クリーンマットを使ったある社長の行動事例

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 クリーンマットは、靴や台車の汚れを取ることが目的ですが、汚れたものを剥いで捨てるだけの繰り返しではもったいないです。クリーンマットは、綺麗さのバロメータと考えることも出来るからです。

 付着した汚れや足跡の向きを観察することで、どこが汚れているのか、どんな汚れなのかが分かると、それに対して対策が取れます。その改善の繰り返しで段々綺麗になり、クリーンマットがあまり汚れなくなるので剥がす回数も減って来て、剥がす工数、剥がしたゴミ、クリーンマットの費用等が削減されていきます。 
  

1・クリーンマットを使ったある社長の行動例

 クリーン化指導としてある取引先を訪問した時のことです。この会社の現場はクリーンルームではありませんでしたが、精密製品を扱うので出来るだけクリーンな環境にしようと、日頃から清掃を徹底しているとのことでした。 

 そして製造現場付近の廊下の天井に、クリーンマットを1枚ずつ剥がしたものが1のように吊り下げられていました。社長にこれは何かと聞いたところ、「作業エリアも廊下もゴミが沢山舞っている。そのことを従業員に知らせたかった。作業エリアでは、動作行動が激しいとゴミが舞い上がり、製品品質に影響するだけでなく、事故、災害等安全面でも心配だ」と言うことです。

クリーンマットによる浮遊塵の見える化
図1.クリーンマットを使った浮遊塵の見える化

 浮遊塵があると言うことは社長自身も知っていて、走ったり、激しい行動は慎むよう日頃から社員に口頭で説明したり、気になる時には注意していたが、中々良くならないので、浮遊塵を見せて訴えられないか実験的にやって見たとのことでした。 クリーンマットの下を通行するとき、天井の蛍光灯の光によってゴミが透けて見え、その凄さに自分でもびっくりしたと言っていました。社員も当然ながら驚いたようです。それからというもの、作業者は作業エリアでも、また廊下でも静かに行動するようになり、微小災害が減ったとの説明でした。

 これは口頭で説明するだけでなく、ゴミを可視化して訴えると言うことです。人の耳の周囲には一説によると2千~3千位の神経があり、これで情報を集めているのだそうです。一方目の周りには2万近くの神経があり、情報収集能力は耳よりもはるかに多いため、視覚に訴えることの効果が大きいと言われます。

 その会社では、作業エリアにはハエ取りリボンが沢山吊るしてあり、その下には水の入ったシャーレが置いてありました。こんなに沢山虫がいるのかと聞くと、「浮遊したゴミがリボンに付着するんです。廊下のクリーンマットと同じです。そして落下したゴミがシャーレにも浮くんです。クリーンルームではないですが、精密製品を扱うので、作業者にゴミを意識させたいのです。ハエ取りリボンを吊るして見ると、想像以上にゴミが付着することが分かりました」と言います。さらにハエ取りリボンを吊るしてある時は、シャーレに落ちて来るゴミの量はさほどではないが、交換日にそのリボンを外しシャーレだけになった時は、シャーレに落下するゴミは多いと言うことが分かったそうです。 

 これは、浮遊塵と落下塵の両方あると言うことに気がついた例ですが、人がいなくても浮遊するゴミはあります。歩くなど人の活動によって起きた風で、それまで浮遊出来ずに床に落下していたゴミも舞い上がります。しかし大きなゴミは重いためやがて落下します。それがシャーレに浮いていたと言うことです。 

 今ではクリーンルームを持っているところは、浮遊塵(パーティクルカウンターによる測定)と落下塵(ウエハーや石英基板などを作業工程にある時間放置し、付着したゴミを測定機で測定する方法)の両方で、クリーンルームの清浄度を管理することが広く知られていますが、クリーンルームを持たない会社ですから、そのようなノウハウは持ち合わせていなかったはずで、それをその社長は自分の発想の裏付けを取...

