▼さらに深く学ぶなら!
「クリーン化技術」に関するセミナーはこちら!
▼さらに幅広く学ぶなら!
「分野別のカリキュラム」に関するオンデマンドセミナーはこちら!
ここのところ半導体製造の分野が盛り上がってきました。しかも、ナノメートルの世界を目指しています。しかしながら、その土台、基盤がしっかりしているのか、クリーン化の基礎をきちんと持ち合わせているかと言うことを心配しています。何事も基本、基礎がしっかりしていて、その上で高いレベルへの挑戦が可能だと考えています。行き詰まった時、基本に帰れと言いますが、その基本はどこなのかと言うことです。
高いレベルを目指すとき、開発、設計、技術がしっかりしていても、それを具現化する現場の力は追いついているでしょうか。良く、理論的には可能だが・・・と言う言葉も聞きます。ものが作れなければ、現場との乖離は大きく、理論、理屈の話で終わってしまいます。いずれの企業の成功をも願いながら、桁違いの投資額ですから、損益分岐点はどの当たりになるのだろうか。企業間の差は顕著に出るのかなど気になります。その危機感を感じているので、クリーン化の基礎の部分に立ち戻り説明していきます。
・前回の クリーン化について(その162)クリーン化の基礎(その24)の続きです。
クリーンルームの中での最大の発生源、汚染源は人です。クリーン化4原則はその人に着目しています。
◆ クリーン化4原則について
図1.のクリーン化4原則について個別に解説します。
図1. クリーン化4原則
元々はクリーンルームのことを対象にしているので、“クリーンルームの4原則”と表現する場合もありますが、私は、もう少し広義に捉え、クリーン化と表現しています。2000年に赴任した山形県の工場では、クリーンルームではない作業エリアからも指導要請がありました。その頃から、やがてこういう時が来るんだろうと思い、要請があれば積極的に診断、指導、アドバイスを行っていました。これまでの体験や経験からクリーンルームの有無に関係なく、基本的な考え方は相互に活用できると考えているからです。それが、クリーンルームのノンクリーンルーム化の考え方にも繋がりました。
せっかくクリーンルーム(乱流方式)を保有していても、管理方法を知らないとか、きちんと管理をしなければお金がかかる割に効果は期待できません。逆にクリーンルームを保有していない現場でも、クリーン化の知識を持ち、きちんと管理すれば、管理されていないクリーンルーム(Fed.Std. クラス10,000から100,000)よりも良い環境にすることが可能だと考えています。そうなると、お金がかからないだけでなく、品質も向上し、安価なものづくりに貢献できますね。
このような背景から、クリーン化セミナーでも、“クリーンルームの有無に関わらず、クリーン化の基礎を学ぶこと”の重要さに触れています。ものづくりの幅広い分野で活用していただきたいです。
クリーン化4原則は、先にも紹介した次の4つです。この括弧の部分を外せば、クリーンルームではないものづくりエリアでも活用・応用ができます。
- (クリーンルームには)ゴミを持ち込まない
- (クリーンルームの中では)ゴミを発生させない
- (クリーンルームの中で)ゴミを堆積させない
- (クリーンルームから)ゴミを排除する
(1)ゴミを持ち込まない
“ゴミを持ち込まない”について、ポイントとなる部分を説明します。ここでは、クリーンルームに入室してからのことを説明します。
【たとえ防塵紙でも切らない、丸めない】
クリーンルーム内には防塵紙といえども、持ち込まない方が良いです。やむを得ず持ち込む場合は、...
▼さらに深く学ぶなら!
「クリーン化技術」に関するセミナーはこちら!
▼さらに幅広く学ぶなら!
「分野別のカリキュラム」に関するオンデマンドセミナーはこちら!
