クリーン化について(その127)人財育成(その28)現場へ足を運ぶことの大切さ

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  クリーン化について(その127)人財育成(その28)現場へ足を運ぶことの大切さ

 

前回のクリーン化について(その126)人財育成(その27)の続き“現場へ足を運ぶことの大切さ”です。今回も事例を紹介します。

 

【前回のポイント】

  • ① 現場に足を運び、三現主義(現場、現実、現物)で確認、これに安全も加える。
  • ② 現場の人と会話することで、良好な関係が得られる。現場にアンテナを立てる。
  • ③ 現場の人と会話することで、情報が得られる。生産、安全、品質、作業員の心の安全などを把握し、現場は健全な状態かの見守りや改善点を把握する。

このような関係を構築することで、トップダウンも生きてくる。つまり、相互の関係はトップダウンとボトムアップが機能する関係になる。

 

1. 部長や課長が標準書を作成

昔聞いた話ですが、ある外資系の半導体工場の例です。その工場では、部長、課長が現場の作業標準を作っているという話でした。他の企業はどうなのかはわかりませんが、管理職レベルでそこまでやるのかと感心したことがありました。

 

理由を聞いてみると、部長、課長が作業標準を作る場合、その作業にかなり精通していなければできないのです。それまでの知識や推測では作業標準書は作れません。特に、作業標準ではポイント、急所を押さえると言うことを書き添えることが重要ですが、そのことが非常に難しいので、頻繁に現場に入り、確認したり、現場の人に聞いたりするわけです。そこで相互の関係が出てきます。

 

QC7つ道具の一つに特性要因図というのがあります。“原因と結果との因果関係を図にしたもの”です。これも、机上で曖昧なまま、多分こうだろうと推測で書いてしまうと、ポイントがずれていたり、原因を探る方向が違ってしまいます。ですから現場に足を運ぶこと、可能な限り現場で確認しながらその図を書き上げることが重要です。

 

その管理職もこの標準できちんと作業が出来るのか。ミスが起きないのかと様々な見方で完成度を高めていくのです。勿論完璧にできない場合もあるので、見直し、フォローをします。作っただけで終わりにはしないのです。そこで不具合が見つかれば、修正していきます。

 

『標準は書き換えるためにある』と言う言葉もありますが、実情に合わせ、修正して行くことで、生きた、使える標準にして行くことが重要です。この過程で、管理職と現場の関係は密になります。ここまでできなくても、現場に足を運ぶことは価値あることです。

 

私があるところで耳にした言葉があります。『現場の奴らは』と言う言葉でした。現場からは遠い部門の方でした。恐らく現場のことは全く知らないのでしょう。私も現場出身です。これを聞いてかなり憤りを感じました。現場を知らない人の発言であっても、その現場の人が一生懸命頑張って作り込み、それで得た稼ぎを配賦という形で、恩恵を受ける訳です。

 

こんな言葉を吐き出しながら、現場を見下した仕事をしているのかと思うと腹立たしいです。これは何十年経っても心の痛みとして残っています。その職場の上長はどのような人なのか、どのように育てているのかと考えてしまいます。私が訪問した時に遭遇した言葉ですが、そのようなところを次に訪問すると、対応する人が変わっていたり、退職されている場合もありました。これは一回だけではありません。

 

本当にたくさんの現場を見てきましたから、会社によってもこんなにも現場の見方がちがうものかと思いました。先ほどの例とは対照的です。ベクトルが合うか否かで、その会社、現場の体質が強いかどうかが左右されると思います。『社員を大切にしない会社、部下を大切にしない上司から人は離れていく』のです。

 

今、少子化の影響などで多くの分野で人財不足が騒がれていますが、先ほどのように人が入れ替わり、立ち替わりでは安定した現場はできません。またそれらが噂として拡がると人も集まらなくなってしまうでしょう。グッドマンの第二法則 注1)

 

ひとり一人を大切に育てて行くことが大切です。それがやがて自社の永続的な経営に直結すると考え対です。私が、人財と言う字を使うのも、“人を材料扱いしていているうちは育たない。財産としてきちんと育てることが大切だ”と考えているからです。勿論、財産も大切に扱わないと減ってしまうこともあるので、真剣に育てることが重要です。

 

人が入れ替わってばかりだと、いつも同じレベルの人たちばかりで、企業の成長は見込めないでしょう。

 

注1)米国のジョングッドマンという人が唱えた法則。

「苦情処理(対応)に不満を抱いた顧客の非好意的な口コミは、満足した顧客の好意的な口コミに比較して、二倍も強く影響を与える」 と言っています。簡単に言うと、“ネガティブな口コミは、2倍の人に伝わる”と言うことですが、同じような解釈ができます。つまり、悪い情報は良い情報よりも速く、広く拡散すると言うこと。それによって、将来“人”そのものが集まらなくなってしまうかも知れません。

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◆関連解説:クリーン化って掃除のことだとの先入感が未だに多いようです。簡単に説明します。

 

クリーン化のことを知ら...

