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ここのところ半導体製造の分野が盛り上がってきました。しかも、ナノメートルの世界を目指しています。しかしながら、その土台、基盤がしっかりしているのか、クリーン化の基礎をきちんと持ち合わせているかと言うことを心配しています。何事も基本、基礎がしっかりしていて、その上で高いレベルへの挑戦が可能だと考えています。行き詰まった時、基本に帰れと言いますが、その基本はどこなのかと言うことです。
高いレベルを目指すとき、開発、設計、技術がしっかりしていても、それを具現化する現場の力は追いついているでしょうか。良く、理論的には可能だが・・・と言う言葉も聞きます。ものが作れなければ、現場との乖離は大きく、理論、理屈の話で終わってしまいます。いずれの企業の成功をも願いながら、桁違いの投資額ですから、損益分岐点はどの当たりになるのだろうか。企業間の差は顕著に出るのかなど気になります。その危機感を感じているので、クリーン化の基礎の部分に立ち戻り説明していきます。
・前回の クリーン化について(その160)クリーン化の基礎(その22)の続きです。
クリーンルームの中での最大の発生源、汚染源は人です。クリーン化4原則はその人に着目しています。
◆ クリーン化4原則について
図1.のクリーン化4原則について個別に解説します。
図1. クリーン化4原則
元々はクリーンルームのことを対象にしているので、“クリーンルームの4原則”と表現する場合もありますが、私は、もう少し広義に捉え、クリーン化と表現しています。2000年に赴任した山形県の工場では、クリーンルームではない作業エリアからも指導要請がありました。その頃から、やがてこういう時が来るんだろうと思い、要請があれば積極的に診断、指導、アドバイスを行っていました。これまでの体験や経験からクリーンルームの有無に関係なく、基本的な考え方は相互に活用できると考えているからです。それが、クリーンルームのノンクリーンルーム化の考え方にも繋がりました。
せっかくクリーンルーム(乱流方式)を保有していても、管理方法を知らないとか、きちんと管理をしなければお金がかかる割に効果は期待できません。逆にクリーンルームを保有していない現場でも、クリーン化の知識を持ち、きちんと管理すれば、管理されていないクリーンルーム(Fed.Std. クラス10,000から100,000)よりも良い環境にすることが可能だと考えています。そうなると、お金がかからないだけでなく、品質も向上し、安価なものづくりに貢献できますね。
このような背景から、クリーン化セミナーでも、“クリーンルームの有無に関わらず、クリーン化の基礎を学ぶこと”の重要さに触れています。ものづくりの幅広い分野で活用していただきたいです。
クリーン化4原則は、先にも紹介した次の4つです。この括弧の部分を外せば、クリーンルームではないものづくり...
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ここのところ半導体製造の分野が盛り上がってきました。しかも、ナノメートルの世界を目指しています。しかしながら、その土台、基盤がしっかりしているのか、クリーン化の基礎をきちんと持ち合わせているかと言うことを心配しています。何事も基本、基礎がしっかりしていて、その上で高いレベルへの挑戦が可能だと考えています。行き詰まった時、基本に帰れと言いますが、その基本はどこなのかと言うことです。
高いレベルを目指すとき、開発、設計、技術がしっかりしていても、それを具現化する現場の力は追いついているでしょうか。良く、理論的には可能だが・・・と言う言葉も聞きます。ものが作れなければ、現場との乖離は大きく、理論、理屈の話で終わってしまいます。いずれの企業の成功をも願いながら、桁違いの投資額ですから、損益分岐点はどの当たりになるのだろうか。企業間の差は顕著に出るのかなど気になります。その危機感を感じているので、クリーン化の基礎の部分に立ち戻り説明していきます。
・前回の クリーン化について(その160)クリーン化の基礎(その22)の続きです。
