前回のクリーン化について(その122)人財育成(その23)の続き、“セミナーについて”です。
退職後に実施しているセミナーは、在社中に立ち上げたクリーン化教育(社内外、国内海外などで受講者4500名超)および定年前の2年間執筆してきた電子版寺子屋“クリーン化塾”などの題材を中心に構成しています。
電子版寺子屋“クリーン化塾”は、国内外の拠点の後継者育成を目的に始めたものです。退職後は、立場、環境が違うので、今までとは別な視点、考え方が出てきます。それらの話題、教材は現場診断、指導で得た事例を含んでいますが、常に更新、充実させてきた。もちろん社外秘は省いています。これまでの過程でつくづく感じるのは、基礎の大切さです。
1. 基礎の大切さ
“クリーン化は掃除のことだろう”との先入観をお持ちの方も未だに多いです。
そのため改めて学ぶ必要は無いだろうとか、当社は関係の無いことだと思い、取り組みの必要性から除外されてしまうのです。元々スタート地点が揃わないまま会話が始まるので、深い議論に至らず、自社のものづくりの成長に繋がらないのです。
2. クリーンルームにしたけれど・・・
従って、取引先からの要請で、クリーンルームにしたが、その現場では旧態依然のものづくりをしているところがまだまだあります。その理由は次の2点です。
- ①クリーンルームとは何か、どのように管理すれば良いのか知らない、わからない、でも困らない。
- ②クリーンルームにすれば品質、歩留まりが向上すると言う思い込みや先入観がある。
ただし、一旦稼働したクリーンルームは、基本的には止めないので、クリーンルームの運転費用の多くを占める電気代は継続的に掛かるのです。旧態依然を続け、利益は増えないのに、クリーンルームの運転費用は増大し、今までの利益さえも圧迫してしまうのです。中には、クリーンルームにしたが、正しい管理をしなかったため、利益が圧迫されてしまう。品質も変わらないのだから、元に戻そうと考えるところも出てきます。ところが、クリーンルームをやめた途端、以前の品質レベルよりも下がってしまった。慌ててクリーンルームに戻したが、品質は元には戻らないと言うことが起きてしまう。何をして良いのかわからなくなってしまうのです。ですから基礎を理解し、支出、損失は最小限に抑えながら、品質、歩留まりを向上させたいわけです。
中小企業や各種企業のサプライチェーンの中には、上記①、②の理由でクリーンルームを保有していながらその管理方法を知らずに生産活動をしているところもあるでしょう。
基礎を理解してみると、なんとももったいないことをしていたのかと気づくかも知れません。基礎を身につけ、多面的に見る、考える。今後、沢山の半導体企業やその他の企業、分野でも、相互に競争力が試されます。基盤、体質がしっかりしているか否かで、競争力にも違いが出るでしょう。
私のセミナーはクリーン化の基礎の部分です。ただし、狭い部分ではなく、生産の仕組みや品質、人財育成、安全、作業ミスなど現場管理には欠かせない内容を多面的に捉え、事例を紹介しながら解説しています。理論理屈ではなく、事例を用いているので、実感が沸くでしょう。やり直しや手直しが多ければ、それらにかかるエネルギーや原材料の増加、人工数の増加、納期遅れなど生産管理全般に影響が出ます。クリーン化で品質、歩留まりを向上させ、利益が増えたとしても、一方で事故、災害が起きてしまうと、利益はいっぺんに吹き飛んでしまうかも知れません。ものづくりの基本である、Q(品質)C(コスト)D(納期)S(安全)いずれのロスも、環境への負担にもなります。
3. セミナーでの私の思い
セミナーは、ネットで実施という場合もありますが、私は対面式、双方向で進めたいです。その方が伝わり易いと考えています。その理由は、受講者に直接私の思いを伝えたい。そして受講者の反応、様子を見て伝わったのか確認しながら進める。会場の雰囲気を感じながら、基礎を理解しているのかも確認できます。より多くの方に理解していただきたいために、説明不足だと感じれば、言い換えてみる、別な事例を紹介する等工夫をしています。
長いコロナの時代、登校せず、ネットで授業を受ける機会が多かった方もいるでしょう。そこから得られるものと、直に授業を受けたものとでは記憶や理解力にも差が出るのではないでしょうか。直接対面することで自分の思いや情熱なども伝えられると思います。考え方だけでは、聞いただけになってしまうかも知れません。それには、事例の引き出しを沢山用意することも必要です。それにより、自分だったらどうするかという意識に切り替え、そして自社に戻って行動に繋げて欲しいです。つまりセミナーと現場とを繋げたいのです。
大企業の方でしたが、セミナーで学んだことをやってみて成果が出せた、上手く改善できたと言う反応もいただいています。これも双方向の事例ですね。
受講者も現場の人であったり、管理職、技術、品質、人財育成の部分もあるので、人事部門の方が受講する場合もあります。また営業の方がクリーン化を理解し、訪...