スマートファクトリー、日本と中国のスマートファクトリー事例紹介

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スマートファクトリー、日本と中国のスマートファクトリー事例紹介

【目次】

    ◆[エキスパート会員インタビュー記事] 製造業を変革する力(森内 眞 氏

     

    1. 日本と中国のスマートファクトリー事例紹介

    工場のあり方は、大きく変わりつつあります。従来の工場では人手による作業が中心でしたが、革新的なモノづくり現場では人と機械が一体となったスマートファクトリーが登場しています。現代の製造業は、技術革新の波に乗り、スマートファクトリーへと進化を遂げています。今回は、日本の安川ソリューションファクトリーと中国の三一重工北京工場を取り上げ事例紹介として、日中のスマートファクトリーをレポートします。

     

    2. 安川ソリューションファクトリーの革新

    スマートファクトリー、日本と中国のスマートファクトリー事例紹介

    引用画像:yaskawa.co.jp

     

    安川ソリューションファクトリーは「ものづくりとビジネスを変える次世代工場」というコンセプトのもと、2018年に稼働を開始しました。サーボモータとサーボアンプを製造しています。この工場は、自動化技術とアイキューブメカトロニクスコンセプト※1を融合させ、生産性の大幅な向上を実現しています。

     

    2-1.自動化の徹底

    安川ソリューションファクトリーでは、各工程の自動化に加え、工程間の物理的・データ的な連携を強化しています。AGV(自動搬送車)やロボットを活用して、人手を介在さない物流システムを構築しています。

    スマートファクトリー、日本と中国のスマートファクトリー事例紹介

    I3メカトロニクスコンセプトイメージ 引用画像:yaskawa.co.jp 

     

    2-2.データ活用と視える化

    生産管理のデータを一元化し、統合司令室でリアルタイムに監視。これにより、生産計画の進捗管理やトラブルへの迅速な対応が可能になっています。

     

    2-3.変種変量生産への対応

    多様な機種を一気通貫で生産する体制を整え、需要変動に強い生産システムを実現しています。多品種少量の生産にも柔軟に対応しています。

     

    2-4.エピソード

    安川ソリューションファクトリーは、世界中から多くの企業関係者が見学に訪れる人気の施設です。特に中国企業からの関心が高く、三一重工の関係者も視察に来ています。この高い関心は、安川ソリューションファクトリーが実現している先進的な自動化技術とデータ活用による生産性の向上が、他の企業にとっても有益な参考モデルとなっているためです。見学に興味がある方は、団体での申し込みをお勧めします。なお、個人の申し込みは受け付けていまません。

    スマートファクトリー、日本と中国のスマートファクトリー事例紹介

    スマートファクトリーの成果 引用画像:yaskawa.co.jp

     

    3. 三一重工北京工場の革新

    スマートファクトリー、日本と中国のスマートファクトリー事例紹介 

    三一北京工場の外観:引用画像:出典 三一グループWebサイト
    https://www.softbank.jp/biz/blog/business/articles/202110/lighthouse-sany/

     

    三一重工北京工場は、建設機械を製造している工場です。具体的には、杭打ち機や回転式掘削リグなどの重工業機械を生産しています。世界最大の杭打ち機の製造基地としても知られています。この工場では、5GとAIを駆使し、労働生産性を85%向上させたことで知られています。世界経済フォーラムから「ライトハウス工場※2」として認定されており、その先進性は世界的にも高く評価されています。

     

    3-1. ヒューマン・マシン・コラボレーション

    作業員とロボットが協力し合うことで、高度な作業を実現しています。AIを活用した技術伝承や、作業員の技能向上にも寄与しています。

     

    3-2. 生産サイクルの短縮

    多品種・少量生産の需要に応え、生産サイクルを大幅に短縮。これにより、市場の変化に迅速に対応することが可能になりました。

     

    3-3.エコシステムの構築 

    三一重工は、RootCloudなどのインダストリアル・インターネット・プラットフォーム※3を活用し、製造業のDX(デジタルトランスフォーメーション)を推進しています。

    スマートファクトリー、日本と中国のスマートファクトリー事例紹介

    三一北京工場の内部:引用画像:出典 三一グループWebサイト
    https://www.softbank.jp/biz/blog/business/articles/202110/lighthouse-sany/

     

    3-4. エピソード

    東日本大震災の際、三一重工は日本に大きな支援を提供しました。特に、福島第一原発の冷却作業に必要だった62mのブームを持つコンクリートポンプ車を無償で提供したことは、非常に重要な役割を果たしました。このポンプ車は、ドイツに出荷される予定でしたが、三一重工は日本への支援を決定し、赤十字社を通じて被災地に送られました。さらに、三一重工から専門の技術者3名が来日し、操作方法のレクチャーも行われました。

     

    このポンプ車は、現在も福島第一原子力発電所構内に保管されていて、緊急時に活用するための準備が整っています。定期的なメンテナンスが行われ、必要な場合にはすぐに使用できる状態に保たれているとのことです。このエピソードは、国際的な協力と支援の素晴らしい例として記憶されています。

