下手なコストダウンで失うもの CS経営(その2)

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 ◆なぜ、日本の現場で問題が多発しているのか、前回のその1に続いて解説します。
 

1. 商品、サービスに影響を及ぼしていると推測される発生要因とコストダウンの関係

① 機械などの製品に関して見ると、コストダウンのためにきちんとした実験・検証をせずに製造・販売した結果のトラブルの発生は、マスコミが取り上げることにより表面化したとき、目先の対応だけでも多大なコストを要するようになります。ユーザーが大けがはおろか命までも失うような事態に発展したときは、企業生命を脅かすことにもなります。このような口スコストを生み出すケースには、コストダウンが顕著な原因であるという共通点があるのです。
 
② 本来なら以下の要点を事前に明確にしておくべきところを、「コストを要するから」といって、手を付けずにいたため問題が発生するケースが増加しています。また、事を甘く見て検証しなかったために、近い将来に発生が予測されるケースも増えています。
 
◆因果関係が証明できる範囲と、できない範囲の境界線を明確にする活動をしなかった。たとえば、電磁波と機械の誤作動・健康障害発生との因果関係の検証。同様に、電磁波と電子レンジ、ひげそり、高圧線の下の住居などの健康との関係性。
 
◆ある年に発生した事故が、特定商品に集中している例。たとえば乗用車の暴走、大型トラックやバスなどの脱輪。金属などの耐久性、部分に過大な圧力がかかる設計ミスなどの因果関係分析(タイヤが飛んでいって母子の命を失った例など)。
 
◆遺伝子組み換え食品と健康との関係。海外におけるマウスなどの実験例で発がんとの因果関係分析例はあるが、実験件数が少なく広い範囲では証明できていない。
 
◆牛や豚などの家畜の餌に入っている肝臓がんのもとになるといわれているアフラトキシン(かび菌)と健康との因果関係。たとえばこの菌に汚染された藁やトウモロコシなどを餌とする家畜は、肉の熱処理を行なってもアフラトキシンは分解されないとされている。しかし、この肉を食べ続けることと肝臓がんとの因果関係は証明されていない。
 
◆海外で入手する部材・部品の素材チェックと、海外工場で組み立てる製品の工程管理チェックの不備から起こるミスークレームートラブル・事故・事件など。
 
 いずれも、調べていくとコストダウンとの関係性に直面するのです。ただし、コストダウンが直接の原因とは特定が難しい場面もありますが、「不満足度調査」結果から見ると、かなりの比率でコストとの関係が浮上します。
 
  CSM 
 

2. コストダウンとの因果関係が証明されたケース

① 食品添加物による内臓障害の発生
② 海外で製造した部材の材質がバラついていたために起こったひび・割れ・穴あき(たとえば液体が流れる樹脂の材質不良など)
③ 部品の品質不揃いにより発生した製品の不具合(同じ箇所が何回も故障するなど)
④ 鋳物の密度不揃いによる穴あき、割れなどの発生
⑤ ホルモン剤と抗生物質で育てた養殖魚による体調不良
⑥ 食材衛生管理の不備によって引き起こされた食中毒
⑦ 設計ミスで引き起こした耐震性の欠如(耐震性のゴムなど)
⑧ 金属混入の食品(包丁の欠けた破片の混入で口の中をけが)
⑨ 小石、釘などが食品に混入(いたずらでわざと入れた)
⑩ 設計・開発・製造・販売などの連携不足が招いた製品トラブル(特定医薬品の温度管理の問題など)
⑪ 修理・点検サービスの見落とし、手抜きが引き起こした事故
⑫ 部材・部品のコストダウン(部材の分量を減らす、異質の材料に切り替える、部品点数を減らすなど)
 
 など、これも枚挙にいとまがないほどの例が多発しています。本質的なコストダウンを行なうのであれば、その前に以上のような問題を引き起こした原因を「不満足度調査」(年I回が多い)で究明し、問題が起こる前にこれを解消しておくといった、きちんとした対応が必要です。膨大な損害を及ぼしロスコストを発生させてしまうことを考えると、多少の調査費用など、至極安いものであるのです。
 

3. 企業が不祥事で失う莫大なもの

 ひとたびミスークレームートラブル・事故・事件を引き起こすと、その損害はさまざまな範囲に及ぶことになります。
 
1)問題に関わる顧客企業、ユーザー、消費者などに対するお詫びに要する費用
2)問題を起こした原因を調べるための費用。その間の製造・販売中止に要する費用など
3)発生した問題点の穴埋め、修復にかかる経費
4)マスコミ対策に要するお詫び広告などの経費
5)リコールに要する費用
6)修理・サービスの費用
7)部材・部品の無料交換費用
8)新製品(新商品)との交換
9)TV・新聞等マスコミ対策
10)出荷停止...
 ◆なぜ、日本の現場で問題が多発しているのか、前回のその1に続いて解説します。
 

1. 商品、サービスに影響を及ぼしていると推測される発生要因とコストダウンの関係

① 機械などの製品に関して見ると、コストダウンのためにきちんとした実験・検証をせずに製造・販売した結果のトラブルの発生は、マスコミが取り上げることにより表面化したとき、目先の対応だけでも多大なコストを要するようになります。ユーザーが大けがはおろか命までも失うような事態に発展したときは、企業生命を脅かすことにもなります。このような口スコストを生み出すケースには、コストダウンが顕著な原因であるという共通点があるのです。
 
② 本来なら以下の要点を事前に明確にしておくべきところを、「コストを要するから」といって、手を付けずにいたため問題が発生するケースが増加しています。また、事を甘く見て検証しなかったために、近い将来に発生が予測されるケースも増えています。
 
