これまでクリーン化の事例などを色々書いてきました。今回は『クリーン化とは何か』について原点に戻り解説します。
今回「クリーン化の原点」を解説する理由は、今でもクリーン化とは「掃除のことでしょう」という先入観をお持ちの方が多いと感じるからです。これは、間違っているわけではなく、クリーン化という言葉、その意味が特定の分野に限られて使われ、一般には普及していないからです。
一方でクリーンな政治とか、富士山クリーン作戦、海岸のクリーン活動という言葉から綺麗(きれい)にすることを連想したり、イメージができてしまっている部分もあります。連載の第1回は『クリーンルームを保有している企業で使われているクリーン化』についてです。
1、ものづくり企業におけるクリーン化
ものづくり企業におけるクリーン化は、お金をかけずにできる利益向上活動であり、企業体質強化、業績改善に直結していると言われてきました。これは企業競争力の根幹といわれ、その技術とノウハウは長い間門外不出でした。企業競争力向上のノウハウゆえ、他社には手の内を見せない、教えないということです。
従って他社からの技術入手が難しいことから、それで諦めてしまうのではなく、自社独自の技術を確立し、体質強化に結び付けることが重要となりました。
逆に、企業競争力の根幹ですから、他社には技術流出をさせないことも重要です。例えば、自社で苦労して築き上げてきたノウハウを、安易に同業他社に公開してしまうと、製品品質や価格にも差がなくなり、競争力は低下してしまいます。そうならないよう自社独自の技術を確立させ、強い現場を構築していき、他社に負けないものづくり基盤を目指していくことです。
そのことを理解している企業では、クリーン化を重要な活動に位置づけ、かつ日々技術を蓄積、継承しています。自社独自のノウハウ構築は、自社の特色が出るので定着するのです。
2、クリーン化は、ものづくり現場の基本
クリーンルームを保有する企業にとって、クリーン度(清浄度ともいいます)の維持、管理は最も大切な基本要素です。つまり現場を綺麗にするのは、ものづくりの現場での基本なのです。
製品の歩留まりや信頼性は、製品の製造過程でのパーティクル(微粒子)や不純物イオンに大きく左右されます。これら不純物をどう管理、制御するかによって企業の競争力が決まってしまいます。つまり、現場が綺麗でなければまともな製品が作れないということです。
3、半導体製造での事例とセミナーでの出来事
半導体製造では、こんなことがありました。どのメーカーでも同じ製品を作っているという半導体の世代のことです。同じ製品でも、A社が作ると歩留まり90%、B社では30%、こんなには差が出なかったかもしれませんが、いずれにしても大きな差が出てしまう。もちろんA社では黒字、B社では赤字になってしまいます。
そのB社でもある程度歩留まりが得られているので、製品を作る力はあるわけです。でも利益的には大きな差が出てしまいます。沢山利益を出しているA社は裏で何をしているのか分からない。その分からないことの一つが、恐らくクリーン化であろうということが徐々に分かってきたのです。
クリーン化は、このようにノウハウを広く公開しない閉鎖的な技術なので、なかなか世の中には普及しないわけです。
私もクリーンルームを保有する企業に勤務していましたので、クリーン化という言葉は当然のように使っていました。ところが一般には、普及していない、理解ができないこともあるわけです。その例を紹介します。東京でのセミナーのことです。
セミナーを始めてから名簿を見ると、ある大手電力会社の女性が受講していることに気が付きまし...