クリーン化について、人財育成に触れています。今回のその8、前回に引き続き、人を育てるにはです。
【この連載の前回:クリーン化について(その102)人財育成(その7)へのリンク】
1. 自ら情報を取りに行く
普段の会話、何気ない会話だと思っていても、以外に重要なことが潜んでいると気づくことがある。それに気づいて引き寄せると言うことも大切にしたい。それには特別な言葉や飾ったことばを使わないから、気づきにくい場合がある。借り物ではなくその人の生きざまから出た言葉だ。この気づきは会話だけではない。こんな例がある。
(1)自動販売機のボンベ
私が部下を持っていたころ、ある女性が半導体製造の国家検定を受験しようと、一生懸命勉強していた。
ある時、休憩室に行ったところ、業者が来て自動販売機の扉を開けていた。普通なら、今は使えないと言って終わってしまうところだが、その女性は中を覗き込んで、緑色のボンベがあるのに気づいた。業者に、「これは炭酸ガスですね」 と確認した。ちょうどガスの種類とボンベの色を学んでいた時だった。炭酸ガスは緑色であることは知っていたが、それをきちんと確認していたのだ。
ちょっとしたことに気づき、その事実を確認することは大事だ。一歩進んで、情報を取りに行く姿勢だ。テキストで学んだことを体験学習したのだから、自信を持って回答できるだろう。
(2)自動販売機への補充~先入れ先出し
自動販売機では、缶、瓶、ペットボトルはその商品の後ろから補充する。これもその場を見ていると良くわかる。
つまり最前列には、良く冷えたもの、あるいは良く温まったものが来ている。客はそれを購入するのだ。客のニーズに合わせて、その商品価値のあるものを販売する仕組みである。もうひとつ、生産管理などで言う、先入れ先出しにも繋がっている。古いものを先に取り出す効率的な仕組みだ。
一般のスーパーや商店では、商品の賞味期限を客が確認し選択する。残るものは期限がまちまちだから、店員が時々確認したり、並べ直す作業が必要になる。それでも古いものが残ってしまう。そして割引商品になってしまうかも知れない。自動販売機ではその作業も無駄なく自動的にできるのだ。そして割引しなくても良いかも知れない。
製造現場でも、原材料に使用期限があるものは、同じような管理をしているところもある。ちょっとしたことにも気づき、少し深く考えてみると良い。 ちょっとしたことであっても、その繰り返し、積み重ねで大きな成果になるかも知れない。
(3)自ら引き寄せ、自分のものにする~ある電力会社の営業マン
東京でのセミナー時、受講者の中に若い女性がいた。予め知らされていた受講者名簿の中にはなかった。間際に申し込みをしたのだろう。始めてから、もしかするとセミナー会場を間違えたのではないかと心配になった。最初の休憩時、その方に色々聞いてみた。大手電力会社の営業マンだった。
受講の動機はこうだった。「私は電力会社で営業をしている。電力会社のお客様でクリーンルームを持っているところは多いのに、その”クリーンルームやクリーン化とは何か”を知らずして営業はできません」 と言って上司を説得して受講したというのだ。
知らない、わからないのにわかったふりをして営業はできないと言うのです。会社や上司が受講させるのとは違い、自ら引き寄せた知識は、その人にとっての宝になるだろう。その方とは、セミナー以降も、清掃の仕方、ワイパーの使い方などで、何回かメールのやり取りをした。恐らく、企業訪問時、話題にしやすいと思う。
このようなことは、難しい理論、理屈ではないので訪問先では話題にできるのだ。話題が多いと、客先も対応の時間を割いてくれたり、情報を提供してくれたりするでしょう。そこにその営業マンの価値や深みが出てくると考え...