1.クリーンルームのダンパーの役目
クリーンルームの壁には、ダンパーが設置されているところが多いと思います。クリーンルームは、ゴミ、埃が大敵ですので、それらが寄って来ないように室圧を高くしてあり、一定の室圧を維持しながら余剰空気をダンパーから室外に放出しています。
ダンパーには錘がついていて、圧力低下時は開口部を小さくしたり、あるいは閉じたりと言う開閉調整をしています。例えば、停電時は空調設備が停止し、室圧を高く保つことができないので、この錘によってダンパーが閉じ、外気の入り込みを押さえています。ところが、こういうケースに遭遇することは少ないので、日頃から不具合の確認やメンテナンスがされていないことが多く、動作しないものも時々見かけます。ダンパーから余剰空気が室外に流れ出る時に、空気だけでなく室内のゴミ、埃なども一緒に通過します。その汚れの一部が何年もの間に付着、蓄積して動作しなくなってしまっているのが原因です。
ダンパーが閉まる時に、密閉度を高めたり金属同士の衝撃が起きないよう、パッキンがついていますが、これが外れているのも時々見かけることがあります。パッキンが外れてしまっていると、パッキンがダンパーと枠とに挟まれ、きちんと閉まらず隙間が出来、そこから外気が入り込んでしまいます。こうなるとクリーンルームは、短時間で汚染されてしまいます。
二次更衣室などに設置のダンパーは、人の出入りが多くドアの開閉頻度が高い為に、室圧が頻繁に変化し、ダンパーが激しくパタパタと閉じたり開いたりします。この時パッキンが外れてしまっていると、ダンパーや枠が相互に激しく接触します。まるで、楽器のシンバルを叩いているかのような音がして、塗装粉や金属粉が発生し、飛散します。
2.日常点検の大切さ
停電などの非常時に、クリーンルーム内の清浄度を少しでも良い状態で維持するために、パッキンは外れていないか、ダンパーはきちんと閉まるかを日常的に確認したいものです。クリーンルーム内の汚れ方が少ないと、通電後にクリーンルームを清掃し、生産再開までの立ち上げ時間が短縮されます。
逆に、クリーンルームにひとたび汚染した空気が入り込んでしまうと、緊急避難により放置された製品が汚染されることや、生産設備、測定器の汚染、クリーンルームの清浄度低下が起き、元通りの状態に戻すまでには長時間かかります。そういう意味では、生産設備の管理だけでなく、付帯設備の管理も日常管理、点検に含めることが必要です。
昨今の日本国内の地震の発生やその予測からも、発生頻度は多くなる傾向にあり、ダンパー一つ取ってもクリーンルームを正常に保つ関門、関所の位置づけとして大変重要です。普段見慣れている風景の中に、不具合、異常を見つけることは難しいので、管理、点検項目に加えるなど、仕組みで問題を排除することも大切です。
この他にも、お金をかけないでできるクリーンルームの管理はいろいろあると思います。この機会に見直して見てください。
3.大勢の目を活用した監視
工場診断を依頼され、訪問すると、まず二次更衣室へ案内され、防塵衣に着替え、クリーンルームに入ってから、「さあ、お願いします」と言うところが多いのですが、私はそのクリーンルームに案内されて行く途中から、前...
。そこで気になったところや、外のダンパーの位置がクリーンルームの中ではどの辺かが分かりますので、現場に入ってからの位置関係も明確になり、診断がし易くなります。もし外からみて異常ではないかと推測されるところは、中に入るとその確認もできます。
外で推測、中で確認や裏付けをする。そうやって自分の診断レベルが高められるのです。そんなことも依頼された現場に伝えておくと、担当者だけでなく多くの目が現場に向くことになり、様々な発見に繋がり、大勢の目を活用した監視に繋がります。