◆ 日常生活に見つけるクリーン化の着眼点
現場を見て不具合を探そうとしても、構えてしまうとなかなか見つからないですね。そして単発的に目に付いたことだけで終わってしまいます。でも、多くの不具合は、日常生活の中でも見つけることができます。
私がいろいろなところに出かけ、現場診断、あるいは講演を実施する時に、一旦応接室か会議室に待機することが多いです。そこで、会社側の方と面会したり、挨拶するのですが、そこに行くまでに何があるかわからないので、早めに到着するようにしています。すると、その待ち時間に余裕ができます。その時間も私に取っては貴重な時間です。
例えば、ドアを開けて入室する時のドアノブの感触を気にします。ガタガタという感触があると、緩んでいると感じるわけです。この場合、その感触から、ドアノブが抜けないか、あるいはその動作の時、金属粉などが発生、落下することがないかと言うことが心配になります。
また、ドアを押して、または引いて開けるときの蝶番、ドアクローザーの様子を見ます。蝶番が劣化していると、その周囲が黒くなっていたり、汚れが床にも落下している場合があります。ドアクローザーの上に、綿埃のようなゴミが堆積している場合も見かけます。手を放した時のドアクローザーの動きも確認します。劣化が進んでいると、ドアクローザーの動きがぎこちないです。そして、閉まり終わる直前にぴょんと跳ね上がったりします。ドアが閉まった時、折りたたまれる部分が相互に擦れている場合があります。
こうなると、発塵だけでなく、さらに劣化が進みます。蝶番の固定ネジが緩んでいるとやがて外れます。ドアクローザーがぶら下がると言う感じになります。その場合は開閉中に外れるので、それが人に当たることがあります。そのネジが落下していて、人が踏むと、捻挫などをすることが考えられます。人の足(主に足裏)は瞬時に、そして敏感に反応し、それを避けようとします。その時起きるのです。
蝶番は中央に軸があり、それを中心に回転しますが、開閉頻度が多いと、徐々に劣化し、ドアは蝶番取り付け側の反対側に傾きます。するとドアが傾くので、周囲の枠に接触し、金属粉が発生、開閉のたびに飛散します。
きちんと閉じなくなるので、操作が雑になり、益々劣化が進みます。蝶番が錆びているところも見かけますが、この錆も擦れて落下します。蝶番の軸は、徐々に上に抜ける傾向があります。特に上の方ほど上側に抜ける量が多くなる傾向があります。やがてこの軸が外れると、ドアが外れるわけです。ドアの上側が先に外れるので、ドアが倒れるような外れ方になります。
これらは、よく観察することに心がけていると、入室の際にある程度瞬時に確認できるようになります。講義の最中に事例として指摘すれば、聞き手もわかりやすいでしょう。自社の実例を提示して貰えるので、実感が沸く、つまり生きた教材です。
◆やろうと思っているけど できないことばかりの克服【連載記事紹介】
私が在社中に、ある管理職から「お前は教育だけやっていれば良い」と言われたことがありました。案の定、そういう人に限って現場には入らないのです。私は、先ほどのように、現場の事例を教育に反映させることで効果が期待できると考えています。それは話ではありますが、二次的な体験学習の場だと思っています。このあたりで、現場を見ているか否かの違いから話が食い違うことがありました。
幸いにも私の上司ではありませんでしたが、理論、理屈で押してくるこのようになるのです。実際に話してみると、この人は現場に入っているかどうかは大体わかります。
ここまでに紹介したことは現象ですが、そのままにしておいた場合どうなるか、を考えて見ることが大切です。“先を見る、考える”と言うことが重要です。すると先手が打てることが多いです。これは設備の予防保全と同じ考え方ができます。設備も付帯設備も予防が重要です。多くの人が関係するので、事故が起きてからでは遅いのです。
これらから、金属粉の発生:これらは重いゴミなので、床に落ちる物が多いでしょう。これがドアの開閉の度に、その風で飛散します。人の靴底、台車の車輪に付着し、もっと広範囲に拡がるでしょう。それらは当然クリーンルームにも持ち込まれます。
蝶番の変形、軸の浮き上がり:これはドアが外れるかも知れません。この事例も幾つか見てきました。そうなると安全面だけで無く、その場所の通行ができなくなります。エアシャワーや二次更衣室で起きれば、室圧の変動に繋がります。そして清浄度が大きく低下するでしょう。生産活動に対しては、大きな損失になります。早めに手を打つことで事故を防ぎ、対応も短時間でできます。
待機時間を上手く使えば、もっと多くのことに気がつくでしょう。それらは、その企業にもきちんと...