経営における利益の位置づけ 中小企業経営の基礎講座(その6)

 

【中小企業経営基礎講座 連載目次】

 

1.利益が必要な理由

 前回のその5では、企業経営の様々なリスクと予知能力を解説しました。今回のその6では、経営における利益の位置づけを解説します。経営環境に適応するためには、経営資源を強化をしなければならず、投資は全て先行になりますので、資金が必要です。その投資には返済のいらない資金が最も安全・安心であり、自己資本(資本金+税引後利益を蓄積したもの)を充当するのが最適です。利益がないと借金体質となり、先行投資がつらくなって免疫力が落ち、生殖能力も落ちて、やがて「ほろび=倒産」にいたります。だから利益が必要なのです。
 企業が環境に適応できなくなった時、未来の社会には必要ないと判断され淘汰されます。しかし経営者の強い信念と情熱をもってすれば、ネットワークやコラボで生き抜くことが可能です。

 

2.利益産み出し作戦

 利益には、以下の4つの表し方があります。

1)売上総利益(粗利・総利益)
   =売上高−売上原価(仕入原価・製造原価)

2)営業利益・・営業活動の収益力を表す
   =売上総利益−(販売費+管理費=販管費)

3)経常利益・・企業活動の収益力を表す
   =営業利益+(雑収入・配当金等−借入金利・雑損失等)

4)税引前当期利益・・・課税対象利益
   =経常利益+(特別利益―特別損失)

 ここでは、キャッシュフローに最も直結していて、現場において全員で産み出さなくてはいけない、営業利益=売上高−総原価(売上原価+販管費)を解説しましょう。

 *営業利益:設備投資・商材開発・社員満足度(ES)向上・財務体質向上・株主還元に必要な金額を目標として設定する。⇒大きくしたい

 *売上高:単価×量で構成されるが、価格は生活者が選択して決定するので供給側では、コントロール出来ない。サービスの質を含めて、顧客満足度(CS)が決め手になる。⇒大きくしたい

 *総原価:直接的原価である売上原価は、許された原価の範囲で調達出来るしくみを構築する。⇒小さくしたい

 販売費・管理費は人件費比率が高いので、人時生産性の向上対策を積極的に実行する。⇒小さくしたい

 売上高だけを追って原価計算を無視したり、ムダ・ムラ・ムリを垂れ流していては、利益を産出する事は持続できません。つまり赤字体質なのですから、早急に対策を要します。

 

3.利益計画の方程式

 経営計画の基本構造は、販売計画、仕入計画、生産計画、労務計画、品質計画、商品開発計画、設備計画、教育計画、IT武装計画、資金計画等の個別の計画として策定され推進されます。

 企業の総合力=全員参画隊形がなければ、利益体質=黒字体質に進化はできません...

。中小企業の場合、3本柱がなく、ベースロードもできてないため、売上の構成は脆弱で崩れ安く、利益を出すには「ムダ、ムラ、ムリ」を更に改善したうえで、企業体質の強化に邁進すれば必ず黒字体質が間違いなく実現します。節税や投資に走るのは邪道です。そのような企業になるための設計図・ドライブプランが、経営計画と言えます。


 この利益を産み出すプロセスにおいて、拝金主義に堕ちて私物化する事は厳として避けましょう。利益は「世のため・人のため」になる企業にわき出るもので、その結果として持続可能な企業体質に進化できるのです。

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