フラット立ち寄れる何でも相談所 CS経営(その40)

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◆なぜ、あの企業の「顧客満足」はすごいのか

7.フラット立ち寄れる何でも相談所:エース会計事務所

(3) 類いまれな専門家集団の知恵が創造する「顧客満足」

 山田咲道氏の組織は「エース会計事務所」という名前で、だいたいの仕事の範囲は想定できます。驚くべきは、その仕事の仕方です。一般的な会計事務所と企業の関係というのは、数力月に一回、帳簿の整理や年末調整を行ない、決算期や税金の申告といった特定時期にのみ、接点を持つというものです。
 
 しかし、エース会計事務所は違います。何もないときも互いに会って雑談するのです。東京駅近くの八重洲という便利な場所に事務所を開設しているからでもありますが、顧客はふらっと立ち寄れます。もちろん、交通の便のよさだけで人が集まるということはないでしょう。そこに何らかの付加価値があるから、顧客がふらっと立ち寄るのです。駅から近い、雨に濡れない、近くに人気の商業施設がある、大通りに面しているなど、立地だけで人が集まるほど世の中甘くないでしょう。付加価値が伴わない限り、立地は何の役にも立たないと私は断言します。
 
 では、なぜ、ふらっと立ち寄るのでしょうか。それは顧客に寄り添った対応を普段から心がけているからです。そのため、ある種の「友達感覚」にも近い感情を顧客は抱くようになり、とくに大した話題がなかったとしても、近くに寄った折には、「あいつに会っていくか」というくらいの気持ちで、雑談、愚痴、近況報告をしてくれるのです。
 
 そうした会話のなかで、何気なく話したことが実は重要なのです。うっかり見逃すと後で取り返しのつかない事態を引き起こしてしまうような失敗の芽を、雑談をすることで、早めに摘み取ることが可能になるのです。山田氏の顧客の中には、この雑談で救われた方が多くいるという。
 
 敷居の高い公認会計士に対しては、誰もが距離と時間を置くでしょうが、形式張らない、庶民的感覚で温もり感のある環境は人を惹きつけるのです。そこで働くスタッフ、とくに女性スタッフからは、よくある「虎の威を借る狐」のような上から目線の態度、姿勢、言葉づかいは微塵も感じられないのです。そればかりか、サービス業の接客業務などは、ここで学べるのではないかというくらい、躾も身についていて、エチケットーマナーも整っているのです。
 
 雑談の効用はまだあります。日頃から頻繁にコミュニケーションをとって、顧客である経営者の人間性までよくわかっているから、いざプロの専門家を紹介する際に、その経営者の性格、能力、経営実態など、諸々の要素を勘案したうえで、顧客にぴったりの相手を紹介することが可能になるのです。
 
 結果、さらに信頼関係は強くなり、関係性が長くなっていきます。
 
 山田氏が紹介する「プロ」は、知識・技術があることは当たり前で、さらに、事の真相を見抜く力を有しているため、依頼者が気づかないレベルの解決策を提示し、問題を解決に導くことができるのです。顧客にとっては安心して任せられるし、なおかつ、常に新鮮な驚きをもってプロと接することができるのです。
 
 それだけではない。時に応じて、紹介するだけでなく山田氏自身が立ち会うことで、さらに立体的な効果を与えています。それは、あたかも患者のために外科医、内科医、看護師が参加するプロジェクトのごとく、顧客(患者)にとって、一番適切な解決策を探し、実行してくれるということです。
 
 全方位的で鋭敏な各分野の専門家が、問題を抱えた企業の状況を鋭いアンテナでキャッチし、スピーディで正確な手を打つ手伝いをしてくれます。たとえ、複雑な案件であっても、どのような治療、手術をしたらいいのかについて専門家が集まり、タテ×ヨコ×ナナメ、心理的、三次元・四次元的な検討をしてくれるから、必要かつ十分な手術となり、命を失わないばかりか、すぐに健康体に戻れるのです。
 
 一例を挙げると、ある日エース会計事務所を訪れたA社長と、いつものような雑談をしていると...
 
