前回のクリーン化について(その127)人財育成(その28)の続き、“現場へ足を運ぶことの大切さ”の続きです。
これまで現場に足を運ぶことの大切さについて記してきましたが、単に現場に行けば良いのではありません。その現場を自分の五感を使って良く観察することです。クリーンルーム外であっても、自分のエリアをよく見ると幾つかの不具合に気がつきます。それを現場観察に生かしましょう。例えば、ドアの蝶番の劣化など幾つかの不具合事例が見つかるかも知れません。
1. 事例:ドアの劣化
ドアの劣化に絞って説明します。劣化と言っても様々あります。事務室などでも観察してみましょう。蝶番の固定部分のネジの緩み、蝶番同士が相互に擦れないようスペーサーが入っている場合がありますが、開閉頻度が多いと、それが擦り減って無くなってしまい、金属同士が擦れる。そして金属粉が発生、飛散している場合があります。
このような例は、多くの人が毎日見ていても問題として拾うことができていない、あるいは見ていても異常と判断していない場合が多いです。このスペーサーはドアの下側に取り付けてある蝶番側の方が、ドアの重量を受けやすく劣化の進行が速いです。またドアの内側から蝶番を見ると、グリスの乾いた粉が付着、または落下している場合があります。これもかなり進行していると見た方が良いです。
ギーギーと異音がするとか、蝶番の中心にある軸が抜け掛かっている(多くは上側の蝶番の軸が上の方に抜けてきます)。
ドアの開閉頻度が多いと、ドアが傾き、枠の隙間が変わってきます。下側の方は隙間が大きくなり、上側は隙間が狭くなります。軸も変形するので発塵します。隙間が狭くなるとやがて、相互に接触し、塗装や金属の発塵粉が発生します。それによって落下したものは、ドアの開閉の風で拡がってしまうとか、靴底や台車の車輪などに付着し、広範囲に拡散します。このように気づかない、あるいは知っていてもそのままにしていると劣化が進行し、ドアが傾く、外れる、落下する、と言うことが起きます。実際にこのような例は多いようです。
これがクリーンルームに付属のドアだったらどうでしょうか。これらは品質に影響する可能性があるので、付帯整備と考え迅速な対応が必要です。
2. 事例:ドアクローザー
事務室のドアの蝶番を参考に着眼点を拾いましたが、ドアに付いているドアクローザーも詳細にチェックしてみると、がたつき、開閉時に異常な動きをする(閉じ終わる直前に、アームの尻尾がぴょんと跳ねる)、グリスの漏れ、床への落下(足で踏んで拡散する)、ドアの取り付け部の外れ、垂れ下がり(これは人への衝突例もあります)アーム同士の擦れ等色々な不具合が見つかります。このように自分の周りを見渡すと、幾つか不具合は見つかると思います。
3. 現場に足を運ぶ
事例の着眼点を参考にして、ものづくりの現場であるクリーンルームの中は大丈夫かとチェックしてみましょう。現場に足を運び、事実を確認することで発見に繋がります。三現主義(現場、現物、現実)で確認することです。
(1)先を考える
例えば、エアシャワーのドアが劣化し、傾きが起きると、ドアと周囲に隙間ができます。エアシャワーを浴びている時は、エアシャワーの中の圧力が大きいので、発生している大量の浮遊塵が、クリーンルーム内に吹き出すかも知れません。これでは何のためのエアシャワーかわからなくなってしまいます。
これは、下表のクリーンルームの4原則の最初にある、“持ち込まない”の中に含まれる “見えない持ち込み” ですから要注意です。不具合を発見したら、これをそのままにしておいたらどうなるか。“先を考えること” が重要です。現場の人にも説明がしやすいですね。
表 クリーンルームの4原則
(2)人を育てる
単に大きな声で指示しても、理解して貰えず、現場の人も萎縮してしまいます。でもそのような説明をして行くと、納得してもらえるでしょうし、両者の関係も良くなります。このようなことは人財育成にも繋がります。ただ指摘するだけでは、うるさい人が来たということになってしまい、敬遠されてしまいます。逆に良い関係になれば現場の情報も入りやすくなります。現場に沢山のアンテナが立つと言うことです。どちらにとってもメリットです。
(3)日常生活にもヒントあり
これらは自宅や外出時にも確認できます。自宅や訪問先の玄関、飲食店の玄関ドア、トイレのドア等ですね。自宅には化粧台(三面鏡)があれば、その蝶番も見てみましょう。正面の鏡に対し、両側に開くので、閉じた場合、両側の上部が接触するような傾きになります。そして上部は隙間が狭いか、相互に接触するようになります。こんな風に、いろいろなところにヒントがあります。それを自...