事業活動と知財戦略 知財経営の実践(その43)

 

1. 知財の持つ価値 

 知財経営の実践については、その重要性が参考文献のように報告されています。〔1〕〔2〕知財の活用を、企業経営においては、常に意識しましょう。知財経営が有効となるのは、技術が自分の会社の強みとなる場合です。自社の強みを分析してみることが必要です。強みが技術にある場合は、知財戦略を考えてみましょう。

2. 事業活動と知財戦略

 経営戦略として、事業拡大より今の事業の継続に重点をおきたい場合、知財経営は必要なのでしょうか。経営戦略上は、あらゆる場面で知財戦略が必要になります。

3. 知財経営:他社の状況も把握しておく

 自社の知財戦略を立てる上で、他社の知財戦略を把握しておくことが必要です。

 他社の戦略変更によって、自社の経営に大きな影響を受けることがあるからです。例えば、以下のような場合です。業界の1社が知的財産を積極的に活用する方針に転向した場合、他社から知的財産権を根拠に侵害警告を受けた場合です。

 また他社が画期的な技術の特許を取得して、業界をリードしようとする場合は、自社の技術開発戦略だけでなく知財戦略も見直すことが必要となります。トナーの技術開発の場合を例にとると、今までは粉砕トナーという技術が主流だったものが、重合トナーという新しい技術が開発されたということがありました。

 この新しい技術の他社の特許出願状況を確認することが重要です。自社が、新しい技術へ参入する際に、他社の特許による障壁があるのか?これによって、技術開発戦略が異なる場合があるからです。さらに、他社が同様の技術について特許出願した場合に備えておくことが必要です。他社の出願前から同じ技術を使用して販売していたことを明らかに示す「先使用権」の証明の準備をしておくことが重要です。また安心して事業を行うためには、商標権等を含めて知的財産権を取得しておくことも重要です。

4. 知財経営:防御の観点からの知的財産活用事例

 A社は製品が化学品を製造するための中間材料を製造しています。中間材料は、模倣されても発見できないこともあります。そこで以前から、「公証制度」を利用していました。すなわち特許出願をしないで公証役場で証拠書類等について確定日付を取得しノウハウとして秘匿していました。他社から特許侵害で警告を受けた際に、先使用権を主張して退けることができました。商標権の活用事例として以下があります。B社は自社のブランド名の商標権を取得しました。

 これにより他社が同じブランド名の権利を取得し、自社の営業に支障をきたすのではないかとの不安を感じることがなく、安心して事業を行なえるようになりました。

5. 知財経営:著作権等の様々な知的財産権にも留意しておく

 知的財産権には、様々な種類があります。もし意匠権や商標権の権利...

を取得していなくても、形態を模倣することが不正競争行為とされたり、著作権として自動的に付与される権利もあります。他社の権利を侵害しないように留意しましょう。逆に著作権を自社の技術やノウハウを保護するために活用することができます。例えば、コンピュータのプログラムを開発した場合は、特許出願をするとともにプログラムの著作権の保護も検討してみましょう。

 次回に続きます。

【参考文献】
〔1〕特許庁「中小・ベンチャー企業知的財産戦略マニュアル2006」(H19.3)
〔2〕「戦略的な知的財産管理に向けて「知財戦略事例集」(2007.4特許庁)

 

◆関連解説『技術マネジメントとは』

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