前回も述べましたが、清掃などは重要な仕事という認識は薄いことに加え、あまりやりたくないという人も多いでしょう。すると、“私はクリーン化をやったためにケガをした”という被害者意識が増幅し、だんだん距離を置くようになってしまいます。全員活動ではなくなってしまいます。そうならないために、安全教育をまずやっておくことです。今回は、安全教育の解説します。
図.クリーン化活動のステップ展開
ここでハインリッヒの法則に触れておきます。安全教育などを受講された方はご存じだと思いますが、復習の意味でご確認ください。
図.ハインリッヒの法則(重要なことは知っているだけでなく、活用することです)
ハインリッヒの法則は、米国の損害保険会社のハインリッヒという人が唱えた法則です。1件の重大な事故や災害が発生したとすると、その背後には29件の微小な事故、災害が発生する可能性がある。その背後には300件のヒヤリハットが存在するというもので、1:29:300の法則ともいわれます。災害の出現率のような捉え方です。
これを知っているという方は多いでしょう。でもそれだけにとどめず、活用していただきたいのです。“知っている”というのはひとごとで終わってしまうかも知れません。そしてヒヤリハットだったものが、微小災害になり、やがて大きな事故、災害に繋がってしまうかもしれません。自分のこと、自分の職場のこととしてとらえると、具体的な行動に繋がります。
例えば、作業者の話を聞いていたら、今日の朝掃除の時、作業台や設備の下に潜ったら、頭を打ちそうになった。作業台を拭いていたら、隣の作業台との隙間に指が挟まって切れそうになった。あるいは、脚立に上ったら、グラグラして危なかった。このような話があったら、これはヒヤリハットです。放っておくと微小災害だけでなく、大きな災害に繋がるかも知れません。その時点できちんと再教育をしましょう。
具体的には、薬品を使った清掃では、必ず保護メガネ(できればゴーグル型の方が良い)、薬品用の前掛け、エプロンをする。脚立に上る場合、脚立が広がらないよう必ずロックし、一人は脚立の脚を捕まえ支える。電装系は担当者以外は触らないなど、その現場で必要なことは、あらかじめ指導、教育しておく。また、言っただけでなく、巡回し不具合があればその場で指導することが重要です。後で指導しようと後回しにすると忘れてしまったり、訴える力が弱くなってしまいます。
ある会社にクリーン化診断・指導に行った時、安全について話す機会がありました。
次に訪問した時に、作業標準書を見せてもらったところ、その標準書の一番上に、“やらなければいけない”こと、あるいは“やってはいけないこと”が書いてあり、そこには安全のことが記してありました。 “この作業開始前に必ず保護メガネをすること!”という風に。安全最優先の意識であり、その仕組みの一部です。
【良くある微小災害の例】
カッターナイフの扱い中に手を切る事故。これはかなり多いようです。特に指導の必要を感じていないのでしょう。でも、単に切り傷程度で終わらず、深く切って出血が止まらない。あるいは筋を切ったと言う例も聞いています。もしかすると、一度や二度そのような経験をした方も多いのではないでしょうか。潜在的にはかなり多いでしょう。
セロテープ台を使ってのテープを切る場合、ギザギザの部分で手を切ることもあります。あるいは、何かを切った、その切り屑を吹き飛ばしたところ、向かいに遮蔽物があり、跳ね返って自分の目に入った。ドアの開閉の時向こう側の人にぶつかったなど、身の回りには数えきれないほどのヒヤリハットがあり、その先には微小災害が出番を待って待機しています。
安全第一という掛け声だけでなく、実際に自職場の点検を行いたいです。子供たちの通学路の安全確認を、子供たちの目線で実施しているように。
水や純水で作業台を拭く場合、薬品は使用していないので油断しがちです。ところが拭いた水が跳ね返り目に入った。その水の中に金属粉や様々な異物が含まれていて炎症を起こし、眼科にかかったとか。このようなことも労働災害になるかも知れ...