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◆なぜ、あの企業の「顧客満足」はすごいのか

7.フラット立ち寄れる何でも相談所:エース会計事務所

(3) 類いまれな専門家集団の知恵が創造する「顧客満足」

 山田咲道氏の組織は「エース会計事務所」という名前で、だいたいの仕事の範囲は想定できます。驚くべきは、その仕事の仕方です。一般的な会計事務所と企業の関係というのは、数力月に一回、帳簿の整理や年末調整を行ない、決算期や税金の申告といった特定時期にのみ、接点を持つというものです。
 
 しかし、エース会計事務所は違います。何もないときも互いに会って雑談するのです。東京駅近くの八重洲という便利な場所に事務所を開設しているからでもありますが、顧客はふらっと立ち寄れます。もちろん、交通の便のよさだけで人が集まるということはないでしょう。そこに何らかの付加価値があるから、顧客がふらっと立ち寄るのです。駅から近い、雨に濡れない、近くに人気の商業施設がある、大通りに面しているなど、立地だけで人が集まるほど世の中甘くないでしょう。付加価値が伴わない限り、立地は何の役にも立たないと私は断言します。
 
 では、なぜ、ふらっと立ち寄るのでしょうか。それは顧客に寄り添った対応を普段から心がけているからです。そのため、ある種の「友達感覚」にも近い感情を顧客は抱くようになり、とくに大した話題がなかったとしても、近くに寄った折には、「あいつに会っていくか」というくらいの気持ちで、雑談、愚痴、近況報告をしてくれるのです。
 
 そうした会話のなかで、何気なく話したことが実は重要なのです。うっかり見逃すと後で取り返しのつかない事態を引き起こしてしまうような失敗の芽を、雑談をすることで、早めに摘み取ることが可能になるのです。山田氏の顧客の中には、この雑談で救われた方が多くいるという。
 
 敷居の高い公認会計士に対しては、誰もが距離と時間を置くでしょうが、形式張らない、庶民的感覚で温もり感のある環境は人を惹きつけるのです。そこで働くスタッフ、とくに女性スタッフからは、よくある「虎の威を借る狐」のような上から目線の態度、姿勢、言葉づかいは微塵も感じられないのです。そればかりか、サービス業の接客業務などは、ここで学べるのではないかというくらい、躾も身についていて、エチケットーマナーも整っているのです。
 
 雑談の効用はまだあります。日頃から頻繁にコミュニケーションをとって、顧客である経営者の人間性までよくわかっているから、いざプロの専門家を紹介する際に、その経営者の性格、能力、経営実態など、諸々の要素を勘案したうえで、顧客にぴったりの相手を紹介することが可能になるのです。
 
 結果、さらに信頼関係は強くなり、関係性が長くなっていきます。
 
 山田氏が紹介する「プロ」は、知識・技術があることは当たり前で、さらに、事の真相を見抜く力を有しているため、依頼者が気づかないレベルの解決策を提示し、問題を解決に導くことができるのです。顧客にとっては安心して任せられるし、なおかつ、常に新鮮な驚きをもってプロと接することができるのです。
 
 それだけではない。時に応じて、紹介するだけでなく山田氏自身が立ち会うことで、さらに立体的な効果を与えています。それは、あたかも患者のために外科医、内科医、看護師が参加するプロジェクトのごとく、顧客(患者)にとって、一番適切な解決策を探し、実行してくれるということです。
 
 全方位的で鋭敏な各分野の専門家が、問題を抱えた企業の状況を鋭いアンテナでキャッチし、スピーディで正確な手を打つ手伝いをしてくれます。たとえ、複雑な案件であっても、どのような治療、手術をしたらいいのかについて専門家が集まり、タテ×ヨコ×ナナメ、心理的、三次元・四次元的な検討をしてくれるから、必要かつ十分な手術となり、命を失わないばかりか、すぐに健康体に戻れるのです。
 
 一例を挙げると、ある日エース会計事務所を訪れたA社長と、いつものような雑談をしているときにふと耳にしたA社長の表現から、すでに変更になった税制の法的要素にまるで気づいていないことを訪った山田氏は、その内容の解説を行ない、さらにその税制の法適要素に関してA社長と相性の合う、しかもその分野に長けた弁護士を紹介したのです。
 
 合わせて総務・人事の専門家を紹介し、組織体制を組み直すと共に、今後の経営の方向性について議論と打ち合わせを行ないました。もし、このような手を打っていなければ、経営面で大きなブレーキとなる多額納税に直面したはずであったが、節税によりその危険をクリアーしたのです。
 
 そうしたことに気づかなかった財務面の機能・組織の在り方にも手を打ち、また、営業活動における顧客との関係性にも手を打つことになったのです。
 
 次回は、(4) 人づくりのベストプラクティス、から解説を続けます。
 
【出典】 武田哲男 著 なぜ、あの企業の「顧客満足」は、すごいのか PHP研究所発行
筆者のご承諾により、抜粋を連載
 

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この記事の著者

武田 哲男

常に顧客を中核とする課題取組みにより「業績=顧客の“継続”支持率達成!」 「顧客との良質で永いご縁の創造」に取組んできた。モノづくりとサービスの融合に注力。

常に顧客を中核とする課題取組みにより「業績=顧客の“継続”支持率達成!」 「顧客との良質で永いご縁の創造」に取組んできた。モノづくりとサービスの融合に注力。


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