テキストマイニング技術のビジネスへの応用とその効果(その2)

更新日

投稿日

 

 前回のその1に続いて解説します。

2. トランザクティブ・メモリー

 トランザクティブ・メモリーは、1980年代半ばに米ハーバード大学の社会心理学者、ダニエル・ウェグナーが唱えた組織学習に関する概念です[1]。多くのメンバーがいる組織ですべてのメンバーがすべての情報を共有し、すべての専門性を持つことは不可能です。そうではなく、組織内で誰が何を知っているのかを把握することで、組織としての知識・知見を上げることができるのです。

[1]Wcoengtnemerp, orDar. y M.a n(a1l9y8si6s) . oTfr anstahcet iveg romuepm ormy:i ndA. 4ht9t3p/:w//emgincehra_etlreadnwsaacrtdikvuet_cmh.ecmoomr/yu.ppldofa ds/3/3/1/6/3316

 社員間での非常に活発なコミュニケーションを通して、どの社員がどの分野に長けているのかが特定できるようになる(Encoding Stage)。ある分野の情報を入手したときに、情報を入手した社員がそれを覚えるのではなく、その分野に長けている社員にその情報を渡してプロセスさせるのです。そうすることで組織としてはその情報が深く刻み込まれる(Storage Stage)。ある分野での知識が必要になったときには、その分野に長けている社員から情報・知識を得る(Retrieval Stage)。ここで得た知識が正しい有用であれば、この社員が特定の分野での知識に長けている という認識が深まります。そうでなければ、Encoding Stageからまた始めることになるわけです。

 テキサス大学オースティン校のカイル・ルイスが2004年に発表した研究[2]ではFace to Face のコミュニケーションをする人の方が、トランザクティブ・メモリーを高められる傾向を示しています。さらに大きな組織になってくると階層を一つ増やして、トランザクティブ・メモリーだけを扱う専門職が必要になるかも知れません。だが、こういった専門職の代わりに企業が持っている情報を利活用出来たらどうでしょうか。

[2] hutbtlpisc:a/t/iwown/w22.r0e5s3ea4r3c9h3g_aKten.noewtl/epdrogfei_lea/nKdy_lPee_rLfoerwmisa4n/cpe _Wino_rkKenr_oTwelaemdgse_-A_Longitudinal_Study_of_Transacti 4vea_.pMdfe mory_Systems/links/5583185a08aefa35fe30b5

3. 情報の利活用とその効果

(1) 企業情報

 企業内には社内でリソースをかけて作成してきたさまざまな情報がMicrosoft Office,PDF, テキストファイル,メールなど主に非構造化データの形で点在しています。残念ながら、これらのデータは個人のフォルダーや組織のフォルダーの奥底に眠っていて、情報として十分に活用されていないのが実情です。

 これらの情報をうまく活用する手段として、組織としての知識であるトランザクティブ・メモリーを高める手法が注目を浴びました。しかし、カイル・ルイスの研究にあるようにトランザクティブ・メモリーを高めるためには社内コミュニケーショ...

 

 前回のその1に続いて解説します。

2. トランザクティブ・メモリー

 トランザクティブ・メモリーは、1980年代半ばに米ハーバード大学の社会心理学者、ダニエル・ウェグナーが唱えた組織学習に関する概念です[1]。多くのメンバーがいる組織ですべてのメンバーがすべての情報を共有し、すべての専門性を持つことは不可能です。そうではなく、組織内で誰が何を知っているのかを把握することで、組織としての知識・知見を上げることができるのです。

[1]Wcoengtnemerp, orDar. y M.a n(a1l9y8si6s) . oTfr anstahcet iveg romuepm ormy:i ndA. 4ht9t3p/:w//emgincehra_etlreadnwsaacrtdikvuet_cmh.ecmoomr/yu.ppldofa ds/3/3/1/6/3316

 社員間での非常に活発なコミュニケーションを通して、どの社員がどの分野に長けているのかが特定できるようになる(Encoding Stage)。ある分野の情報を入手したときに、情報を入手した社員がそれを覚えるのではなく、その分野に長けている社員にその情報を渡してプロセスさせるのです。そうすることで組織としてはその情報が深く刻み込まれる(Storage Stage)。ある分野での知識が必要になったときには、その分野に長けている社員から情報・知識を得る(Retrieval Stage)。ここで得た知識が正しい有用であれば、この社員が特定の分野での知識に長けている という認識が深まります。そうでなければ、Encoding Stageからまた始めることになるわけです。

 テキサス大学オースティン校のカイル・ルイスが2004年に発表した研究[2]ではFace to Face のコミュニケーションをする人の方が、トランザクティブ・メモリーを高められる傾向を示しています。さらに大きな組織になってくると階層を一つ増やして、トランザクティブ・メモリーだけを扱う専門職が必要になるかも知れません。だが、こういった専門職の代わりに企業が持っている情報を利活用出来たらどうでしょうか。

