今回は、クリーンルーム内の気流の見方を解説します。
1. 層流方式のクリーンルーム
設計上は天井から床に向かう気流になります。しかし天井からの供給エアーと床のグレーチングの開口面積のバランスや、クリーンルーム内の様々な障害物によって、気流の乱れが起きます。
例えば天井下に搬送ライン(天井搬送)があるとか、製品運搬ロボット、あるいは除給材用のロボットがあるなどです。それにより、斜流や乱流が起きます。斜流や乱流が起きると、製品へのゴミの付着などが考えられます。斜流が発生しているところでは、下流の製品や部品が影響を受けます。
2. 乱流方式のクリーンルーム
乱流方式では、天井の所々からきれいな空気が供給されますが、その設置個所はかなり離れています。そして室内で滞留している空気が多いので、それにぶつかるなどで気流は乱れます。
この方式のクリーンルームの場合、きれいな空気を少しずつ供給し、中の汚れを少しづつ薄めていく、希釈型のクリーンルームです。室内には様々な設備があり、作業者も多いので気流の流れを阻害したり、移動することで床の堆積物を巻き上げたりします。乱流とまとめて言ってしまっていますが、斜流、流れの強弱、あるいは気流が巻くところも発生します。斜流の傾斜角度が緩やかな場合は、微粒子が遠くまで運ばれることになります。
また、薬品の雰囲気がクリーンルーム内に浮遊する場合もあるかも知れません。この場合は、品質への影響だけでなく、作業者への影響も考慮しなければいけません。酸などの特定薬品を使っている現場の作業者は、定期健康診断の時に、半年に1回は歯科検診もあります。(エナメル質等の酸による溶解の有無確認)これはその現場の全員が対象ですが、自分の現場はどうなっているのかを確認することは重要です。
例えばドラフトなどの扱いが悪く、確実な排気がされず、クリーンルームに吹き出していることがないよう日ごろから確認することが大切です。
3. 気流の可視化
これらの気流は目に見えないので、可視化して改善、対策を取る必要があります。この気流の可視化について、次の図で説明します。
図.気流の可視化
① 絹糸で見る
気流を簡易に観察する場合、この方法が良く使われます。
なぜ絹糸を使うのでしょうか。絹糸は蚕が吐く糸です。野麦峠の映画にもあるように、明治時代から長野県岡谷市には製糸工場がたくさんありました。現在はわずかになっていますが、その、ある会社の方の話を聞くと、蚕は1匹で1,000mから1,500mくらい吐くようです。つまり長繊維(繊維の長さが長い)です。長繊維は繋ぎがなく、ゴミが出にくいのです。
蚕も人間と同じように気まぐれだそうで、一度吐き始めるとそのまま一気に吐いてしまうもの。途中で吐くのをやめてしまい、もう終わりかと思うと、また思い出したように吐き始めるもの、はじめは太いが、終わりの方は糸が細くなる。あるいはその逆のものなど様々なようです。
ただし、人間の目ではクモの糸を見るようなもので、その差はわかりません。その糸をおよそ33本から35本束ねたものを、気流確認に使っています。本数が少ない方は接着剤で束ね、多い方はそれをしないことで、糸の重量をほぼ同じくらいにしているようです。
この本数がもっと少ないものは軽過ぎて、わずかな気流でも影響を受け、きちんとした確認ができません。
私の住んでいる近くに、国の蚕糸試験場があります。見学させてもらった時に、絹糸のことを聞いてみたところ同じような話でした。
国の蚕糸試験にはさまざまな国で作っているものが展示されていて、色も黄色やピンクなど豊富です。それらの国の多くは中国から西の方に点在しています。シルクロードとほぼ一致する地域です。
綿の糸ではだめなのかですが、綿の糸は、原料は“わた”です。これは短繊維(繊維の長さが短い)であり、使っているうちに、短い繊維が少しずつ抜け落ちます。これを糸が細る、とか糸が痩せるなどと言うこともあります。この抜け落ちた繊維がゴミになるので、製品品質に影響することがあります。
② 絹糸の使い方
ゴミの出ない棒状のものの先に付け、測定者の体から離して(遠くして)気流を見ます。魚釣りのイメージです。測定者に近いと、その影響を受け、本来の気流と異なってしまうからです。気流の上流と下流の確認、気流の巻き方などを確認することで、作業エリアのレイアウトの検討もで...