前回のその36に続いて解説します。
【第3章】(自社)中国工場、品質管理の進め方
【3.6 中国工場での人材マネジメント】
◆ それぞれの役割と評価
工場従業員を区分してそれぞれについて、役割と評価を見ていきます。
(1)作業者
実は、作業者も単純作業者とスキルを持った作業者の二つに区分して見ていくことが必要です。
① 単純作業者
単純作業者の役割は何でしょうか。それは、ルールを守り不良品を作らないこと、不良品は取り除くことです。これをしっかりやってもらうのです。
率直に言って単純作業者は、ある程度の入れ替りがあるという前提で考えるべきだと思います。ただし、そのような状況でも作業はきちんとやってもらうことを考えなくてはいけません。そのためにはやはりモチベーションを与えることが必要で、表彰制度を設けるなどして優秀な作業者、頑張った作業者を表彰して表彰金を与えることが方法としてあります。
② スキルを持った作業者
スキルを持った作業者(生産に必要な難易度の高いスキルを習得した作業者)には、何としても定着してもらいたいので、そのための制度を考えます。スキルを資格認定して、それを給与に反映します。従って、これら作業者には相応の給与を払うことになります。現在の中国で、労働者を安く使うことだけを考えるのは無理です。例えば、スキルを修得した作業者にある程度の給与を払うことで、この作業者が転職してもそのスキルが使えない場合、それまでと同じ給与は取れないので、簡単には辞めなくなります。
また、スキルを認定されることでプライドもくすぐられ、それが仕事へのモチベーションにもなります。
(2)管理者
現場を管理する班長や組長は、自分が作業者を束ね生産品の品質や納期の責任を負っているということにやりがいを感じています。もちろん作業者よりも高い給与もモチベーションになっています。
科長になると、そのやりがいやモチベーションは、班長や組長のそれに加えて自分の成長(スキル、出世など)も大事な要素になります。一方で、成果を評価することも大事なことです。科長クラスであれば、成果を出すことが求められますので、成果が出ていない場合は、マイナスの評価とします。
(3)幹部(部長クラス)
このクラスになると、給与の他に与えられている権限の有無が関係してきます。中国人は権限や裁量権を持ちたがります。日系企業の場合、名ばかりの役職で権限を与えていないケースが多くあります。また、権限を与えない代わりに責任もあいまいにしています。
中国人...
部長クラスの人たちは、給与はそれなりにもらっています。ですから本当に実力のある人でないと他に転職して同じ額の給与を取るのは難しいと言えるので、転職率はそれほど高くありません。
次回は、定着している人を有効活用する。から解説を続けます。
【出典】根本隆吉 著 「中国工場の品質改善」 日刊工業新聞社発行、筆者のご承諾により抜粋を連載