[2] hutbtlpisc:a/t/iwown/w22.r0e5s3ea4r3c9h3g_aKten.noewtl/epdrogfei_lea/nKdy_lPee_rLfoerwmisa4n/cpe _Wino_rkKenr_oTwelaemdgse_-A_Longitudinal_Study_of_Transacti 4vea_.pMdfe mory_Systems/links/5583185a08aefa35fe30b5

3. 情報の利活用とその効果

(1) 企業情報

 企業内には社内でリソースをかけて作成してきたさまざまな情報がMicrosoft Office,PDF, テキストファイル,メールなど主に非構造化データの形で点在しています。残念ながら、これらのデータは個人のフォルダーや組織のフォルダーの奥底に眠っていて、情報として十分に活用されていないのが実情です。

 これらの情報をうまく活用する手段として、組織としての知識であるトランザクティブ・メモリーを高める手法が注目を浴びました。しかし、カイル・ルイスの研究にあるようにトランザクティブ・メモリーを高めるためには社内コミュニケーションの環境自体を変える必要があり、一朝一夕に出来るものではありません。

 トランザクティブ・メモリーを高める代わりに、社内の非構造化データからテキストマイニングの技術を使って必要な情報を得ることを考察します。

 具体的には社内に点在するデータを自動的に回遊して集めてきて、日本語解析エンジンを使用して情報を整理整頓します。必要な情報を検索するだけではなく、解析を加えて見えなかった情報を見えるようにすることが出来ます。たとえば検索で「A 社」と入力すれば、 A社を文字列に含む情報が一覧で出てきますが、解析を加えることでA社に関連する情報を下図のようなネットワーク図で表示することにより視覚的にA社の市場での立ち位置などの知見を得ることが出来ます。

情報マネジメント

 次回は、(2)社外情報から解説を続けます。

 

   続きを読むには・・・


この記事の著者

木村 礼壮

企業戦略・方針にあった製品企画をしたい、 顧客要求に応える製品を明確にしたい方々にピッタリの解決法をご提供します。特に仕様変更に悩むIT企業には必須のスキルです。

企業戦略・方針にあった製品企画をしたい、 顧客要求に応える製品を明確にしたい方々にピッタリの解決法をご提供します。特に仕様変更に悩むIT企業には必須のスキ...


「情報マネジメント一般」の他のキーワード解説記事

もっと見る
KPIに求められるSMARTとは データ分析講座(その29)

◆ 指標を制する者がデータ分析を制する  「蓄積されたデータを活用しろ!」といわれたら、多くの人が最初にやることといえば、恐らく手元にあるデータを何...

◆ 指標を制する者がデータ分析を制する  「蓄積されたデータを活用しろ!」といわれたら、多くの人が最初にやることといえば、恐らく手元にあるデータを何...


自動車の制御系セキュリティ 制御システム(その11)

    【制御システム 連載目次】 1. セキュリティ脅威と歴史 2. サイバー攻撃事例、情報システムとの違い 3....

    【制御システム 連載目次】 1. セキュリティ脅威と歴史 2. サイバー攻撃事例、情報システムとの違い 3....


テキストマイニング技術のビジネスへの応用とその効果(その3)

   前回のその2に続いて解説します。 (2) 社外情報  インターネット上に存在する数多(あまた)なブログや口コミサイトなどのCGM(C...

   前回のその2に続いて解説します。 (2) 社外情報  インターネット上に存在する数多(あまた)なブログや口コミサイトなどのCGM(C...


「情報マネジメント一般」の活用事例

もっと見る
ソーシャルメディアデータの解析事例:異分野研究から得られる共通した目的とは

 2020年、コロナウィルス感染の問題が大きくなり始めた頃、少人数の開催ということで、ソーシャルメディアデータ解析を専門にされている先生の講演会を聞く...

 2020年、コロナウィルス感染の問題が大きくなり始めた頃、少人数の開催ということで、ソーシャルメディアデータ解析を専門にされている先生の講演会を聞く...


既存コア技術強化のためのオープン・イノベーション:富士フイルムの例

 2015年7月20日号の日経ビジネスに、富士フイルムの特集が掲載されました。富士フイルムは、既存コア技術強化のためにオープン・イノベーションを果敢に...

 2015年7月20日号の日経ビジネスに、富士フイルムの特集が掲載されました。富士フイルムは、既存コア技術強化のためにオープン・イノベーションを果敢に...


中小製造業とIoTの波

 「IoT(アイオーティー)」の波が、中小製造業にどのような影響をおよぼすのか、具体的にどのような変化がこの業界に訪れるのかについて、解説します。   ...

 「IoT(アイオーティー)」の波が、中小製造業にどのような影響をおよぼすのか、具体的にどのような変化がこの業界に訪れるのかについて、解説します。   ...