今回は清掃の手順について説明します。
清掃手順は、“上から下へ、奥から手前へ”が基本です。クリーンルームの中だけに限ったことではなく共通に使える考え方です。
この写真は、私が中国の工場を指導していた時のものです。
クリーン化担当と一緒に工場を巡回した時、「この作業台はどのように清掃するのか」と聞いたところ、その担当が答えるのではなく、奥の方にいた現場の課長を呼んできて、「ここを清掃して見せてください」と言うのです。
その課長は、ワイパーを持ってきて、“上から下へ、奥から手前へ”とやっていました。「ああ、基本はできているな」と思いましたが、その動作を良く見ていると、清掃した後を懐中電灯で、斜光で観察しているのです。
斜光でゴミを見ることは、元々習得していたのですが、自分のやった仕事の確認をしているのです。拭き残しはないか、やったことが良いのか、その出来栄えを自分で評価するということです。これは、自分の仕事を保証するということにもなります。
私が入社した時、腕時計の組み立て部門にいました。
職場の先輩から、この作業台を掃除しておきなさいと言われ、掃除したのですが、ここに拭き残しがあるでしょ。やり直しなさい。などと言われることがあった。指摘箇所は確かに拭き残しがあった。とりあえずやっただけだった。そんな当時のことを思い出した。
中国の、この拠点は当時1万人いたが、この課長は、「私の担当は1500人」だと言っていた。その管理職がきちんと清掃できる。そして部下にやって見せられるのです。これは、人財育成の基本であり、強みです。今、管理、監督者でこのようにやって見せられる方はどのくらいいるでしょうか。
この、“掃除は上から下へ”ですが、国内の監査で、こんなことがありました。
遠くから監査に来たが、机上監査(書類監査)に時間がかかり、予約した電車や航空機の時間がない。従って、もう現場に入る時間があまりない。それでも、“現場が品質を作り込む”ので、短時間であっても現場に入りたいと言ってクリーンルームに入ったというのです。
その時、床だけ確認して帰ったとのことです。その理由は、清掃は上から下、その最後が床だから、そこが奇麗なら、それ以前の部分もきちんと清掃されているだろうと推測できるわけです。
もう一つ紹介します。
昔のお姑さんは、お嫁さんに、掃除をする時は寝床(寝室)からやりなさいと言った。その頃のお姑さんは怖かった。理由がわからなくても、その通りやったというのです。
昔は、綿の布団が殆どだった。これは、前にも触れたが、綿は短繊維です。繊維が短いので、相互の絡まりが少なく、ボロボロ抜け落ちゴミになる。すると他の部屋を掃除して、最後に寝室を掃除すると埃がたくさん出て、またやり直しになる。発生源からやりなさいと言うことです。
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