「顧客満足度」の調査 顧客の声から顧客の価値へ(その5)

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【顧客の声から顧客の価値へ、連載記事へのリンク】

  1.  ボイス・オブ・カスタマー
  2.  目的やゴールを達成するためのプロセス
  3.  顧客フィードバックの重みとは
  4.  顧客満足度と顧客ロイヤルティ
  5.  「顧客満足度」の調査
  6.  顧客満足度を高めるためのアクション
  7.  VOCについて、Q&Aの形式で
  8.  VOCの第三段階、市場における企業価値の向上
  9.  品質ギャップ分析とは
  10. パワー・ブランドによる市場の独占

 

 前回は、「顧客ロイヤルティ」を調べるためにはネット・プロモーター・スコア(NPS)が有効であること、そして具体的なアクションを起こすためには「顧客満足度」を調査する必要がある、ということを解説しました。それを受けて今回は「顧客満足度」の調査について説明してみたいと思います。

1. 顧客満足度

 ネット・プロモーター・スコアを使った「顧客ロイヤルティ」の調査が「この製品やサービスを友人や家族に薦める可能性はどのくらいありますか?」と顧客に聞くのに対して、「顧客満足度」の調査は、「この製品(またはサービス)に対して、どの程度満足していますか?」と聞きます。しかし顧客からの回答を具体的なアクションに繋げるためには、具体的な質問をしなければなりません。

 具体的な質問を考えるとき、価値工学(バリュー・エンジニアリング)の定義が参考になります。

 価値工学では、「顧客はモノやサービスをお金を出して買うのではなく、仕事(ジョブ)を達成するための機能(ファンクション)をお金を出して買うのである」とし、それを「価値」と定義付けています。つまり、「顧客満足度」を調べるということは、すなわち顧客が知覚する価値について調べることであり、また顧客が達成したい仕事やそれに必要な機能を知ることである、とも言えます。

 ところで価値は機能をコストで割ったものとして定義することができますが、モノやサービスが提供する様々な価値について、それぞれのコストを計算することは容易ではありません。

 そこで価値の代わりに価値インデックスを用いることがあります。価値インデックスは顧客が知覚する機能を顧客が期待する機能で割ったものと定義することができます。そして価値インデックスは後述の「顧客満足度調査」で使うの5段階評価と同じ様に考えることもできます。

 さて、顧客満足度を調査して、データを数量分析するためにはどのような手順を踏めばよいのでしょうか。ここでは次の4つの手順について説明します。

  • (1) 仕事(ジョブ)の把握
  • (2) 顧客が期待する機能(まはた結果)の把握
  • (3) 数量的データ計測
  • (4) データ分析

顧客満足

顧客満足度

2. 仕事(ジョブ)の把握

 顧客が達成したい仕事やそれに必要な機能を知ることができれば、それを提供するための、またはそれを改善するための具体的なアクションを起こすことができます。そこでまず、顧客が達成したい仕事をジョブ・マップを使って考えます。

 ジョブ・マップは、顧客が達成したい仕事(ジョブ)の一連の流れ(ジョブ・プロセス・ステップ)を表したものです。例えば、顧客が「車のオイル交換」というサービスを受けるとき(ジョブ)、顧客は次のような手順(ジョブ・プロセス・ステップ)を踏むでしょう。

  • A. オイル交換の時期を知る
  • B. オイル交換の場所を決める
  • C. オイル交換の予約をする
  • D. オイル交換の予約を確認する
  • E. オイル交換を受ける
  • F. 車の点検結果を知る
  • G. 車の修理を受ける
  • H. 代金を支払う

 顧客はオイル交換作業(メイン・ジョブ)を達成するために、それに関連する様々な付随作業(セカンダリー・ジョブ)も達成しなくてはなりません。そしてそれぞれの仕事の達成具合が顧客の満足度に影響を与えます。顧客に提供する価値が競合他社よりも高ければ、企業の業績は上がります。そのためにもジョブ・マップは顧客の視点で作らなければなりません。

顧客満足

ジョブ・マッピング(1)

 顧客が仕事を達成するためには、(必ずしもそうではありませんが)一般的に次の8ステップを踏むとされています。

  • (1) 定義する(計画する、選択する、決定する)
  • (2) 位置づける(集める、向かう、取り出す)
  • (3) 準備する(設定する、並べる、検査する)
  • (4) 確認する(評価する、順序づける、決める)
  • (5) 実行する(行動する、移行する、管理する)
  • (6) 監視する(確認する、追跡する、照合する)
  • (7) 変更する(更新する、調整する、維持する)
  • (8) 結論づける(保存する、完成する、終了する)

