びとっていただきたい数多くの実践ポイントが詰まっていますが、その中でも特筆すべきポイントの一つは、お客さま相談室の女性スタッフが発した一言です。
私か、異物混入を電話で告げたとき、女性スタッフは開口一番にこう言いました。
「大変申し訳ありません。すぐにお伺いいたします」
クレーム対応の大原則には、二つのキーワードがあります。
以前、腹を立てたクレーム顧客にもかかわらず商品を再購入した顧客に対してアンケートを実施しました。その結果、事に当たって「すばやく誠実な態度で臨む」ことは、どんな対応よりも優先されるべき行動指針であることが判明しました。次のような事実があります。
クレームが発生したときに、「すばやく」「誠実に」対応して不満や怒りを「対応の満足」に変えたとき、約80%のクレーム顧客は再び商品を購入してくれるのです。すばやく誠実なクレーム対応は、顧客離脱を、20%以下に抑えることができるのです。この顧客離脱防止と対照的な結果をもたらすのが、「スピードを欠いて、誠意のみの対応」に終始した場合です。
誠意のみで、すばやい対応を疎かにした場合の商品再購入率は30%にまで落ち込んでしまうという調査結果が出ています。換言すれば、70%の顧客はクレーム対応のまずさが原因で離れていってしまうということです。
80%と30%を分ける要因は明らかです。クレーム対応のスピードなのです。
クレーム発生後、すばやい対応をするかしないかによって、これほどまでに商品の再購入率に差が出るという事実は、クレーム顧客がいかに「すばやい対応を望んでいる」かという証拠です。ただし、スピードも誠意も顧客が感じて初めて意味を持つことを忘れてはならないのです。
クレーム顧客は誠実な対応を望むと同時に、自分か持った不満や不安を、少しでも早く解消してもらいたいと望んでいます。そうした顧客心理の内側にある「期待」をジャスト・イン・タイムですくい上げるのが、すばやい対応です。さらに、このすばやい対応には、サンスターの事例で示されたように、「すばやいお伺い=面談」も含まれます。サンスターの場合は結果的に、電話で事実関係を把握しながらクレーム対応のステップを一つひとつ進めていきましたが、クレームの種類や内容によっては現場に出かけて事実を把握しなければ、事の真相がわかりにくいことも少なくないのです。
したがって、クレーム対応に関するもう一つの大原則は、「現場、現物、現実主義」にあると言うこともできるでしょう。事が起こったらまず現場に急行し、現物、現...
実を直接確認する行動力も、クレーム対応の強力な「武器」になるのです。
そこで、ここではクレーム対応で現場に駆けつけたとき、「必ずやらなければならない行動と絶対にやってはならない行動」を分けるための実践を次回から解説します。
【出典】武田哲男 著 クレーム対応、ここがポイント ダイヤモンド社発行
筆者のご承諾により、抜粋を連載