付帯設備もいろいろなものがあります。これらはクリーンルームや生産設備を支える重要なものですが、ともすると忘れがちな部分です。これも正常に機能しているかをチェック、診断しておく必要があります。今回は、その一つ、エアシャワーの診断について説明します。
1.エアシャワーの診断着眼点
(1)ドアについて
- ①自動ドア
- ②ドアノブ
- ③蝶番
- ④ドアクローザー
- ⑤エアシャワー内の清掃
- ⑥周囲の環境全般
ドアに着目してもこんなにあります。ところが日ごろ頻繁に出入りしていても、不具合に気が付かないことがあります。良く観察しましょう。
①自動ドア
自動ドアは、手を使わずに開閉できるので採用しているところは多い。逆にどこにも触れないので、異常を感知する機会は少ない。ドアの自動開閉の駆動方式はどうなっているかを把握しておきたい。
センサーで感知し、チェーンで開閉させるタイプでは、滑車がレールに乗り、チェーンで扉を動かしている。その部分は覆われ、見えないので劣化していても発見しにくい。開閉のたびに、金属同士が擦れ、金属粉が発生、飛散する。そしてグリスも落下や飛散がある。長期間保守しなかったところで、開閉のたびにチェーンの錆が飛散していたという例がある。
またグリスが乾き、黒い粉となって飛散した例もある。こうなるとグリスの役目をしないので、金属粉も増加し、さらにはチェーンの摩耗、損傷が起きる可能性がある。この付近は汚染領域となる可能性がある。特に人や台車の通行が集中する場所で、それにより気流が発生、拡散する。この付近には製品等品質に関わるものは置かないことです。
また、チェーンの弛みも目視では発見しにくいことに加え、人の出入り口なので、故障すると緊急時の避難にも影響することが考えられる。定期的な点検が必要です。
この他、センサーの感知とドアの開閉のタイミングがずれていないかも見ておきたい。極端な例だが、クリーンルーム側が早く開いてしまい、エアシャワー内で巻き上がっている浮遊塵が、クリーンルーム内へ流れ込んでいた例もある。
②ドアノブの劣化
人が開閉するドアにはドアノブがある。レバータイプもあるが、多くは回転させるタイプである。これはエアシャワーに限ったことではなく、更衣室など仕切られている部屋があれば、ドアが存在する。同じ見方でチェックしたい。
【不具合事例の紹介】
工場巡回中に、クリーンルームのドアノブの劣化に気づいた。最初から気づいたのではなく、偶然ドアノブの下の桟(さん)に汚れを発見した。その汚れは黒いものと、キラキラ光るものだった。何だろうと近くに寄って観察していたところ、そこを通行したいというので、下がって見ていた。その作業者がドアノブを回す時にガチャガチャと音がし、何かが落ちているように見えた。
ドアノブを操作しながらその付近をパーティクルカウンターで測定してみた。0.1μm以上の粒径の合計が、1分間に17,000個以上確認された。ドアノブに触れてみると、ゆるみが確認できる。
黒い汚れは、グリスの乾いた粉、光るものは金属粉だった。グリスが乾き、その役目をしないため金属が擦れてしまったものです。他のドアノブを確認してみると、ゆるみのあるものは、程度の差はあるが発塵は多い。まったく緩んでいないものの飛散はなかった。
関係する現場に連絡し、各クリーン化担当が調査したところ、同様の結果だった。ドアノブは、故障がなければ半永久的に使い切ってしまうものだ。
なお、こんな事例もあったので、紹介しておく。
ドアノブが緩んでいたが、それでも不都合なく開閉できていた。ところがある時、作業者がドアを開けようとしたら、ドアノブが抜けてしまった。ドアは開かなかったという例だ。これは笑って済ますわけにはいかない。その影響を考えてみよう。
もし、停電などのトラブルが発生し、施設管理部門から「空調が停止し、酸素濃度が低下している。直ちに、クリーンルームから退避してください」(通常はクリーンルームを出た、クリーン廊下で待機する場合が多い)というアナウンスがあったとしても(実際にあった)、天井灯は消え非常灯だけの薄暗い中、同じ情報を持った人たち...