前回の現場診断・指導について(その2)に続いて、解説します。これまで、現場の監査や診断について説明してきました。これらの機会は人財育成の場としても活用できます。例えば、監査に行く、あるいは堅苦しい場面でなくても、現場診断・指導の機会があればクリーン化担当や後継者、現場のリーダーなどを連れて行くと良いです。
このような立場にある人には、レポートや写真、論文などを見せて学ばせて育成しようとしても、なかなかぴんと来ませんが、その場に立ち会わせることで効果が期待できます。理論よりもその場を直に見せ、現場の不具合を見つけ、内容を説明する。これは生きた教材であり、人財育成の場です。ただし大勢を引き連れてということは避けましょう。
このような育て方をしていくと、日常的に現場を良く観察するようになるだけでなく、現場監査の受審前に、対象の現場を“鑑査を意識した目”で見てもらうこともできます。そして改善していく、その積み重ねで当日の指摘事項も減るでしょう。
また、不具合や着眼点について説明できるようになり、診断する立場、受審する立場、どちらでも対応ができるようになります。もちろん、幅広い知識や、多面的な見方、考え方が必要になります。それらは自ら学ぶことも必要ですが、様子を見ながらアドバイスをしていけばよいでしょう。
説明する立場では、如何に相手に納得してもらうかなど、相手の立場を理解しながら説明することが必要なので、説明の仕方も工夫するようになります。つまり、現場を見る力がつくだけはなく、その個人が育つ機会になります。
これはクリーン化以外にも応用、活用できます。ちょっと飛躍するかも知れませんが、バランスよく育つことに繋がると考えています。
さて、私が他社診断する場合のイメージを紹介します。
会社全体の雰囲気を把握する。
初めて訪問する場合は、特に事前準備が必要です。海外であれば国民性、国内であれば県民性やその地方の風土などです。もちろん完璧にはできないですが、それらをもとに、話の切り出しや話題ができます。そこで、事前に把握したことと違う情報が出る場合もあるので、その場で対応方法や話題を選びます。違ったということは、その分情報が増えたと捉え、次回、あるいはその他の場でも活用できます。
このような準備をしておかないと、その会社に着いて、「さあ現場見せてください」という始まり方になってしまい、監査、診断の場が味気ないものになってしまいます。
監査、診断を価値ある時間にするための準備時間ですね。文化、風土を把握しておくと、言葉選びもスムーズにいきます。国内では、表日本と裏日本の方違いを感じます。私の勝手な思い込みかも知れませんが、日照時間にも関係しているように感じます。従って話のやり取りができているのかの把握も重要です。
さて、その会社の受付に到着し、担当者が迎えに来るまでの間に周囲を見たり、廊下を歩きながら清掃具合を観察します。会社の構内が奇麗に見えたり、清掃が行き届いていると感じる時は気持ちが良いものです。またすれ違う社員の挨拶や様子を見て、雰囲気が明るいなどと感じると、会社と社員の関係は良いだろうなと感じます。
応接室や会議室に連れて行ってもらう時、一般の事務室の内部が見えることがあります。「事務室も奇麗だ。これは今日の診断も厳しく見よう」ということになります。
客先監査で割と多いのは、現場だけをその日に合わせ奇麗にしておくという例です。
現場を良く見ている人が見ると、今日のために慌ててやったのか、日常的に管理されているのかはある程度推測できます。一般の事務室などでも奇麗にしてあるのは、会社全体にその文化が定着していると見ても良いと思います。3S、5Sの定着です。
こうなると、クリーンルームも日常的に奇麗に管理されているはずです。そこで、緩めの診断をして...