ここのところ半導体製造の分野が盛り上がってきました。しかも、ナノメートルの世界を目指しています。しかしながら、その土台、基盤がしっかりしているのか、クリーン化の基礎をきちんと持ち合わせているかと言うことを心配しています。何事も基本、基礎がしっかりしていて、その上で高いレベルへの挑戦が可能だと考えています。行き詰まった時、基本に帰れと言いますが、その基本はどこなのかと言うことです。
高いレベルを目指すとき、開発、設計、技術がしっかりしていても、それを具現化する現場の力は追いついているでしょうか。良く、理論的には可能だが・・・と言う言葉も聞きます。ものが作れなければ、現場との乖離は大きく、理論、理屈の話で終わってしまいます。いずれの企業の成功をも願いながら、桁違いの投資額ですから、損益分岐点はどの当たりになるのだろうか。企業間の差は顕著に出るのかなど気になります。その危機感を感じているので、クリーン化の基礎の部分に立ち戻り説明していきます。
・前回の クリーン化について(その162)クリーン化の基礎(その24)の続きです。
クリーンルームの中での最大の発生源、汚染源は人です。クリーン化4原則はその人に着目しています。
◆ クリーン化4原則について
図1.のクリーン化4原則について個別に解説します。
図1. クリーン化4原則
元々はクリーンルームのことを対象にしているので、“クリーンルームの4原則”と表現する場合もありますが、私は、もう少し広義に捉え、クリーン化と表現しています。2000年に赴任した山形県の工場では、クリーンルームではない作業エリアからも指導要請がありました。その頃から、やがてこういう時が来るんだろうと思い、要請があれば積極的に診断、指導、アドバイスを行っていました。これまでの体験や経験からクリーンルームの有無に関係なく、基本的な考え方は相互に活用できると考えているからです。それが、クリーンルームのノンクリーンルーム化の考え方にも繋がりました。
せっかくクリーンルーム(乱流方式)を保有していても、管理方法を知らないとか、きちんと管理をしなければお金がかかる割に効果は期待できません。逆にクリーンルームを保有していない現場でも、クリーン化の知識を持ち、きちんと管理すれば、管理されていないクリーンルーム(Fed.Std. クラス10,000から100,000)よりも良い環境にすることが可能だと考えています。そうなると、お金がかからないだけでなく、品質も向上し、安価なものづくりに貢献できますね。
このような背景から、クリーン化セミナーでも、“クリーンルームの有無に関わらず、クリーン化の基礎を学ぶこと”の重要さに触れています。ものづくりの幅広い分野で活用していただきたいです。
クリーン化4原則は、先にも紹介した次の4つです。この括弧の部分を外せば、クリーンルームではないものづくりエリアでも活用・応用ができます。
- (クリーンルームには)ゴミを持ち込まない
- (クリーンルームの中では)ゴミを発生させない
- (クリーンルームの中で)ゴミを堆積させない
- (クリーンルームから)ゴミを排除する
(1)ゴミを持ち込まない
“ゴミを持ち込まない”について、ポイントとなる部分を説明します。ここでは、クリーンルームに入室してからのことを説明します。
【たとえ防塵紙でも切らない、丸めない】
クリーンルーム内には防塵紙といえども、持ち込まない方が良いです。やむを得ず持ち込む場合は、発塵の少ないものにしましょう。メーカーによって防塵紙、無塵紙と呼ばれているものです。これらもまったくゴミが出ないのではないので、私は防塵紙と呼ぶようにしています。防塵紙は、製品流動表や各種記録、点検記録、現場内への連絡事項、さらにはノートなど多様な使い方があります。色は白、水色、黄色、ピンク、グレーなどがあり、それらを使い分けしているところもあります。
例えば、製品流動表などは水色、品質問題などの記録、報告はピンク、設備の問題、報告等保全関係は黄色というような使い分けです。この使い分けは、次のような“見える化”のためです。製造ラインは交代制で24時間、しかも毎日稼働しているところが多く、管理職や技術、品質部門は平日のみの勤務です。休日明けに報告書などを確認する場合、防塵紙の色により品質問題が多いのか、設備起因の問題かを一見して把握することができます。
また品質や保全などの担当部署へ振り分け、即報告できるのです。自分たちが休んでいる間に溜まったトラブルを迅速に把握し、優先順位をつけて、早急な対応を取るための一つの策です。最近は、生産、品質、保全、あるいは現場への連絡など様々なものが、電子化され管理されていて、クリーンルームへの紙類の持ち込みはかなり減っていると推測します。
ただ、清浄度の低い乱流方式クリーンルームでは、まだまだ防塵紙は使われているでしょう。現場の改善が進んでいないか、あるいは普通紙よりやや高額であるため、導入を見送っている、または防塵紙を使う必要がないなどの理由です。防塵紙の特徴を生かし、クリーンルームの環境向上に役立てたいですね。
【防塵紙からの発塵】-なぜ防塵紙でも発塵するのか
普通紙の原料はパルプです。
パルプから作った製品は、新聞紙、ボール紙や段ボール、ノートなど身近に沢山あります。紺、黒など暗い色の背広を着て、電車の中で新聞を読んだりすると、細かなゴミがたくさん出て、それらが付着します。それを払ったりする経験がある方は多いでしょう。パルプは木材から作られます。構成されている繊維の長さは短い(短繊維)ので、繊維同士の絡みが少なく、この繊維が抜け落ちゴミになります。このゴミの多くは紙の端面(周囲)から発生します。
発塵を抑えるために、メーカー各社では様々な工夫をしています。
