前回のその17に続いて解説します。
4. クレーム顧客に対する正確な認識を持つことの重要性
クレーム顧客に対する正確な認識を持つことは、クレーム対応の進め方において、非常に重要な意味を持ちます。クレーム現場に駆けつけたとき、起こった事態にすばやく対応するのは言うまでもないのですが、同時に、クレーム顧客をじっくり観察することも忘れてはならないのです。姓名、年齢、職業などの基本的なデータ収集はもちろんのこと、その人の服装、表情、態度、言葉遣いといった印象もしっかり観察します。
クレーム顧客に対する正確な認識を持つことは、これからスタートするクレーム対応の進め方において、非常に重要な意味を持ってきます。
- このクレーム顧客はどういう人物で、どういう性格なのか
- 何に不満を抱いているのか
- どのような対応を要求しているのか
- 真の狙いは、いったい何なのか
クレーム顧客の観察は、冷静かつ緻密に行わなければなりません。クレーム顧客の分析によっては、通常のやり方では対応しきれないケース(クレーマー対策など)も想定されます。クレーム顧客の中には、表面的な言葉のやり取りでは決して真意を明かさずに、じわりじわりと対応ミスを引き出して、最終的に金品を取ろうとするような知能犯も少なくないのが現実です。現場に駆けつけることで、「どれだけ正確に情報収集できるか」が問われている、と言っても過言ではないのです。
5. 現場に急行、誠意を行動で示そう
電話対応と現場対応の決定的な違いは、「態度で示せるか否か」にあります。親身な対応を電話において実践することも十分可能ではありますが、所詮は「言葉の親身」に終始せざるを得ないのです。ただでさえクレーム顧客は企業に対して疑心暗鬼になっているので、電話における言葉の親身が、そのままストレートに受け入れてもらえるかどうかは、なかなか微妙な問題です。
「口では調子のいいことを言っているが、本当に親身になって対応してくれているかはわからない」
多くのクレーム顧客は、このような印象を受けるに違いないのです。顔の見えない対応には、おのずと限界があります。ところが、すばやく現場に行けば、クレーム顧客は対応スタッフの顔を確認し、表情と言葉に直接触れることができます。スタッフがクレーム顧客を観察するように、クレーム顧客もじっくりとスタッフを観察して、「人物定め」をすることが可能になります。
つまり、対応スタッフは「観察されている」ということを前提にして、「誠意を行動で示すチャンスを得る」ことができるわけです。
「弊社の対応は口先だけではありません。お客さまのクレームは全社的対応でしっかり誠実に受け止めています。必ず、お客さまのお力にならせていただきます」
態度の一つひとつ、言葉の一言二言に誠意ある対応を体現して、クレーム顧客との「小さな信頼関係」が構築できれば、なお素晴らしいでしょう。クレーム発覚というマイナスの関係から、再びプラスの関係構築に向かう第一歩を踏み出すことが大切なのです。
ここで、誠意の表現方法として「手土産」を持参する場合もあるでしょうが、「たかが手土産」と侮ってはいけません。手土産を持参するときには、順守すべき基本原則があります。
非が明らかに会社にあるときは、手土...
産を持参して誠意を形で示すことが有効です。クレーム顧客をすぐに訪問して、会社のお詫びの気持ちを形で示すことで、企業イメージはよりよく保たれます。
ところが、トラブルの原因が明らかではない(場合によっては顧客に非がある可能性がある)ときなどは、いたずらに手土産を持参すると、「やはり会社は自らの非を認めたんだな」といったように、誤った認識を与えかねないから注意してください。
持参する手土産は、あまり高額ではない自社商品(トラブルを起こした商品は当然避ける)をおすすめしますが、持参するか否かの選択は、あくまでも慎重に判断することが大切です。
次回に続きます。
【出典】武田哲男 著 クレーム対応、ここがポイント ダイヤモンド社発行
筆者のご承諾により、抜粋を連載