継続した業績向上を図るには CS経営(その9)

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◆なぜ、分業課・モジュール化は人間性を阻害するのか

5. 現場力を上げるには「融合」しかない:「技術第一主義」だけでは成果は上がらない

 意外にも、技術優先主義の企業が苦戦しているようです。「技術の○○社」「サービスの××社」というキャッチフレーズのコマーシャル・広告表現は、かえってそれが弱いから強くしたいという企業に多いのです。これまでは確かに技術が世の中を引っ張ってきました。途中からサービスに目を向ける傾向もあったようです。たしかに技術も、サービスも差別化要素です。ところが、ここのところ技術力だけでは勝てないのです。技術力を謳った製品があっても、サービスと一体になっていない限り、それほど他社と差がつかないからです。
 
 今どき「世界初」などの新技術・技術革新は難しいでしょう。技術も今やコモディティ化し、それなりのレベルの技術はたいていの企業が保持している時代です。そしてもちろん発展途上国も同様です。ちなみにほとんどのアンケート調査において、「以下の項目をチェックしてください」と5段階評価、すなわち5=「非常に良い・非常に満足」、4=「良い・満足」とした場合、先進国ではたいてい4=「良い・満足」に丸がつく。この比率がおよそ80%となるのです。
 
 つまり世間相場は80点ということでする。しかし表現が「良い・満足」だから、顧客は当社に満足していると解釈するが、実はそれが世間の平均点なのだということに早く気づくべきです。その証拠に80点を取って安心している企業が右眉下がりの業績という例は非常に多いのです。百貨店だって80点以上の点を取りますが、しかしそれではなぜ衰退、消滅の道を歩んできたのでしょうか? 世の中の平均点だったからです。つまり80点以上を獲得する企業に顧客が移っているための衰退化、消滅化に他ならないのです。
 
 くどいようだが、ほとんどの企業が80点を取得しているから、「普通」はむしろ悪いほうに組み入れられることとなるのです。商品、サービス、技術、システム、人的要素、いずれもがコモディティ化しているのです。少なくとも顧客からは、「いずれの商品、サービスもそれほど差がない」とみなされています。そして、なんとかしようと、一時しのぎに取り組むのが「コストダウン」「低価格競争」「値下げ合戦」なのです。
 
 ともかくコストを下げるために原材料を減らす、たとえば鉄板を薄くする、部品点数を減らす、消費者・ユーザーの目に触れない箇所の手を抜く、安価に作ってくれる外注先に発注する、分業化・モジュール化を図るなど、さまざまな手を打つことになるのです。これが見事に、クレームートラブル・事故・事件を引き起こす。ブランドは一気に崩壊。後追いのロスコストが膨大になる。これは近年目立つ現象です。
 
 CSM
 

6. 現場力を上げるには「融合」しかない:「トップの戦略」だけではうまくいかない

 優秀なトップ層による戦略が組織を引っ張ってきました。成果を上げてきた企業もあるでしょう。しかし、成果主義をはじめとする「どのようにして儲けるか」「どうやって売上を上げるか」「どのように利益を確保するか」「どのような製品を作れば売れるか」「どのようにして売るか」といった考え方は企業第一王義であり、顧客をらちがいに置いた考え方です。だから思い通りにはいかないのです。少なくとも、大きな効果を上げにくくなっているのです。
 
 どんなに優れたトップでも、どんなに優れた戦略を構築したとしても、購入するかしないかを決めるのは顧客、お金を払うか否かを決めるのも顧客、継続購入する・しないを決めるのも顧客です。だから基本的に、顧客を大切にしない企業は衰退します。また、顧客接点を担う現場の人々が経営を心配し、経営者が現場の心配をする企業は繁栄しないのです。顧客接点を担う現場は現場の心配をして、経営者は経営の心配するのが本筋であり役割だからです。
 
 経営者による戦略を戦術に、そして仕事レベルに落とし込んで実行に導くのは、トップ層・管理者層であり、具体的に実行し成果を上げるのは現場担当者です。いうまでもなく現場が経営の心配をするのは不幸であり、経営者・管理者が現場の心配をするのでは役割を担っているとはいえないのです。お互いに不幸です。ともあれ、顧客と常にコミュニケーションをとっているのは現場であるから、現場力は非常に重要であることはいうまでもないでしょう。
 
 現場力こそが顧客第一、顧客中心、顧客重点、顧客本位主義を具現化する機能であり、役割であり、本質なのです。売上・利益至上主義で顧客第一を目指さない成果主義の経営者たちは、株主総会で業績低迷を問題視されないため、御...