クリーンルームの中での最大の発生源、汚染源は人です。クリーン化4原則はその人に着目しています。
◆ クリーン化4原則について
図1.のクリーン化4原則について個別に解説します。
図1. クリーン化4原則
元々はクリーンルームのことを対象にしているので、“クリーンルームの4原則”と表現する場合もありますが、私は、もう少し広義に捉え、クリーン化と表現しています。2000年に赴任した山形県の工場では、クリーンルームではない作業エリアからも指導要請がありました。その頃から、やがてこういう時が来るんだろうと思い、要請があれば積極的に診断、指導、アドバイスを行っていました。これまでの体験や経験からクリーンルームの有無に関係なく、基本的な考え方は相互に活用できると考えているからです。それが、クリーンルームのノンクリーンルーム化の考え方にも繋がりました。
せっかくクリーンルーム(乱流方式)を保有していても、管理方法を知らないとか、きちんと管理をしなければお金がかかる割に効果は期待できません。逆にクリーンルームを保有していない現場でも、クリーン化の知識を持ち、きちんと管理すれば、管理されていないクリーンルーム(Fed.Std. クラス10,000から100,000)よりも良い環境にすることが可能だと考えています。そうなると、お金がかからないだけでなく、品質も向上し、安価なものづくりに貢献できますね。
このような背景から、クリーン化セミナーでも、“クリーンルームの有無に関わらず、クリーン化の基礎を学ぶこと”の重要さに触れています。ものづくりの幅広い分野で活用していただきたいです。
クリーン化4原則は、先にも紹介した次の4つです。この括弧の部分を外せば、クリーンルームではないものづくりエリアでも活用・応用ができます。
- (クリーンルームには)ゴミを持ち込まない
- (クリーンルームの中では)ゴミを発生させない
- (クリーンルームの中で)ゴミを堆積させない
- (クリーンルームから)ゴミを排除する
(1)ゴミを持ち込まない
“ゴミを持ち込まない”について、ポイントとなる部分を説明します。
【クリーンルームに私物を持ち込まない】
半導体などの前工程では、厳しいルールがあるが、その他のところでは私物の持ち込みが散見されます。例えば、筆入れ、筆記具など個人のものが持ち込まれるケース。技術や品質部門の方でも、理解されていない場合、自分の手帳やノック式のボールペン、シャープペンシルなどの持ち込む場合があります。
これらは日常的にクリーンルームの外で使うので、様々な汚れがついています。ものによっては自宅に持ち帰るものもあるでしょう。素手は色々なところに触れるので非常に汚れています。素手で扱うと塩分や皮膚の剥がれも付着、それらがドアの取手や作業中の製品、作業用の手袋などにも付着し、治工具への転写や同じ治具を使うなどで他の人にも影響します。そして製品にも影響します。
人の手は、防塵靴の靴底と同じくらい汚れている、と表現する人もいるくらいです。人から出る汚れとして、ナトリウムやカリウム、カルシウム、塩素、硫黄などがあります。微細な製品製造では、品質への影響が顕著に現れますから、特に管理が厳しいのです。個人の携帯電話などは持ち込み禁止になっているところも多いですね。
携帯電話は設備の誤動作の原因になるともいわれています。飛行機の機内で携帯電話の電源を切ることと同じです。携帯電話が普及し始めた頃、ノースウエスト航空から、日本の空港に近づくと計器類に異常が発生するという事例が報告されたのが、日本では初めてだったと思う。国際線は、時刻通りに運行できない場合も多い。それで、日本に近づくと、機内放送で到着予定時刻が示される。この時乗客が迎えに来る人におよその到着時間を連絡しはじめるので、しばらくの間、計器類の表示が異常になるのです。この時は着陸の準備に入るので、事故に繋がる可能性もあるのだ。また、信州大学病院で精密機器への影響を調査し、異常が認められたとの報告もあります。
【喫煙後はうがいをする】