 クリーンマットは、靴や台車の汚れを取ることが目的ですが、汚れたものを剥いで捨てるだけの繰り返しではもったいないです。クリーンマットは、綺麗さのバロメータと考えることも出来るからです。

 付着した汚れや足跡の向きを観察することで、どこが汚れているのか、どんな汚れなのかが分かると、それに対して対策が取れます。その改善の繰り返しで段々綺麗になり、クリーンマットがあまり汚れなくなるので剥がす回数も減って来て、剥がす工数、剥がしたゴミ、クリーンマットの費用等が削減されていきます。 
  

1・クリーンマットを使ったある社長の行動例

 クリーン化指導としてある取引先を訪問した時のことです。この会社の現場はクリーンルームではありませんでしたが、精密製品を扱うので出来るだけクリーンな環境にしようと、日頃から清掃を徹底しているとのことでした。 

 そして製造現場付近の廊下の天井に、クリーンマットを1枚ずつ剥がしたものが1のように吊り下げられていました。社長にこれは何かと聞いたところ、「作業エリアも廊下もゴミが沢山舞っている。そのことを従業員に知らせたかった。作業エリアでは、動作行動が激しいとゴミが舞い上がり、製品品質に影響するだけでなく、事故、災害等安全面でも心配だ」と言うことです。

クリーンマットによる浮遊塵の見える化
図1.クリーンマットを使った浮遊塵の見える化

 浮遊塵があると言うことは社長自身も知っていて、走ったり、激しい行動は慎むよう日頃から社員に口頭で説明したり、気になる時には注意していたが、中々良くならないので、浮遊塵を見せて訴えられないか実験的にやって見たとのことでした。 クリーンマットの下を通行するとき、天井の蛍光灯の光によってゴミが透けて見え、その凄さに自分でもびっくりしたと言っていました。社員も当然ながら驚いたようです。それからというもの、作業者は作業エリアでも、また廊下でも静かに行動するようになり、微小災害が減ったとの説明でした。

 これは口頭で説明するだけでなく、ゴミを可視化して訴えると言うことです。人の耳の周囲には一説によると2千~3千位の神経があり、これで情報を集めているのだそうです。一方目の周りには2万近くの神経があり、情報収集能力は耳よりもはるかに多いため、視覚に訴えることの効果が大きいと言われます。

 その会社では、作業エリアにはハエ取りリボンが沢山吊るしてあり、その下には水の入ったシャーレが置いてありました。こんなに沢山虫がいるのかと聞くと、「浮遊したゴミがリボンに付着するんです。廊下のクリーンマットと同じです。そして落下したゴミがシャーレにも浮くんです。クリーンルームではないですが、精密製品を扱うので、作業者にゴミを意識させたいのです。ハエ取りリボンを吊るして見ると、想像以上にゴミが付着することが分かりました」と言います。さらにハエ取りリボンを吊るしてある時は、シャーレに落ちて来るゴミの量はさほどではないが、交換日にそのリボンを外しシャーレだけになった時は、シャーレに落下するゴミは多いと言うことが分かったそうです。 

 これは、浮遊塵と落下塵の両方あると言うことに気がついた例ですが、人がいなくても浮遊するゴミはあります。歩くなど人の活動によって起きた風で、それまで浮遊出来ずに床に落下していたゴミも舞い上がります。しかし大きなゴミは重いためやがて落下します。それがシャーレに浮いていたと言うことです。 

 今ではクリーンルームを持っているところは、浮遊塵(パーティクルカウンターによる測定)と落下塵(ウエハーや石英基板などを作業工程にある時間放置し、付着したゴミを測定機で測定する方法)の両方で、クリーンルームの清浄度を管理することが広く知られていますが、クリーンルームを持たない会社ですから、そのようなノウハウは持ち合わせていなかったはずで、それをその社長は自分の発想の裏付けを取りながら可視化したと言うことになります。現場を、そして自分の会社をいかに良くするかを真剣に考えている証拠です。 
   

2.経営者、管理者は行動で示せ

 先進のクリーンルームでは、浮遊塵や落下塵、及びそのゴミの分析は、数字やデータで報告されることが殆どで、これでは従業員がピンと来ません。この社長がやったことは原始的なように見えて、可視化して訴え、従業員が行動を起こすきっかけとしては非常に効果があるものです。従業員が、自分の問題として考えるようになると言うことで、経営者、管理監督者の模範のようです。

  別の記事で、“現場に日を当てる、現場に日が当たる”がありますが(https://www.monodukuri.com/gihou/article/566)、これを自ら行動で示した例でもあります。

 こういう会社の社員は幸せでしょう。日頃から口うるさく指示命令するのとは、おのずと成果に違いが出るはずです。

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この記事の著者

清水 英範

在社中、クリーン化25年の経験、国内海外のクリーン化教育、現場診断・指導多数。ゴミによる品質問題への対応(クリーン化活動)を中心に、安全、人財育成等も含め多面的、総合的なアドバイス。クリーンルームの有無に限らず現場中心に体質改善、強化のお手伝いをいたします。

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