今回は、ロボットの種類、ロボット向けの作業、作業工程に適したロボットの選び方について解説します。
1. ロボットの形式と特徴を知る
【産業用ロボットの主な種類】
ロボットはJIS B 0134で次のように分類されています。基本形式は、次の4種類に分類されます。
- ① 直角座標ロボット(直交座標型ロボット)
- 腕に3つの直進ジョイントを持ち、それらの軸が直角座標系に一致するロボット(直動軸3個)。
- ② 円筒座標ロボット
- 腕に少なくとも1つの回転ジョイントと1つの直進ジョイントを持ち、それらの軸が円筒座標系を構成するロボット(直動軸2個+回転軸1個)。
- ③ 極座標ロボット
- 腕に2つの回転ジョイントと1つの直進ジョイントを持ち、それらの軸が極座標系を構成するロボット(直動軸1個+回転軸2個)。
- ④ 多関節ロボット(垂直多関節型ロボット)
- 腕に3つ以上の回転ジョイントを持つロボット(回転軸3個)。また、特殊形式として次の2種類がある。
- ⑤ スカラロボット(水平多関節型ロボット)
- 2つの平行な回転ジョイントを持ち、選択された平面内にコンプライアンスを構成するロボット。
- ⑥ パラレルロボット(パラレルリンクロボット)
- 腕に閉ループ構造を構成するリンクを持つロボット。
2. ロボットの特徴、メリット・デメリット
産業用ロボットには種類がいろいろあり、それぞれの特徴が異なるため、種類によりロボット向けの作業も異なります。
【設計の自由度が高い「直交座標型ロボット」】
⑴ 特徴
直交ロボットは、直交するスライド軸で構成され、直線的な動作しかできないのですが、シンプルな構造なので設計のしやすさが特徴です。
⑵ メリット・デメリット
直線でしか動かないため、誤動作が起こりにくく、ブレが少ない高精度な動作が可能です。さらに低出力で広範囲の動作ができます。そして、直交ロボットは低価格なため、大がかりなシステムを構築してもそれほど高価格にはなりません。また、補助目的でも本格的なシステムでも、設計次第で多くの役割を担えます。デメリットは、複雑な動作ができないことです。これは、多関節ロボットと組み合わせることで解消できます。
【汎用性が高い「垂直多関節型ロボット」
⑴ 特徴
垂直多関節ロボットは、現在の製造現場で最も主流な型です。ロボットの軸は人の関節の働きに近く、軸が多いほど自由に動作できます。他のロボットよりも軸数が多く、自由度の高い動作ができるわけです。
⑵ メリット・デメリット
垂直多関節ロボットは多軸を生かして3次元的に動作でき、幅広い作業に対応できます。また、柔軟に姿勢を変えられるため複数のロボットでも相互干渉しません。小型化軽量化も進んでおり、小さなものから大型のものまで、目的に応じたシステムを構築できます。汎用性が高い一方、緻密な制御が必要です。作業に最適な動作をさせるために正確なティーチングを行います。ただ、垂直多関節ロボットは高速動作が苦手です。剛性が低いため、高速で動作させるとオーバーシュートや振動が生じます。
【高速&低価格の「水平多関節型ロボット」】
⑴ 特徴
水平方向の動きに特化したロボットです。すべての関節が垂直に組まれているため、上下方向の剛性と水平方向の柔軟性を併せ持っていることから、この特徴を生かした部品の押込み作業などが得意です。また、簡単な構造のため高速動作が可能です。
⑵ メリット・デメリット
水平多関節のメリットは、高精度なセンサを生かして組立時の位置ズレを修正できることです。細かな位置ズレも、センサを利用して柔軟な対応が可能なことから、ピック&プレースで積極的に活用されています。構造が簡単なため低価格ですが、動作精度ではパラレルリンクロボットに劣ります。また、構造的な問題から垂直方向の動きが苦手で、汎用性の点では垂直多関節ロボットには及びません。
...【高精度で高速な「パラレルリンクロボット」】
⑴ 特徴
多関節ロボットは、関節を1つずつ動かしていく直列(シリアル)機構です。しかし、パラレルリンクロボットは異なる機構「パラレルメカニズム」を採用しています。複数の関節で最終出力先を制御しており、複数のモータ出力を1点に集中させているので、精度と出力が非常に高いロボットです。
⑵ メリット・デメリット
可動範囲は狭いものの、精度と速度の性能はトップクラスです。この性能を生かして、生産ラインの材料選別と整列に活用されています。パラレルリンクロボットは構造上、重量物を扱うのは難しく、軽量物のピック&プレース以外の作業には活用しにくいという欠点があります。汎用性も低く高価格ですが、適切な作業を行わせれば大きな成果を上げてくれます。
この記事は、『工場管理』2019年12月号に掲載の内容を筆者が改編したものです。