◆なぜ、分業課・モジュール化は人間性を阻害するのか

5. 現場力を上げるには「融合」しかない:「技術第一主義」だけでは成果は上がらない

 意外にも、技術優先主義の企業が苦戦しているようです。「技術の○○社」「サービスの××社」というキャッチフレーズのコマーシャル・広告表現は、かえってそれが弱いから強くしたいという企業に多いのです。これまでは確かに技術が世の中を引っ張ってきました。途中からサービスに目を向ける傾向もあったようです。たしかに技術も、サービスも差別化要素です。ところが、ここのところ技術力だけでは勝てないのです。技術力を謳った製品があっても、サービスと一体になっていない限り、それほど他社と差がつかないからです。
 
 今どき「世界初」などの新技術・技術革新は難しいでしょう。技術も今やコモディティ化し、それなりのレベルの技術はたいていの企業が保持している時代です。そしてもちろん発展途上国も同様です。ちなみにほとんどのアンケート調査において、「以下の項目をチェックしてください」と5段階評価、すなわち5=「非常に良い・非常に満足」、4=「良い・満足」とした場合、先進国ではたいてい4=「良い・満足」に丸がつく。この比率がおよそ80%となるのです。
 
 つまり世間相場は80点ということでする。しかし表現が「良い・満足」だから、顧客は当社に満足していると解釈するが、実はそれが世間の平均点なのだということに早く気づくべきです。その証拠に80点を取って安心している企業が右眉下がりの業績という例は非常に多いのです。百貨店だって80点以上の点を取りますが、しかしそれではなぜ衰退、消滅の道を歩んできたのでしょうか? 世の中の平均点だったからです。つまり80点以上を獲得する企業に顧客が移っているための衰退化、消滅化に他ならないのです。
 
 くどいようだが、ほとんどの企業が80点を取得しているから、「普通」はむしろ悪いほうに組み入れられることとなるのです。商品、サービス、技術、システム、人的要素、いずれもがコモディティ化しているのです。少なくとも顧客からは、「いずれの商品、サービスもそれほど差がない」とみなされています。そして、なんとかしようと、一時しのぎに取り組むのが「コストダウン」「低価格競争」「値下げ合戦」なのです。
 
 ともかくコストを下げるために原材料を減らす、たとえば鉄板を薄くする、部品点数を減らす、消費者・ユーザーの目に触れない箇所の手を抜く、安価に作ってくれる外注先に発注する、分業化・モジュール化を図るなど、さまざまな手を打つことになるのです。これが見事に、クレームートラブル・事故・事件を引き起こす。ブランドは一気に崩壊。後追いのロスコストが膨大になる。これは近年目立つ現象です。
 
 CSM
 

6. 現場力を上げるには「融合」しかない:「トップの戦略」だけではうまくいかない

 優秀なトップ層による戦略が組織を引っ張ってきました。成果を上げてきた企業もあるでしょう。しかし、成果主義をはじめとする「どのようにして儲けるか」「どうやって売上を上げるか」「どのように利益を確保するか」「どのような製品を作れば売れるか」「どのようにして売るか」といった考え方は企業第一王義であり、顧客をらちがいに置いた考え方です。だから思い通りにはいかないのです。少なくとも、大きな効果を上げにくくなっているのです。
 
 どんなに優れたトップでも、どんなに優れた戦略を構築したとしても、購入するかしないかを決めるのは顧客、お金を払うか否かを決めるのも顧客、継続購入する・しないを決めるのも顧客です。だから基本的に、顧客を大切にしない企業は衰退します。また、顧客接点を担う現場の人々が経営を心配し、経営者が現場の心配をする企業は繁栄しないのです。顧客接点を担う現場は現場の心配をして、経営者は経営の心配するのが本筋であり役割だからです。
 
 経営者による戦略を戦術に、そして仕事レベルに落とし込んで実行に導くのは、トップ層・管理者層であり、具体的に実行し成果を上げるのは現場担当者です。いうまでもなく現場が経営の心配をするのは不幸であり、経営者・管理者が現場の心配をするのでは役割を担っているとはいえないのです。お互いに不幸です。ともあれ、顧客と常にコミュニケーションをとっているのは現場であるから、現場力は非常に重要であることはいうまでもないでしょう。
 
 現場力こそが顧客第一、顧客中心、顧客重点、顧客本位主義を具現化する機能であり、役割であり、本質なのです。売上・利益至上主義で顧客第一を目指さない成果主義の経営者たちは、株主総会で業績低迷を問題視されないため、御身大切で売上・利益を重視するあまり、現場力を発揮するために必要な教育・訓練の費用まで削減するきらいがあります。これは一過性の経営でしかないのです。つまり「自分の任期中さえうまくいけば、それでよい」という御身大切主義です。これを企業の「骨粗但症」と呼びます。
 
 長期間にわたり、企業に資産を蓄積し続けるのは、現場力すなわち人材(財)のもたらすところです。人材が乏しくなってしまったのでは、付加価値や創造力は生まれないのです。現時点における教育費用の削減は、少なくとも現時点ではコストダウンに貢献するだろうが、その後の中長期のスパンにおいては、その時点になって悔いても後の祭りです。今後の継続した業績向上を図るためには「人」を育てることが第一義で、それは見えない企業資産の蓄積となるのです。それが企業の付加価値創造の原動力になるのです。
 
 次回は、7. 現場力を上げるには「融合」しかない:せこい社員、社内遊泳術ばかり磨く管理職、太鼓持ちの達人からです。
 
【出典】 武田哲男 著 なぜ、あの企業の「顧客満足」は、すごいのか PHP研究所発行
筆者のご承諾により、抜粋を連載
 

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この記事の著者

武田 哲男

常に顧客を中核とする課題取組みにより「業績=顧客の“継続”支持率達成!」 「顧客との良質で永いご縁の創造」に取組んできた。モノづくりとサービスの融合に注力。

常に顧客を中核とする課題取組みにより「業績=顧客の“継続”支持率達成!」 「顧客との良質で永いご縁の創造」に取組んできた。モノづくりとサービスの融合に注力。


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