1. 企業レベルで環境問題考える
環境問題はニュースや新聞などのメディアで取り上げられることが多い問題です。廃棄物・資源制約、海洋プラスチックごみ問題、地球温暖化などの課題もあります。2020年7月1日より、全国でプラスチック製買物袋の有料化を行うことになりました。これは、普段何気なくもらっているレジ袋を有料化することで、それが本当に必要かを考えて、我々のライフスタイルを見直すきっかけとすることが目的と思います。
「レジ袋の有料化」は我々市民レベルでの環境問題の取り組みの一つですが、企業レベルの取り組みの一つとして、環境にやさしいといわれている物品を積極的に使う「グリーン調達」が以前より行われています。そこで「グリーン調達」についてレビューすることとします。
2.グリーン調達とは
企業・国などが原材料、物品、資材、サービスなどをサプライヤーから調達する際に、優先的に環境負荷の小さいものを選ぶ取り組みのことです。地球環境に配慮した調達を積極的に取り組んでいくことで、環境負荷の小さい製品開発を実現し、それが積み重なって環境問題の改善につながると考えます。
3.グリーン調達の必要性
3.1納入先企業
納入先企業が自らの製品を環境配慮型に転換し、市場において販売を拡大・増加していくなど事業機会を獲得するため、または化学物質などの法規制への厳格な遵守によりリスク回避を行う手段として、グリーン調達が必要となります。
【コラム1】
化学物質の法規制では、以前海外でゲーム機の電源コードからカドミウムが検出され摘発された事件がありました。海外のA社はサプライヤーから「納入仕様書」「品質証明書」などを通じてカドミウムが入っていないことを確認していましたが、日本のB社はそれらを怠っていました。製品回収費用は、A社はすべてサプライヤー費用としましたが、B社は全額費用負担を負うことになりました。B社はその後、調達先調査専門の部署を拡充し、また有害物質の入っていないことを証明する「品質証明書」を確実に提出する仕組みとしたとのことです。
3.2 サプライヤー
納入先企業の事業戦略を理解し、環境に関する要求等に的確に対応することは、サプライヤーの納入先企業からの信頼性を獲得することにつながり、サプライヤーにとっても事業機会とリスク回避をすることになります。
最近は、納入先企業がサプライヤー選定に「グリーン調達基準書」などを用いてサプライヤーを格付けしている企業も見られます。格付け上位の企業はサプライヤーとして、納入先企業からより高い信頼性が得られたことになります。尚、多くの場合「グリーン調達基準書」等には、ISO14001(環境マネジメントシステム)、エコアクション21(ISO14001の環境省版、認証取得コスト・維持費用が大幅に安価)等の認証取得を推奨しています。
3.3 グリーン調達のメリット
「環境問題に対する企業責任」という理由だけでは、多額の投資をしてグリーン調達に取り組む企業は多くはないと考えます。しかし、地球環境は刻一刻と変化し(例:2019年10月に発生した超大型の台風19号などの異常気象など)、企業としての責任を果たさなくてはいけません。企業責任を果たすとともに、グリーン調達のビジネス上のメリットを考えてみます。
3.3.1 社会からの信頼性と競争優位性を獲得
企業が様々な取り組みによって地球環境に配慮することは、社会的信頼を獲得するのに大きく寄与します。業界でも先進的な環境配慮企業になれば、高い競合優位性を獲得できると考えます。グリーン調達に取り組むことでコスト以上のビジネス価値を生み出せる可能性が大いにあります。
3.3.2 ブランド価値向上
「問題に向き合っている」ことが、ブランド価値を向上する効果もあります。グリーン調達に取り組むことでブランド価値が向上し、SNSなどにおいて企業情報や商品情報の拡散なども期待できると考えます。単に企業責任を果たすだけに留まらないというメリットがあります。
4.行政の取り組み
グリーン購入法
グリーン購入及び環境配慮契約の普及を図るため「国等による環境物品等の調達の推進等に関する法律(以下「グリーン購入法」)が、2000(平成12)年に制定されました。この法律は、国の機関はグリーン購入に取り組むことが義務とされ、地方自治体には努力義務、民間企業や国民にも一般的義務があるとされています。
公共工事においても、事業ごとの特性、必要とされる強度や...