 
  クリーン化について(その127)人財育成(その28)現場へ足を運ぶことの大切さ

 

前回のクリーン化について(その126)人財育成(その27)の続き“現場へ足を運ぶことの大切さ”です。今回も事例を紹介します。

 

【前回のポイント】

  • ① 現場に足を運び、三現主義(現場、現実、現物)で確認、これに安全も加える。
  • ② 現場の人と会話することで、良好な関係が得られる。現場にアンテナを立てる。
  • ③ 現場の人と会話することで、情報が得られる。生産、安全、品質、作業員の心の安全などを把握し、現場は健全な状態かの見守りや改善点を把握する。

このような関係を構築することで、トップダウンも生きてくる。つまり、相互の関係はトップダウンとボトムアップが機能する関係になる。

 

1. 部長や課長が標準書を作成

昔聞いた話ですが、ある外資系の半導体工場の例です。その工場では、部長、課長が現場の作業標準を作っているという話でした。他の企業はどうなのかはわかりませんが、管理職レベルでそこまでやるのかと感心したことがありました。

 

理由を聞いてみると、部長、課長が作業標準を作る場合、その作業にかなり精通していなければできないのです。それまでの知識や推測では作業標準書は作れません。特に、作業標準ではポイント、急所を押さえると言うことを書き添えることが重要ですが、そのことが非常に難しいので、頻繁に現場に入り、確認したり、現場の人に聞いたりするわけです。そこで相互の関係が出てきます。

 

QC7つ道具の一つに特性要因図というのがあります。“原因と結果との因果関係を図にしたもの”です。これも、机上で曖昧なまま、多分こうだろうと推測で書いてしまうと、ポイントがずれていたり、原因を探る方向が違ってしまいます。ですから現場に足を運ぶこと、可能な限り現場で確認しながらその図を書き上げることが重要です。

 

その管理職もこの標準できちんと作業が出来るのか。ミスが起きないのかと様々な見方で完成度を高めていくのです。勿論完璧にできない場合もあるので、見直し、フォローをします。作っただけで終わりにはしないのです。そこで不具合が見つかれば、修正していきます。

 

『標準は書き換えるためにある』と言う言葉もありますが、実情に合わせ、修正して行くことで、生きた、使える標準にして行くことが重要です。この過程で、管理職と現場の関係は密になります。ここまでできなくても、現場に足を運ぶことは価値あることです。

 

私があるところで耳にした言葉があります。『現場の奴らは』と言う言葉でした。現場からは遠い部門の方でした。恐らく現場のことは全く知らないのでしょう。私も現場出身です。これを聞いてかなり憤りを感じました。現場を知らない人の発言であっても、その現場の人が一生懸命頑張って作り込み、それで得た稼ぎを配賦という形で、恩恵を受ける訳です。

 

こんな言葉を吐き出しながら、現場を見下した仕事をしているのかと思うと腹立たしいです。これは何十年経っても心の痛みとして残っています。その職場の上長はどのような人なのか、どのように育てているのかと考えてしまいます。私が訪問した時に遭遇した言葉ですが、そのようなところを次に訪問すると、対応する人が変わっていたり、退職されている場合もありました。これは一回だけではありません。

 

本当にたくさんの現場を見てきましたから、会社によってもこんなにも現場の見方がちがうものかと思いました。先ほどの例とは対照的です。ベクトルが合うか否かで、その会社、現場の体質が強いかどうかが左右されると思います。『社員を大切にしない会社、部下を大切にしない上司から人は離れていく』のです。

 

今、少子化の影響などで多くの分野で人財不足が騒がれていますが、先ほどのように人が入れ替わり、立ち替わりでは安定した現場はできません。またそれらが噂として拡がると人も集まらなくなってしまうでしょう。グッドマンの第二法則 注1)

 

ひとり一人を大切に育てて行くことが大切です。それがやがて自社の永続的な経営に直結すると考え対です。私が、人財と言う字を使うのも、“人を材料扱いしていているうちは育たない。財産としてきちんと育てることが大切だ”と考えているからです。勿論、財産も大切に扱わないと減ってしまうこともあるので、真剣に育てることが重要です。

 

人が入れ替わってばかりだと、いつも同じレベルの人たちばかりで、企業の成長は見込めないでしょう。

 

注1)米国のジョングッドマンという人が唱えた法則。

「苦情処理(対応)に不満を抱いた顧客の非好意的な口コミは、満足した顧客の好意的な口コミに比較して、二倍も強く影響を与える」 と言っています。簡単に言うと、“ネガティブな口コミは、2倍の人に伝わる”と言うことですが、同じような解釈ができます。つまり、悪い情報は良い情報よりも速く、広く拡散すると言うこと。それによって、将来“人”そのものが集まらなくなってしまうかも知れません。

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◆関連解説:クリーン化って掃除のことだとの先入感が未だに多いようです。簡単に説明します。

 

クリーン化のことを知らずして、ものづくりの現場で“旧態依然”のまま生産活動を続けてしまうのはもったいないです。私が訪問したところでは、“クリーン化無くして、品質なし!”とのキャッチフレーズで頑張っているところもありました。この大切さを伝えたいと思っています。しばらく、この部分は残しておきます。

 

クリーン化について(その126)人財育成(その27)現場へ足を運ぶことの大切さ

 

次回に続きます。

 

【参考文献】 
清水英範 著、 「知っておくべきクリーン化の基礎」諷詠社 2023年
    同    電子版 「知っておくべきクリーン化の基礎」、諷詠社 2023年
    同   「日本の製造業、厳しい時代をクリーン化で生き残れ!」諷詠社 2012年

 

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この記事の著者

清水 英範

在社中、クリーン化25年の経験、国内海外のクリーン化教育、現場診断・指導多数。ゴミによる品質問題への対応(クリーン化活動)を中心に、安全、人財育成等も含め多面的、総合的なアドバイス。クリーンルームの有無に限らず現場中心に体質改善、強化のお手伝いをいたします。

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