 先のオイル交換作業の例も、おおよそこの8ステップを踏んでいます。次の電気丸のこ製品を使った仕事も、この8ステップを使うと認識しやすくなります。

  • A. 材料の切る場所を決める(位置づける)
  • B. 電源を入れる(準備する)
  • C. 電機丸のこを材料に当てる(確認する)
  • D. 周囲の安全を確かめる(確認する)
  • E. 材料を切り始める(実行する)
  • F. 材料を切る(監視する)
  • G. 電源を抜く(結論付ける)

顧客満足

ジョブ・マッピング(2)

 産業用の大きな装置などを企業から企業へ(BtoB)提供するような場合は、製品とサービスが同時に提供されるだけではなく、一つの製品に複数の顧客が存在し、それぞれの顧客が違った仕事を行います。そのような場合はジョブ・マップも大きくて複雑なものになります。

 次の例は産業用の電機装置を、顧客である機械設備企業に納品する際のジョブ・マップです。顧客である機械設備会社の制御エンジニア、機械エンジニア、ソフトウェアエンジニアは、提供された電機装置を使って違った仕事を達成しなければなりません。それぞれの顧客の満足度は、それぞれの仕事を達成するために提供された価値(機能)の度合いによって変わってきます。

顧客満足

ジョブ・マッピング(3)

3. 消費チェーン

 仕事(ジョブ)の達成以外にも、パッケージのデザインや環境保護、耐久性や利便性なども顧客満足度に大きな影響を与えます。そのため、製品やサービスの購入から廃棄までのプロセスを、顧客の視点から理解する必要があります。

 ジョブ・プロセス・ステップと同様に、消費チェーンの各ステップも製...

【顧客の声から顧客の価値へ、連載記事へのリンク】

  1.  ボイス・オブ・カスタマー
  2.  目的やゴールを達成するためのプロセス
  3.  顧客フィードバックの重みとは
  4.  顧客満足度と顧客ロイヤルティ
  5.  「顧客満足度」の調査
  6.  顧客満足度を高めるためのアクション
  7.  VOCについて、Q&Aの形式で
  8.  VOCの第三段階、市場における企業価値の向上
  9.  品質ギャップ分析とは
  10. パワー・ブランドによる市場の独占

 

 前回は、「顧客ロイヤルティ」を調べるためにはネット・プロモーター・スコア(NPS)が有効であること、そして具体的なアクションを起こすためには「顧客満足度」を調査する必要がある、ということを解説しました。それを受けて今回は「顧客満足度」の調査について説明してみたいと思います。

1. 顧客満足度

 ネット・プロモーター・スコアを使った「顧客ロイヤルティ」の調査が「この製品やサービスを友人や家族に薦める可能性はどのくらいありますか?」と顧客に聞くのに対して、「顧客満足度」の調査は、「この製品(またはサービス)に対して、どの程度満足していますか?」と聞きます。しかし顧客からの回答を具体的なアクションに繋げるためには、具体的な質問をしなければなりません。

 具体的な質問を考えるとき、価値工学(バリュー・エンジニアリング)の定義が参考になります。

 価値工学では、「顧客はモノやサービスをお金を出して買うのではなく、仕事(ジョブ)を達成するための機能(ファンクション)をお金を出して買うのである」とし、それを「価値」と定義付けています。つまり、「顧客満足度」を調べるということは、すなわち顧客が知覚する価値について調べることであり、また顧客が達成したい仕事やそれに必要な機能を知ることである、とも言えます。

 ところで価値は機能をコストで割ったものとして定義することができますが、モノやサービスが提供する様々な価値について、それぞれのコストを計算することは容易ではありません。

 そこで価値の代わりに価値インデックスを用いることがあります。価値インデックスは顧客が知覚する機能を顧客が期待する機能で割ったものと定義することができます。そして価値インデックスは後述の「顧客満足度調査」で使うの5段階評価と同じ様に考えることもできます。

 さて、顧客満足度を調査して、データを数量分析するためにはどのような手順を踏めばよいのでしょうか。ここでは次の4つの手順について説明します。

  • (1) 仕事(ジョブ)の把握
  • (2) 顧客が期待する機能(まはた結果)の把握
  • (3) 数量的データ計測
  • (4) データ分析

顧客満足

顧客満足度

2. 仕事(ジョブ)の把握

 顧客が達成したい仕事やそれに必要な機能を知ることができれば、それを提供するための、またはそれを改善するための具体的なアクションを起こすことができます。そこでまず、顧客が達成したい仕事をジョブ・マップを使って考えます。

