◆ 受験の模擬テスト結果レポートは、優れたデータ分析レポート
受験生は受験に向けて、模擬テストを受けると思います。ある模擬テスト結果のレポートを見て、私は非常に驚きました。レポートが、データ分析レポートに必要な要素を備えていたからです。今回は「受験の模擬テスト結果レポートは、優れたデータ分析レポートだった。しかし、問題もある」というお話しをします。
1. データ分析: 5つの要素
模擬テスト結果レポートには、以下の5つの要素が含まれていました。
- 今回の結果(現在)
- 合格の可能性(未来)
- 過去の模擬テスト結果からの推移(過去)
- 現状の「課題」
- 今後に向けた「対策」
この5つの要素は、データ分析を行いその結果を語る上で非常に重要な要素です。過去・現在・未来の視点が含まれ、さらに課題と対策までレポート上に記載されていました。
2. データ分析: 過去・現在・未来を評価
データ分析で最初にすべきは「評価」です。評価と聞くと「今までどうだったのか」という過去から現在までを想像します。それはそれで重要ですが、それだけでは不十分です。評価とは「過去から現在まで」の評価だけではなく「現在から未来」に向けどのようになっていくかという評価も含まれます。紛らわしい時はこの評価を「予測」もしくは「未来の評価」と言い換えてもいいでしょう。
つまり過去から現在、現在から未来に向けて評価をするのです。私が見た模擬テスト結果レポートには、この要素が十分に含まれていました。データ分析の結果を語る時、非常に参考になります。
3.データ分析: 課題と対策でアクションへ
しかし、評価や予測をしただけでは何も起こりません。評価しただけでは、あまり良くなかったとか、これからヤバそうだ、とか語るだけで終わってしまいます。これだけでは、過去を嘆き未来を憂えているだけにすぎません。これ以上の何かが必要なのです。そうです、アクションです。ヤバそうな未来を変えるために、何か行動を起こす必要があります。そのために必要になるのが、何が「課題」で、そのために何をすべきかという「対策」です。
このセットがあることで、恐らく「アクション」が誘発されやすくなることでしょう。しかし「課題」と「対策」が明確になったから、アクションが起こるわけではありません。模擬テストの結果レポートに「課題」と「対策」が記載されていても、多くの場合はテスト結果と合格の可能性を見て、一喜一憂するだけで終わる人が多いことでしょう。アクションを起こすかどうかは人次第です。つまり「課題」と「対策」が明示されているだけでは、アクションが起こらないことがあるのです。
4.データ分析: アクションが起こらないという現実
では、なぜ「課題」と「対策」が明確なのに「アクション」が起こらないことがあるのでしょうか。「データ分析そのもの」の多くは机上で行われます。もう少し具体的にいうと、コンピュータ上で実施されます。正確には、コンピュータと人間の頭脳のコラボレーションで行われます。何を言いたいかというと「データ分析を活用する現場」と「データ分析そのもの」が物理的に乖離(かいり)しているということです。
状況によっては物理的な乖離が小さく、リアルタイムかつシームレスなデータ分析活用もあるかもしれません。今後、AI(人工知能)的な物やITの発達によっては、このような状況が増えるかもしれませんが、現在では物理的に乖離しているケースのほうが多いことでしょう。つまり、この物理的な乖離がアクションを妨げる壁になっているのです。
さらに「データ分析を活用する現場」と「データ分析そのもの」を実施する人が別の人だと、その溝は深まるばかりです。先ほど例に挙げた、模擬テストの結果レポートも同じ状況に陥っているのだと思います。模擬テストの結果レポートを作成する側と、それを見て参考にする受験生に壁や溝があります。物理的かつ別人ですから、その壁や溝は非常に大きなものです。
5. データ分析: 机上と現場の溝
問題は、机上の「データ分析そのもの」と「データ分析を活用する現場」の溝をどう埋めるかです。どんなに「課題」と「対策」を明確にしたところで、この溝が大きいとアクションは起こりません。模擬テストの結果レポートに記載されている「課題」と「対策」が、どんなに的を得ていてもアクションは起こりません。最も簡単に溝を埋める方法は「データ分析を活用する現場」と「データ分析そのもの」を実施する人が「同じ人」になることです。
つまり、データ分析を活用する現場の人が自ら、データ分析そのものを実施し「課題」と「対策」を挙げアクション・プランを作ることです。しかし、世の中には「計画倒れ」という言葉がある通り、自らこれら2点を挙げてアクション・プランを作ったところで、強い意志か何かしら強制力が働かないと、アクションは実現しないことでしょう。そもそもビジネスの場合「データ分析を活用する現場」と「データ分析そのもの」を実施する人が「同じ人」になることが困難な場合も少なくありません。
役割分担として「分析活用の現場」と「分析」を実施する人が分かれてしまっているケースです。その場合は「分析」を実施する人が現場を理解するために、現場に寄り添っていかなければなりません。模擬テストの結果レポートから考えると、レポートに記載されている「課題」と「対策」が、腑に落ちないというか自分ごとに捉えれにくい表現がなされていると、私は感じました。つまり、言葉の使い方や表現が受験生寄りになっているとは思えなかった、ということです。
ではどうすればいいのか、という問題がありますが、少なくとも抽象的な定型文の羅列は止めた方がいいかと思います。実際、言葉の表現の問題は大きく、同じことでも現場に寄り添った表現のだけで、アクションに結びつくかどうかの可能性が異なります。少なくとも、小難しい統計学や多変量解析、機械学習、数学的な用...
6. データ分析結果のレポート
今回は「受験の模擬テスト結果レポートは、優れたデータ分析レポートだった。しかし、問題もある」というお話しをしました。受験の模擬テスト結果レポートには、データ分析結果を伝える上で、重要な要素が満載でした。
過去・現在・未来の評価・予測が含まれ、さらに課題と対策までレポート上に記載され、アクションを誘発する要素としては十分なほどです。データ分析結果をレポートする時や、誰かに伝えるときに非常に参考になります。しかし、問題があります。模擬テストの結果レポートに記載されている「課題」と「対策」を参考に、具体的なアクションが起こらないケースがあるのです。なぜでしょうか。
それは「データ分析を活用する現場」と「データ分析そのもの」の物理的な乖離が、アクションを妨げる壁になっているからです。「分析を活用する現場」と「分析そのもの」を実施する人が別の人だと、溝は深まるばかりです。分析結果を机上の空論にしないためには「分析を活用する現場」と「分析そのもの」を実施する人を「同一」にするか、データ分析をする人が現場に寄り添っていく必要があります。例えば、言葉の表現一つとっても非常に重要で、現場が理解し納得しやすい表現に変える必要も出てきます。間違っても、小難しい統計学や多変量解析、機械学習、数学的な用語を多用してはいけません。