クリーン化というとクリーンルームの中のこと、或いはクリーンルームを持っている会社のことと思ってしまうかもしれません。しかし、クリーンルームの中を綺麗にする、或いは綺麗な状態を保つためには、『出勤する時からの気遣い、心遣い』が大切です。また、クリーンルームを持たない会社でも、出勤する時は気持ちを新たにしたり、引き締めるのと同時に、清潔な服装に心がけて欲しいものだと思います。
ものづくり企業では、たいていの場合、社服(ユニフォーム)があると思います。私服で出勤し、更衣室で社服に着替えるというのが一般的です。私服には、花粉や埃、冬は道路に撒く融雪剤の飛散粉や雪、海沿いなら塩分など色々なゴミが付着するので、更衣室で着替えます。ただし、個人に割り当てられるロッカーの幅は狭い場合が多いので、私服のゴミ、汚れが社服に若干転写するものもあります。それでも大体のゴミ、汚れは更衣室のロッカーに置いて来るということです。さらにクリーンルームに入る場合は、次の更衣室で防塵衣に着替えます。
クリーンルームには、わずかの塵も持ち込みたくないので、社服を脱いでハンガーにかける場所と、防塵衣を着用する場所は距離を離してあるのが普通です。社服と防塵衣の接触の機会を作らないためです。そしてエアシャワーを浴びてクリーンルームに入ります。ここで人の行動に着眼すると、汚れたものは順次更衣室に置いてクリーンルームに近づく、つまり段々綺麗になって行くことです。逆に汚れに着眼すると、汚れが少なくなっていく希釈の考え方になります。その間にあるのが更衣室という関所です。
更衣室はなぜあるかを聞くと、大概の場合、着替えるところという返事が返ってきます。それよりも深く考える機会はあまりないと思います。クリーンルームの4原則の“持ち込まない”という部分です。ところが、ラフなクリーンルームや、クリーンルームを持たないものづくり企業の中には、社服はありません。私服に直に防塵衣を着用しています。とか、更衣室はありませんので、自宅から社服を着て出勤します、という会社もあります。
先ほど、なぜ更衣室があるのか、なぜ着替えるのかということを説明しましたが、そのことが考慮されていないのです。かなりのゴミ、汚れがものづくりの現場に持ち込まれるだろうことが推測できます。現場がクリーンルームであった場合は、取引先から品質向上のため、クリーンルームにするよう要求された場合が多いです。ただし、そのクリーンルームの管理などの指導はしてもらえない場合が多いです。
クリーンルームにすると品質や歩留まりが向上するという神話や思い込みでやってしまうとこういうことが起きます。また、クリーンルームにすることを要求した取引先でさえ、クリーン化のノウハウを持ち得ていない場合もあります。すると、なぜ品質が向上しないのか、その理由、原因が双方ともにわから...