    スマートファクトリー、日本と中国のスマートファクトリー事例紹介

    引用画像:出典 三一グループWebサイト
    https://www.softbank.jp/biz/blog/business/articles/202110/lighthouse-sany/

     

    4. スマートファクトリーの最前線

    私は両方の工場を視察しました。2019年に安川ソリューションファクトリーを、2013年には三一重工北京工場をそれぞれ視察しました。北京工場の訪問は、当時指導していた北京近郊の企業で社員研修を企画した際に、その企業の社員を引率して行ったものです。また、2010年から2011年にかけては、三一重工昆山工場で技術指導を行っています。

     

    安川ソリューションファクトリーと三一重工北京工場は、それぞれが異なるアプローチでスマートファクトリーの実現を目指しています。これらの工場から学ぶべき点は多く、世界の製造業にとって大きな示唆を与えています。今後も両工場の動向から目が離せません。

     

    この記事は、スマートファクトリーの最前線を紹介することで、製造業の未来像を描き出すことを目的としています。技術革新がもたらす可能性は無限大であり、私たちの生活にも大きな変化をもたらすことでしょう。今後もこの分野の進展に注目していきたいと思います。

     

    【脚注】
    ※1アイキューブ メカトロニクス」における「i(アイ)」は、
    ●「integrated(統合的、システム化)」
    ●「intelligent(知能的、インテリジェント化)」
    ●「innovative(革新的、技術革新による進化)」
    を示している。具体的には、

    ①徹底した自動化
    各工程を自動化するだけでなく、工程同士を物理的につなぎ、データ間もつなぐことで、効率的な生産を実現してる。
    ②視える化・データ活用 
    生産管理...

    スマートファクトリー、日本と中国のスマートファクトリー事例紹介

    【目次】

      ◆[エキスパート会員インタビュー記事] 製造業を変革する力(森内 眞 氏

       

      1. 日本と中国のスマートファクトリー事例紹介

      工場のあり方は、大きく変わりつつあります。従来の工場では人手による作業が中心でしたが、革新的なモノづくり現場では人と機械が一体となったスマートファクトリーが登場しています。現代の製造業は、技術革新の波に乗り、スマートファクトリーへと進化を遂げています。今回は、日本の安川ソリューションファクトリーと中国の三一重工北京工場を取り上げ事例紹介として、日中のスマートファクトリーをレポートします。

       

      2. 安川ソリューションファクトリーの革新

      スマートファクトリー、日本と中国のスマートファクトリー事例紹介

      引用画像:yaskawa.co.jp

       

      安川ソリューションファクトリーは「ものづくりとビジネスを変える次世代工場」というコンセプトのもと、2018年に稼働を開始しました。サーボモータとサーボアンプを製造しています。この工場は、自動化技術とアイキューブメカトロニクスコンセプト※1を融合させ、生産性の大幅な向上を実現しています。

       

      2-1.自動化の徹底

      安川ソリューションファクトリーでは、各工程の自動化に加え、工程間の物理的・データ的な連携を強化しています。AGV(自動搬送車)やロボットを活用して、人手を介在さない物流システムを構築しています。

      スマートファクトリー、日本と中国のスマートファクトリー事例紹介

      I3メカトロニクスコンセプトイメージ 引用画像:yaskawa.co.jp 

       

      2-2.データ活用と視える化

      生産管理のデータを一元化し、統合司令室でリアルタイムに監視。これにより、生産計画の進捗管理やトラブルへの迅速な対応が可能になっています。

       

      2-3.変種変量生産への対応

      多様な機種を一気通貫で生産する体制を整え、需要変動に強い生産システムを実現しています。多品種少量の生産にも柔軟に対応しています。

       

      2-4.エピソード

      安川ソリューションファクトリーは、世界中から多くの企業関係者が見学に訪れる人気の施設です。特に中国企業からの関心が高く、三一重工の関係者も視察に来ています。この高い関心は、安川ソリューションファクトリーが実現している先進的な自動化技術とデータ活用による生産性の向上が、他の企業にとっても有益な参考モデルとなっているためです。見学に興味がある方は、団体での申し込みをお勧めします。なお、個人の申し込みは受け付けていまません。

      スマートファクトリー、日本と中国のスマートファクトリー事例紹介

      スマートファクトリーの成果 引用画像:yaskawa.co.jp

       

      3. 三一重工北京工場の革新

      スマートファクトリー、日本と中国のスマートファクトリー事例紹介 

      三一北京工場の外観:引用画像:出典 三一グループWebサイト
      https://www.softbank.jp/biz/blog/business/articles/202110/lighthouse-sany/

       

      三一重工北京工場は、建設機械を製造している工場です。具体的には、杭打ち機や回転式掘削リグなどの重工業機械を生産しています。世界最大の杭打ち機の製造基地としても知られています。この工場では、5GとAIを駆使し、労働生産性を85%向上させたことで知られています。世界経済フォーラムから「ライトハウス工場※2」として認定されており、その先進性は世界的にも高く評価されています。

