作業の大半を手作業で行っている工場で、人手不足対応として、ロボットの導入を検討した場合、ロボットを導入すると、どのようなメリットがあるのでしょうか。また、デメリットは?
今回は、ロボット導入について、導入コストやロボット人材確保などの課題もあるのですが適切に対応することで人手不足解決が可能、と言う観点で解説します。
1. ロボット導入のメリット
図1. ロボット導入の理由
ロボット導入の理由には、「効率化」「従事者の労働環境改善」「業務水準」といったものが挙げられます(図1)。そして、これらの理由こそが、ロボット導入のメリットです。
(1) 生産性の向上
ロボットは、休みなしで稼働することが可能なため、夜間や休日も生産することができ、生産性が向上します。人手に代わりロボットが動いてくれるため、残業代が大幅に抑えられて人件費を削減でき、人材募集の手間やコストも削減できます。これにより、コスト削減と価格競争力の強化が図れます。
さらに、省人化により、経験の豊富な技術者を単純作業に従事させることがなくなります。結果的に新製品の開発などの他業務に注力が可能になります。経営者も、企画や営業に専念することができるでしょう。
(2) 人手不足の解消
少子高齢化による労働力不足、人手不足を解消することができます。そして、受注量の増加にも対応が可能です。
(3) 苦渋作業の軽減
重量物の搬送のような重労働や、細かい傷の検査作業のように神経を使う作業といった従事者の苦渋作業をロボットで代替できます。
(4) 従事者の安全確保
危険物の取扱いや高所作業などの危険を伴う作業、粉塵や騒音の発生する悪環境下における作業でも人が作業をしないで済むため、従事者の安全を確保できます。
(5) 業務水準の向上
長時間の繰返し作業の場合、人手作業では時として検査ミスが発生しますが、ロボットの場合はミスが起こらないため、検査の信頼性が向上します。また、生産履歴データの取得ができるので、クレーム対応も迅速に行うことができます。さらに、データの蓄積により、どういう傷や不具合が多いかなどの分析ができ、品質改善へのフィードバックも可能です。
(6) 業務水準の統一
ロボットは、作業精度が高くミスがないので、塗装のムラのように作業者の腕の良し悪しに左右されることなく、作業品質・製品品質を一定に保つことができます。また、作業を均一化できるので、分析データの均質化と安定性を達成でき、結果として製品品質も安定します。さらに、重量物の搬送や細かい作業も長時間可能なうえ、人で起こるような疲労による品質低下の心配がなく、人手に比べて作業効率が良い。熟練者を単純作業に割り当てる必要もなくなり、作業割り当ての効率化を実現できます。このように、業務水準の統一ができるので、確実な品質管理が可能となり、計画通りの生産を行うことができます。
2. ロボット導入のデメリット
図2. 想定外の問題を防ぐには十分な事前検討が必要
メリットがある一方で、次のようなデメリットもあります。しかし、デメリットと思われることでも、適切に対応することで解消可能です。
(1) 導入コストがかかる
ロボットの導入には、当然ながら多大なコストがかかります。ロボット本体以外にもロボット周辺装置や安全対策費、技術者の育成などのコストも考慮しなければならないでしょう。この問題に対処するためには、ロボット本体以外も含めたすべての費用を事前に計算し、想定外の支出が起こらないようにすることが必要です。また、さまざまな補助金制度を活用する方法もあります。
(2) 操作・管理者の確保
ロボット導入後は、ロボットの調整やメンテナンス管理などを行う操作・管理者がどうしても必要です。誤動作や故障時の対応のためにも、正しい知識を得た者が必要です。自己流に対処すると、機械の破損や人身事故などを招く可能性があります。この問題に対処するためには、社内にロボット関連技術に関する有資格者を育成することが必要です。また、新たな製造品種が増えれば、ロボットの動作をティーチングしなければならないのです。この問題については、...
(3) チョコ停やトラブルの発生
ロボット導入には、当然ながらチョコ停やトラブルの発生という問題があります。チョコ停やトラブルが頻発すると、無人化になりません。この問題も、近年はさまざまなチョコ停発見ツールが開発されてきているため、チョコ停の見える化がしやすい環境をつくることができます。
(4) 関連する作業の検討不足
ロボット導入前に想定していなかった苦労としては、事前の検討不足が挙げられる(図2)。
この問題に対処するためには、関連する作業全体を含めた事前検討をしっかりと行うことが重要です。近年、シミュレーションソフトなどの発達により、いろいろな事前検討が可能になってきており、事前に周辺装置を含めた検討が行えます。
この記事は、『工場管理』2019年12月号に掲載の内容を筆者が改編したものです。