◆因果関係が証明できる範囲と、できない範囲の境界線を明確にする活動をしなかった。たとえば、電磁波と機械の誤作動・健康障害発生との因果関係の検証。同様に、電磁波と電子レンジ、ひげそり、高圧線の下の住居などの健康との関係性。
 
◆ある年に発生した事故が、特定商品に集中している例。たとえば乗用車の暴走、大型トラックやバスなどの脱輪。金属などの耐久性、部分に過大な圧力がかかる設計ミスなどの因果関係分析(タイヤが飛んでいって母子の命を失った例など)。
 
◆遺伝子組み換え食品と健康との関係。海外におけるマウスなどの実験例で発がんとの因果関係分析例はあるが、実験件数が少なく広い範囲では証明できていない。
 
◆牛や豚などの家畜の餌に入っている肝臓がんのもとになるといわれているアフラトキシン(かび菌)と健康との因果関係。たとえばこの菌に汚染された藁やトウモロコシなどを餌とする家畜は、肉の熱処理を行なってもアフラトキシンは分解されないとされている。しかし、この肉を食べ続けることと肝臓がんとの因果関係は証明されていない。
 
◆海外で入手する部材・部品の素材チェックと、海外工場で組み立てる製品の工程管理チェックの不備から起こるミスークレームートラブル・事故・事件など。
 
 いずれも、調べていくとコストダウンとの関係性に直面するのです。ただし、コストダウンが直接の原因とは特定が難しい場面もありますが、「不満足度調査」結果から見ると、かなりの比率でコストとの関係が浮上します。
 
  CSM 
 

2. コストダウンとの因果関係が証明されたケース

① 食品添加物による内臓障害の発生
② 海外で製造した部材の材質がバラついていたために起こったひび・割れ・穴あき(たとえば液体が流れる樹脂の材質不良など)
③ 部品の品質不揃いにより発生した製品の不具合(同じ箇所が何回も故障するなど)
④ 鋳物の密度不揃いによる穴あき、割れなどの発生
⑤ ホルモン剤と抗生物質で育てた養殖魚による体調不良
⑥ 食材衛生管理の不備によって引き起こされた食中毒
⑦ 設計ミスで引き起こした耐震性の欠如(耐震性のゴムなど)
⑧ 金属混入の食品(包丁の欠けた破片の混入で口の中をけが)
⑨ 小石、釘などが食品に混入(いたずらでわざと入れた)
⑩ 設計・開発・製造・販売などの連携不足が招いた製品トラブル(特定医薬品の温度管理の問題など)
⑪ 修理・点検サービスの見落とし、手抜きが引き起こした事故
⑫ 部材・部品のコストダウン(部材の分量を減らす、異質の材料に切り替える、部品点数を減らすなど)
 
 など、これも枚挙にいとまがないほどの例が多発しています。本質的なコストダウンを行なうのであれば、その前に以上のような問題を引き起こした原因を「不満足度調査」(年I回が多い)で究明し、問題が起こる前にこれを解消しておくといった、きちんとした対応が必要です。膨大な損害を及ぼしロスコストを発生させてしまうことを考えると、多少の調査費用など、至極安いものであるのです。
 

3. 企業が不祥事で失う莫大なもの

 ひとたびミスークレームートラブル・事故・事件を引き起こすと、その損害はさまざまな範囲に及ぶことになります。
 
1)問題に関わる顧客企業、ユーザー、消費者などに対するお詫びに要する費用
2)問題を起こした原因を調べるための費用。その間の製造・販売中止に要する費用など
3)発生した問題点の穴埋め、修復にかかる経費
4)マスコミ対策に要するお詫び広告などの経費
5)リコールに要する費用
6)修理・サービスの費用
7)部材・部品の無料交換費用
8)新製品(新商品)との交換
9)TV・新聞等マスコミ対策
10)出荷停止の費用
11)工場の稼働停止に関わる費用(売上減少、機械のメンテナンス、人件費負担など)
12)出荷製品の回収とそれに要する一切の費用
13)治療などに要する費用
14)金融機関からの急場に要する経費の借り入れ負担
15)営業担当者のお詫び行脚に要する経費。ならびに営業行為の停止による売上低下
16)信用カーブランドカ低下・失墜、ブランドカ崩壊
17)顧客数の減少、購入数の減少
18)信用回復に要する費用
19)企業崩壊
 
 とにもかくにも膨大な出費が伴うのです。下手なコストダウンをするよりは、何よりもまずは、きちんとした活動を行なうことが必要であることは、過去の例を見ても明らかですが、厄介な問題が起こってから悔やむという例が多すぎます。日本において、企業に届く不満・クレームは全体のわずか1~3%です(武田マネジメントシステムズ調べ)。残りの97~99%は企業に届いていないということを知っておかなければなりません。
 
 次回は、分業・モジュール化の進行についてです。
 
【出典】 武田哲男 著 なぜ、あの企業の「顧客満足」は、すごいのか PHP研究所発行
筆者のご承諾により、抜粋を連載 
  

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この記事の著者

武田 哲男

常に顧客を中核とする課題取組みにより「業績=顧客の“継続”支持率達成!」 「顧客との良質で永いご縁の創造」に取組んできた。モノづくりとサービスの融合に注力。

常に顧客を中核とする課題取組みにより「業績=顧客の“継続”支持率達成!」 「顧客との良質で永いご縁の創造」に取組んできた。モノづくりとサービスの融合に注力。


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