クリーン化について、前回から人財育成に触れています。今回のその2は、ルールがある理由とその理解についてです。
【この連載の前回:クリーン化について(その96)人財育成(その1)へのリンク】
◆ルールはあるけど、守るかどうかは別
“クリーンルームを汚すのも綺麗にするのも人である”といわれます。ところが、それだけでは聞いただけで終わってしまいます。その“人”とは自分のことだとの認識、自覚には辿り着かないでしょう。
この、自分のこととして引き寄せる、そして考えることが重要なことです。それを自らができれば、行動に繋がるのだと思います。押しつけでは、受け身になってしまい、行動には結びつかないのです。促しは命令の第一歩と言いますが、やはり入り口が重要なのです。
日本では、請求しないと貰えない、サービスを受けられないものもいろいろあります。定年になると、それまで会社でやってくれていたたことを、自分がやらなければいけないのです。知らなかった、うっかりしたというのは自己責任になってしまいます。
特に退職直後は役所に足を運ぶことが多いのですが、理解できないこともあります。どうして?なぜ?と聞くと、ルールですから、決まりですからと言う返答ではそれから先に進めません。今は改善されてきたと感じます。
さて、クリーンルームを持つ企業でも、同じようなことが起きていないでしょうか。
クリーンルームに関わる人に対しては、様々なルールがあります。でもそのルールはあっても、その理由が理解できていないと、その通りやるかどうかは別な話です。理由が理解できなければ、自分の問題として引き寄せる、つまり当事者意識には至らないのです。その当事者とは自分のこと、そこまで考えられるよう指導すると言うことが非常に難しいです。
例えば、昔のお姑さんは、厳しかった。
お嫁さんに、「掃除をする時は、寝床からやりなさい」、と言った。これはショートカットのことばです。どうしてか聞くこともできず、理解できないまま、長年言われたとおりやっていたと言うケースもあります。
その理由は、“寝室には布団がある。昔は綿の布団がほとんどだった。綿は繊維が短く、どんどん脱落しゴミになる。寝室は発生源であるのだ。それを、別な部屋から掃除を始め、最後にその発生源である寝室の掃除をすると、埃だらけになって、またやり直しになる“ということを言っているのです。その理由までは教えてくれない。それを理解しないうちに、厳しく言う人がいなくなったら、自分の思い通りにやるようになるのでしょう。
クリーン化での掃除の手順は上から下へ、奥から手前です。これも上流から手を打つと言うことです。
クリーン化では、面倒なこともルールになっています。このルールも、ショートカットのことばです。なぜを理解するには至らないのです。なぜを知る、考えることができなければ、面倒なことは省かれてしまいます。本当の意味を理解すれば自分の問題として引き寄せられるでしょう。
“掃除は寝床から”というのは昔の人の知恵ですが、ショートカットのことばです。このようなことが日常に溢れているのではないでしょうか。
言われたからやる。これは一面(表面)です。このように私たちは、一面、または二面(比較対象―暑い、寒いと言う風に)で物事を見てしまうことが多いです。“昔からそう言うでしょう”で説明したことになってしまうのです。これを、より多面的に見る、深く考えることができるように育てたい。それには、指導する立場の人も、そのことに磨きをかけて行きたい。人を育てると言うことは自分も育つのです。
このことがクリーン化を定着させる最大のポイントだと考えます。
クリーン化だけでなく、企業人として育てるためのポイントでもあるでしょう。そのような育ち方をしてきた人たちは、やがてその企...