前回はクリーンルーム外の事例でしたが、今回はクリーンルームの玄関である、二次更衣室のゴミの事例の紹介です。
あるものづくり企業から、現場の診断を依頼された時のことです。二次更衣室で防塵衣、手袋を着用して、エアシャワーのドアノブに手をかけた時、靴底に違和感を持った。その床のゴミを採取し、観察した事例です。顕微鏡で観察したところ、下のようなゴミが確認できました。
二次更衣室のゴミ
細長いくねくねしたものは繊維、輪郭がはっきりしていて、やや直線的なものは髪の毛、そして丸い粉のようなものは皮膚です。
二次更衣室では、防塵衣の着脱が行われるので、このようなゴミがあっても不思議ではないのです。しかし、その量は異常です。特に皮膚のゴミは多すぎます。エアシャワーを浴び、クリーンルームに入る時に、このゴミが靴底に付着し持ち込まれます。
皮膚が多い理由は、エアシャワーのドアノブをガチャガチャと扱うので、その時に手袋はしていても、防塵衣の袖と皮膚が擦れ、剥がれ落ちたものと推測できます。その作業エリアは手作業の多い工程だったので、手からの発塵、飛散を考慮し、二重袖の防塵衣を採用していた。これらが相互に擦れることで発生するわけです。
手袋もインナー、アウターと二枚重ね。袖も内袖と外袖の二枚重ね。それらと皮膚が擦れるだけでなく、ドアノブに触れる方の手に腕時計をしていれば、そこでも擦れ強制発塵の原因になります。もちろん、手袋や防塵衣の袖が二重になっているのは、それらの重ねの工夫で、防塵衣内から発生したゴミを外に漏らさないようにしていますが、それでも防ぎきれないのです。
その工夫がされていない(何のために二重になっているのか理解していない)現場では着用方法がばらばらであり、ゴミが漏れ放題になります。その結果、上記のように、特に皮膚のゴミが目立つわけです。
昔、日本空気清浄協会のレポートに「人の皮膚は3日に一度置換する」とありました。
3日に一度程度、古い皮膚が剥がれ落ち、新しい皮膚に置き換わるということです。それはいつ、どこで剝がれ落ちるのかわからないのですが、この例のように、強制劣化させている場所では特に多いでしょう。皮膚は単にゴミというだけではなく、ナトリウム、カリウム、カルシウム、塩素、硫黄など、人特有のものが含まれています。
特に清浄度の高いクリーンルームでは、微細加工製品などへの影響があるので、厳しく管理されています。
皮膚が剝がれるのは、このような事例の他に、夏の日焼け、冬の雪焼けなどもあります。比較すると、夏の日焼けの方が影響は大きいのです。品質への影響を避けるため、クリーン化4原則の中に、「日焼けしている人、あるいは日焼けがひどい人はクリーンルームには入らない」ということをルールにしているところもあります。
上の写真を良く見ると、髪の毛の直径よりも皮膚の方が数倍も大きいのです。肉眼でも見える大きさであり製品品質には影響します。
ある現場で客先からの現場監査がありました。
監査終了後の報告会でのこと。そのお客様から「この職場の○○の工程の○○の設備の前に髪の毛が1本落ちていた」と指摘がありました。お客様が退席してから、職制の中には、「そんな小さなことをいちいち指摘するのか」とか「その場で指摘すればいいじゃないか」という声がありました。それを聞いていた他の同席者も同じ反応でした。
それを聞いていた職場の責任者が「あの指摘は、小さなことをほじくるように指摘したというのではなく、この職場にはゴミを見つける、そしてそれを掃除する文...