 ジョブ・マップは、顧客が達成したい仕事(ジョブ)の一連の流れ(ジョブ・プロセス・ステップ)を表したものです。例えば、顧客が「車のオイル交換」というサービスを受けるとき(ジョブ)、顧客は次のような手順(ジョブ・プロセス・ステップ)を踏むでしょう。

  • A. オイル交換の時期を知る
  • B. オイル交換の場所を決める
  • C. オイル交換の予約をする
  • D. オイル交換の予約を確認する
  • E. オイル交換を受ける
  • F. 車の点検結果を知る
  • G. 車の修理を受ける
  • H. 代金を支払う

 顧客はオイル交換作業(メイン・ジョブ)を達成するために、それに関連する様々な付随作業(セカンダリー・ジョブ)も達成しなくてはなりません。そしてそれぞれの仕事の達成具合が顧客の満足度に影響を与えます。顧客に提供する価値が競合他社よりも高ければ、企業の業績は上がります。そのためにもジョブ・マップは顧客の視点で作らなければなりません。

顧客満足

ジョブ・マッピング(1)

 顧客が仕事を達成するためには、(必ずしもそうではありませんが)一般的に次の8ステップを踏むとされています。

  • (1) 定義する(計画する、選択する、決定する)
  • (2) 位置づける(集める、向かう、取り出す)
  • (3) 準備する(設定する、並べる、検査する)
  • (4) 確認する(評価する、順序づける、決める)
  • (5) 実行する(行動する、移行する、管理する)
  • (6) 監視する(確認する、追跡する、照合する)
  • (7) 変更する(更新する、調整する、維持する)
  • (8) 結論づける(保存する、完成する、終了する)

 先のオイル交換作業の例も、おおよそこの8ステップを踏んでいます。次の電気丸のこ製品を使った仕事も、この8ステップを使うと認識しやすくなります。

  • A. 材料の切る場所を決める(位置づける)
  • B. 電源を入れる(準備する)
  • C. 電機丸のこを材料に当てる(確認する)
  • D. 周囲の安全を確かめる(確認する)
  • E. 材料を切り始める(実行する)
  • F. 材料を切る(監視する)
  • G. 電源を抜く(結論付ける)

顧客満足

ジョブ・マッピング(2)

 産業用の大きな装置などを企業から企業へ(BtoB)提供するような場合は、製品とサービスが同時に提供されるだけではなく、一つの製品に複数の顧客が存在し、それぞれの顧客が違った仕事を行います。そのような場合はジョブ・マップも大きくて複雑なものになります。

 次の例は産業用の電機装置を、顧客である機械設備企業に納品する際のジョブ・マップです。顧客である機械設備会社の制御エンジニア、機械エンジニア、ソフトウェアエンジニアは、提供された電機装置を使って違った仕事を達成しなければなりません。それぞれの顧客の満足度は、それぞれの仕事を達成するために提供された価値(機能)の度合いによって変わってきます。

顧客満足

ジョブ・マッピング(3)

3. 消費チェーン

 仕事(ジョブ)の達成以外にも、パッケージのデザインや環境保護、耐久性や利便性なども顧客満足度に大きな影響を与えます。そのため、製品やサービスの購入から廃棄までのプロセスを、顧客の視点から理解する必要があります。

 ジョブ・プロセス・ステップと同様に、消費チェーンの各ステップも製品やサービスごとに顧客の視点から把握します。

4. ジョブ・マップの作り方

 顧客が製品やサービスを使うところを想像しながらジョブ・マップを作成することもできますが、理想的には実際の顧客をインタビューしたり、観察したりして作ります。

  • インタビュー
  • 観察

 そしてジョブ・マップを作るときは、以下のような質問や考え方を通して作っていきます。

  (1)  一般的な8ステップのうち「実行」ステップから始める
  (2) 「実行」するには何を知り、何を決めて置く必要があるのか
  (3)  どんな計画が必要なのか
  (4)  どんな材料や資源が必要なのか
  (5)  どのようにして「実行」を開始するのか
  (6) 「実行」するために位置決めや収集は必要ないのか
  (7)  その他「実行」にあたり準備することはないのか
  (8)  環境や周囲の状況で気をつけることはないのか
  (9)「実行」中に何か平行して行うことはないのか
  (10) 「実行」中に何か監視することはないのか
  (11) 「実行」中に何か変更することはないのか
  (12) 「実行」が完了する状態はどのようなものか
  (13)  完了後に何か確認することはないのか
  (14)  トラブル対策は必要ないのか

 次回に続きます。

◆関連解説:サービスマネジメント

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この記事の著者

津吉 政広

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