1. 顧客に高い満足を提供することに貢献せよ
前回のその23に続いて解説します。
クレーム顧客が企業に対応を求めたとき、企業本位の処理で片づけられたと感じた場合、商品の再購入率は0~2%に激減してしまうという当研究所の調査結果があります。ただし、この中にはさまざまな義理で購入している人も含まれているので、純粋な購入率はこの場合ゼロに等しいのです。つまり、「間違ったクレーム対応」が商品の再購入率をほとんど0%にし、著しい顧客離れを起こすことが実証されているのです。
逆に、お客さま相談室が「顧客に高い満足を提供することに貢献する部門」として確立できたならば、「顧客の支持を拡大することに貢献する部門」として、さらに重要な使命を果たすことも可能です。
お客さま相談室の社内的な位置づけは、起こってしまったトラブルや持ち込まれたクレームを受け身的に処理する組織では絶対になく、顧客の支持を拡大させていく「創造型の組織」であることをしっかり認識していただきたいと思います。
顧客からの情報を受信し、受信した情報をベースに企業情報を発信して、顧客との信頼関係を構築しながら支持率を向上させていくのです。
それこそが、お客さま相談室の最大の使命です。
したがって、お客さま相談室がきちんと機能しているか否かは、「企業の健康のバロメーター」と言えます。顧客からもたらされる情報に真正面から向き合う体制が築かれているかどうかで、企業の健康度は厳しくチェックされていかなければならないのです。
私はここまでお客さま相談室を、購買顧客との関係を軸にしながら論じてきましたが、お客さま相談室が向き合う対象は、自社の購買顧客だけではないのです。社内の関係各部門、関連会社、営業及び販売ネットワーク、独立販売店、企業を取り巻く外部組織(消費者団体、行政機関など)など、お客さま相談室は広く社会全体と向き合いながら、正しい業務を遂行していく責任を負っています。
そのように思考のウイングを広げていくと、どこか一点にターゲットを絞り込んだ「満足の提供」では、とうてい職責を全うできないことが容易に理解できるはずです...
。特定の一方向だけを向いた対応では、多種多様な顧客に最大公約数的な満足を提供することはとてもできません。
お客さま相談室は、「顧客に高い満足を提供することに貢献する部門」であり、「対象となる顧客は広く社会全体に存在している」という事実を再確認しながら、相談室業務の現実に踏み込んでいきたいと思います。
次回に続きます。
【出典】武田哲男 著 クレーム対応、ここがポイント ダイヤモンド社発行
筆者のご承諾により、抜粋を連載