       

      3-1. ヒューマン・マシン・コラボレーション

      作業員とロボットが協力し合うことで、高度な作業を実現しています。AIを活用した技術伝承や、作業員の技能向上にも寄与しています。

       

      3-2. 生産サイクルの短縮

      多品種・少量生産の需要に応え、生産サイクルを大幅に短縮。これにより、市場の変化に迅速に対応することが可能になりました。

       

      3-3.エコシステムの構築 

      三一重工は、RootCloudなどのインダストリアル・インターネット・プラットフォーム※3を活用し、製造業のDX(デジタルトランスフォーメーション)を推進しています。

      スマートファクトリー、日本と中国のスマートファクトリー事例紹介

      三一北京工場の内部:引用画像:出典 三一グループWebサイト
      https://www.softbank.jp/biz/blog/business/articles/202110/lighthouse-sany/

       

      3-4. エピソード

      東日本大震災の際、三一重工は日本に大きな支援を提供しました。特に、福島第一原発の冷却作業に必要だった62mのブームを持つコンクリートポンプ車を無償で提供したことは、非常に重要な役割を果たしました。このポンプ車は、ドイツに出荷される予定でしたが、三一重工は日本への支援を決定し、赤十字社を通じて被災地に送られました。さらに、三一重工から専門の技術者3名が来日し、操作方法のレクチャーも行われました。

       

      このポンプ車は、現在も福島第一原子力発電所構内に保管されていて、緊急時に活用するための準備が整っています。定期的なメンテナンスが行われ、必要な場合にはすぐに使用できる状態に保たれているとのことです。このエピソードは、国際的な協力と支援の素晴らしい例として記憶されています。

      スマートファクトリー、日本と中国のスマートファクトリー事例紹介

      引用画像:出典 三一グループWebサイト
      https://www.softbank.jp/biz/blog/business/articles/202110/lighthouse-sany/

       

      4. スマートファクトリーの最前線

      私は両方の工場を視察しました。2019年に安川ソリューションファクトリーを、2013年には三一重工北京工場をそれぞれ視察しました。北京工場の訪問は、当時指導していた北京近郊の企業で社員研修を企画した際に、その企業の社員を引率して行ったものです。また、2010年から2011年にかけては、三一重工昆山工場で技術指導を行っています。

       

      安川ソリューションファクトリーと三一重工北京工場は、それぞれが異なるアプローチでスマートファクトリーの実現を目指しています。これらの工場から学ぶべき点は多く、世界の製造業にとって大きな示唆を与えています。今後も両工場の動向から目が離せません。

       

      この記事は、スマートファクトリーの最前線を紹介することで、製造業の未来像を描き出すことを目的としています。技術革新がもたらす可能性は無限大であり、私たちの生活にも大きな変化をもたらすことでしょう。今後もこの分野の進展に注目していきたいと思います。

       

      【脚注】
      ※1アイキューブ メカトロニクス」における「i(アイ)」は、
      ●「integrated(統合的、システム化)」
      ●「intelligent(知能的、インテリジェント化)」
      ●「innovative(革新的、技術革新による進化)」
      を示している。具体的には、

      ①徹底した自動化
      各工程を自動化するだけでなく、工程同士を物理的につなぎ、データ間もつなぐことで、効率的な生産を実現してる。
      ②視える化・データ活用 
      生産管理のデータを一元的に監視し、工場の操業状況を把握。データ通信を共通化して、高精度な生産計画を実現している。
      ③デジタルデータソリューション 
      AI分析やビッグデータ解析を活用して、故障予知や設備の予防保全を行っている。
      この取り組みは、製品を売るだけでなく、デジタルデータ活用によりものづくりの課題を総合的に解決する新たなソリューションを示している。

      ※2「ライトハウス工場」とは、世界経済フォーラムが製造業のロールモデルとして認定した工場のこと。これらの工場は、デジタル技術の導入、生産効率の向上、持続可能性、社会や環境への影響などの面で優れていると評価されている。2024年1月時点で全153カ所になっている。、その中には日本の工場も含まれている。

      ※3インダストリアル・インターネット・プラットフォームは、製造業などの産業分野でDXを推進するためのプラットフォーム。これには、機械や設備をインターネットに接続し、データを収集・分析することで、生産性の向上や運用の効率化を図る技術が含まれる。例えば、RootCloudは、産業用プロトコル分析や制御システムの管理、AIやブロックチェーンを活用したソリューションを提供するIIoTプラットフォームの一つとして知られる。

       

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      この記事の著者

      森内 眞

      ものづくりにおいて解決できない課題はありません。真摯に課題に取り組むことで必ず解決の糸口は見えてきます。 技術士としての専門知識、技術、経験、独自のネットワークを用いてお客様の課題解決に貢献いたします。

      ものづくりにおいて解決できない課題はありません。真摯に課題に取り組むことで必ず解決の糸口は見えてきます。 技術士としての専門知識、技術、経験、独自のネット...