前回のその73に続いて解説します。
【第4章】中国新規取引先選定のポイント
【中国異文化コミュニケーション】
◆ 中国人と信頼関係を築くコミュニケーションの取り方
(5)通訳の使い方
中国語を自由に操れる人は別として、話せない人にとって通訳をいかにうまく使うかというのは、中国で仕事を進める際に必要なノウハウの一つといえます。ここでは通訳を使う時に考えておくべきことを取り上げます。
① 通訳を100%信用するのは危険
「通訳を使えばこちらの言いたいことがすべて伝わっていると考えるのは危険」という認識を持つことが必要です。通訳のレベルもピンキリで、優秀な通訳もいればそうでない人もいるので、正確に伝わるか伝わらないかは通訳の技量に左右されます。常にこちらの意図が相手である中国人に正しく伝わっているかどうか注意を払う必要があります。また重要なポイントとして、しつこいくらい何度も繰り返し話すことも大事です。
② チェックを入れる
通訳が100%信用できないと考えると、通訳が正しく翻訳されているかチェックできるようになりたいものです。そのための方法を二つ紹介します。
・通訳に緊張感を持たせる
会議や打合せなどで担当通訳の他に別の通訳を同席させてみます。担当通訳の翻訳をチェックすることで緊張感を持たせるようにします。
・自分でチェックできるようになる
これは中国語をペラペラになれということではありません。勉強して少し中国語が分かってくると何となく翻訳が違うなとか感じることが出来るようになります。気になった時は通訳に今の訳は違っているんじゃない?と言って確認します。
③ 通訳会話での注意点
・二重否定を使わない
二重否定は、ネイティブでない人にとって非常に分かりにくく誤訳の原因となりますので、単純な肯定文で話すようにしてください。
・議論の相手を間違えない
議論の相手は通訳の先にいる中国人です。しかし日本人は議論が白熱してくるとついつい通訳と議論する傾向があります。本当の議論の相手の中国人が置き去りにされた状態になってしまうので注意してください。
・通訳に専念させる
技量の高い通訳になると、翻訳の中に通訳自身の考えや意見を入れてくることがあります。誰が言っていることなのかをしっかり見極めないと判断を誤ることにつながります。通訳の意見が聞きたいわけではないので、通訳の役割に専念させることが必要です。
・自分が偉いと勘違いする通訳
通訳は日本語が出来るので日本人トップや幹部の持っている情報を知ることができる場合があります。すると他の中国人スタッフが知らない情報を知っているので自分が偉くなったと勘違いしてしまうケースが散見されます。単なる通訳のはずなのに他の中国人スタッフに指示したり、偉そうな態度を取ったりすることもあります。これを放置すると組織の命令系統がおかしくなるので要注意です。
・求める答えが来るまで聞き返す
多くの通訳は頑張って通訳をやろうとしています。それ故に日本人が聞いたことに対して相手の中国人が...
次回は、第5章 中国企業改善指導のポイントから解説を続けます。
【出典】根本隆吉 著 「中国工場の品質改善」 日刊工業新聞社発行、筆者のご承諾により抜粋を連載