例えば、紙の端面からゴミが出やすいので、周囲に熱を加え裁断(溶断)する。また紙自体に長繊維を混ぜるなどです。ただし、これらは紙を破ると、その繊維が飛び出しゴミになります。また、破る、カッターやハサミで切る、穴をあけることでも発塵します。丸めると、表面の繊維が起き上がり、それが抜け落ちゴミになります。従って、防塵紙であっても切らない、丸めないことがポイントです。
清浄度が高いクリーンルームでは、そのような作業、行為をしないよう、刃物類やホッチキス、穴あけパンチなどの持ち込みを禁止する標準や、ルールを設けているところもあり、より厳しく管理しています。防塵紙は普通紙よりも若干高額なので、隅に少しメモしただけで、捨てるのはもったいないと言って、小さく切って使っているのを見掛けることがあります。これでは折角発塵防止の加工をした部分がなくなり、繊維が露出し、発塵させているようなものです。メモとして使う場合は、防塵紙製のノートが発売されているのでこれを使うのも良いです。
【段ボール、ボール紙について】
クリーンルームではない作業エリアでは、段ボールなど発塵しやすいものを持ち込み、開梱しているところを見かけることがあります。これでは段ボールの屑がたくさん発生し、清掃するのも大変です。わざわざゴミを発生させてから清掃することになり、清掃しても確実な除去はできないです。この場合は一度室外で開梱し、他の容器などへ入れ替えて持ち込むようにしましょう。クリーンルーム以外でも、このようにクリーン化4原則の“持ち込まない、発生させない”の考え方は共通です。
【事例の紹介】
梱包、出荷エリアで、屋外のターミナルに届いた段ボールの束をそのまま室内に持ち込み、そこで梱包を解き、段ボール箱を組み立てているところがあった。たくさんの段ボール屑を持ち込み、また発生させてしまうため掃除も大変だった。製品はビニール梱包し、段ボールに入れていたのですが、そのビニールには段ボールの屑が静電気で付着していて、その除去も大変だった。私が「持ち込み前にその段ボールの束を、屋外でトントンすれば、その場で少しはゴミが除去できますね」とアドバイスした。でもこれは水際対策であって、持ち込み量を少し減らせるだけです。
このように、大抵は、受け入れ側で何とかしようと考えるのです。ところがその職場の責任者は違った。段ボール会社に出向いて、事情を説明し、ゴミが出ない方法はないか、双方で検討した。上流から対策を取る。発生源対策です。その結果、段ボールを切断する刃の形状を変更することで、ゴミの発生を少なくすることができた。刃の形状変更に費用がかかったが、ゴミの発生を少なく抑える刃をPRすることで、取引先を増やすことが見込めるため、協力的だったとのことです。提案型の商売です。
発生してしまったものをどうするか…。この事例は、大勢で清掃してもきれいに除去できないことを、自分たちだけで困っているのではなく、上流であるメーカーにも一緒に考えてもらい、生まれた効果です。発生源である上流から抑えるのは、問題が小さいうちに抑えることです。
もちろん全くゴミが出ないわけではないですが、極端に発生量を抑えることができた例です。その熱心な責任者の現場はクリーンルームではないが、職場にクリーン化担当を置き、“かわら版”も発行し、情報発信していた。
【テープ類の芯に使われているボール紙】
クリーンルーム内であっても、安全通路(定義は労働安全衛生規則で決められている)の表示をする場合、白色の幅広テープを使うことが多い。一般の部屋なら、火災発生時に、天井から降りてくる煙と床との間にできる空気の層を這いながら、そのテープを伝い避難ができること以外に、視界が悪くなると、方向感覚を失ってしまうので、このような工夫も良いです。
白色ではなく、薄黄色の蛍光テープを使う場合もあるが、これは、停電などで天井の照明が消えた際、床のテープが光ることで、それを伝い避難ができること以外に、一般の部屋なら、火災発生時に、天井から降りてくる煙と床との間にできる空気の層を這いながら、そのテープを伝い避難ができます。
テープはこのように使う場合もあるが、いずれも芯はボール紙のものが多く、使っている間に、ゴミが発生し、飛散する。最近ではプラスチック製の芯も多くなってきている。それに伴い、使用後のプラスチックの芯はメーカーで回収しているところもある。同じような幅広のテープで、黄色と黒のテープ(通称トラテープ)がある。
安全確保が必要な場所、危険を周知する場所には多く見られるが、ボール紙の芯であれば、同じように注意が必要です。このほかセロテープも芯がボール紙です。代用品としてスコッチテープ(芯がプラスチック製)を使う場合もあるが、テープ自体がちぎれやすく使い勝手が悪いので、お勧めできません。電気関係の修理などに使う絶縁テープも芯がボール紙です。良く確認しましょう。テープは、使う時に静電気が発生(剥離帯電)するため、使用場所や使い方にも注意が必要です。
プリンターのインク箱なども紙製です。どのように持ち込むか、ルールに含めておきたい。このようにクリーン化4原則の“持ち込まない、発生させない”の考え方で周囲をよく見回すと、もっと色々なものに気が付くでしょう。
次回に続きます。
クリーン化のこと、活動の進め方、事例など個別に対応が必要でしたら、ものづくりドットコムを通じてご連絡ください。可能な限り対応致します。また、セミナー、講演会なども対応致します。
【参考文献】
清水英範 著、 「知っておくべきクリーン化の基礎」諷詠社 2023年
同 電子版 「知っておくべきクリーン化の基礎」、諷詠社 2023年
同 「日本の製造業、厳しい時代をクリーン化で生き残れ!」諷詠社 2012年