タバコを吸った後は、煙の粒子が呼気に含まれ吐き出されます。タバコの煙の粒子密度が高いと、その部分は白、あるいは紫色に見える。紫色の部分は紫煙と呼ばれ、特に粒子密度が高く、これが体に良くないのです。これを周囲の人が吸ってしまうことを受動喫煙といいます。
クリーンルームに入っても、その粒子が長時間吐き出されます。その多くは製品側に向かって出てくるので、製品品質に影響しないかとの心配があります。前工程で使用しているマスク付きフードは、細かな粒子も捕集するよう作られているので、基本的には問題ないと思うが、フードと顔面とに隙間があるなど着用方法が悪いと、漏れ出る心配があります。そこで、タバコを吸ったらうがいをして、クリーンルーム内に吐き出す量を少しでも減らす考え方が必要になる。“タバコを吸ったらうがいをする”がルールになっているところもあります。そして、喫煙所の近くに、うがいができる場所を設けているところがあります。ルールがあっても、実施しやすいかどうかを考えましょう。
クリーン化では、“疑わしきは排除”と言う考え方があります。悪影響が考えられる場合は、排除することです。管理職の方が現場に入る時“一服してから現場に入ろう”ではなく“現場巡回後、クリーンルームから出てきたら喫煙しよう”としたいものです。喫煙室と一般の休憩室は仕切っておくことも必要です。喫煙室の壁が黄色になっているのは、喫煙の影響です。
こんな事例がある。
① クリーン化教育の受講者の話で「私は他社の半導体製造の会社から移ってきた。その会社の面接試験で、あなたはタバコを吸いますか?」 と聞かれたそうです。それが採用の条件かどうかは分からないが、その企業も意識しているのだと感じた。
② 九州のある会社に指導に行った際、廊下の隅で、数人が丸くなり、タバコを吸っている様子を見掛けた。タバコを吸う場合は喫煙室を設置するか、外で吸うようにとアドバイスしてきた。しばらくしてその会社を訪問したところ、廊下に構内履きが2足あった。そのことを役員に聞いたところ、「あれ以来、外でタバコを吸うように変更したんです。今二人が廊下から外に出て喫煙しています」 と言っていた。
③ 健康管理室の話
社員の喫煙者を減らそうと考えていて、他社はどうか色々調べたそうです。その中の1社を訪問したところ、タバコを吸うのは屋外、しかも建物から少し離れたところに喫煙所を設置してあった。たとえ社長であっても、そこまで行ってタバコを吸っているというのです。大雨でも、猛吹雪でも、寒くても、そこに行かないとタバコが吸えないのです。おのずと喫煙の回数が減り、タバコをやめる人も増えたそうです。
すると、家族から社長宛に、「ありがとうございました。おかげでうちの主人もタバコをやめました」 という手紙が複数届いたということです。健康管理室では、健康診断時、喫煙で黄色くなった人の肺や、海外のたばこのパッケージを展示していた。海外のたばこの箱には、吸い過ぎに注意を促す絵や表示が付いていた。健康を害しても自己責任という表示です。そして禁煙希望者の相談にも乗っていました。これはクリーン化と健康面へのプラス効果です。室内の喫煙所は、壁が黄色くなり、業者が定期的にクリーニングしているが大変な作業です。あの黄色いのが喫煙者の肺の色なのです。
クリーンルームに限らず、汚れの最大の発生源は人であることを忘れないで下さい。クリーンルームには“ゴミ、汚れを持ち込まない”ことを説明してきました。対象は、普通紙や私物など、目に見えるものは分かりやすいが、エアシャワーの浴び方で説明したように、目に見えないゴミもあるので要注意です。それらを持ち込まないルールや仕組みだけでなく、一人ひとりがゴミに対し自覚することが重要です。“少しぐらいなら、私だけなら良いだろう”という考え方は排除し、徹底して入り口を抑えましょう。
次回に続きます。
クリーン化のこと、活動の進め方、事例など個別に対応が必要でしたら、ものづくりドットコムを通じてご連絡ください。可能な限り対応致します。また、セミナー、講演会なども対応致します。
【参考文献】
清水英範 著、 「知っておくべきクリーン化の基礎」諷詠社 2023年
同 電子版 「知っておくべきクリーン化の基礎」、諷詠社 2023年
同 「日本の製造業、厳しい時代をクリーン化で生き残れ!」諷詠社 2012年