“脱炭素”に向け、海洋藻類から生分解性プラスチック生産の事業化進める
1. PET樹脂の新たな価値求め、事業を推進
株式会社ツカサぺトコ(神奈川県・代表取締役 森田英資氏)の創設は2006(平成18)年3月。合成樹脂の原材料・製品、化学品の輸出入を行うほか、三国間貿易を事業の柱とし、横浜本社以外に韓国(ソウル)、台湾(台北)、中国(上海)に事務所を設けています。
樹脂材料のサプライヤーは台湾はじめ、韓国、東南アジアからで、なかでも飲料ペットボトル用に使用されるポリエステル樹脂は同社売上の4割を占め、日本国内の中堅・大手の加工メーカーや飲料メーカーに納められています。同社では、「時代の変化を見とどける」、「お客様のニーズに応える」、「環境改善に取り組む」といった3つの視点を経営理念に、PET(Polyethylene terephthalate:ポリエチレンテレフタレート)樹脂の新たな価値の創造を求め事業を進めています。
2. ペットボトルリサイクルの事業化に向けて
「年間10万トン程度の合成樹脂原材料(石油由来)を扱っていることからも、SDGs(持続可能な開発目標)に対する取り組みは3年ほど前から始めた」という同社。国内飲料メーカーも「2030年までにペットボトル材料の50~100%をサスティナブル素材に切り替える」といった目標を掲げ、取り組みを推進していることを背景に、台湾のサプライヤーと共同で①「再生PET樹脂の販売」、②「国内に再生PET樹脂の生産供給体制を設けた工場の設置」など、ペットボトルリサイクルの事業化に向けた取り組みを進めています(目標:12、14、15)。
これまでも世界的にリサイクル率が高く、脱炭素の観点から有力な原料として利用されてきたPET樹脂販売を中心とした事業を進める一方、海洋で分解されない樹脂材料による海洋プラスチック(マイクロプラスチック)問題に対する対策についても模索してきたという同社。同社によると、トウモロコシや米、樹木のチップといった植物由来の生分解性プラスチックへの置き換えも検討したといいますが食糧問題はじめ、樹木伐採は地球温暖化防止に逆行することから、これら課題解決に向けた糸口を探る日々が続いたそうです。
3.食用ワカメ・コンブの廃棄物からPHAの抽出に成功
同社は2015(同27)年から、テクニオン・イスラエル工科大学の公式日本組織・テクニオンジャパン株式会社(本社・東京都、代表取締役:石角完爾氏)に出資しています。元々、ユダヤ人でユダヤ教徒の石角氏が、同社の顧問弁護士であったことから、テクニオンジャパンの存在を知り、同工科大がその世界的技術供与戦略の対日窓口として公認する「Friends of Technion」に参加。バイオプラスチック事業を進めるにあたり、テクニオンジャパンを通じ、技術力の提供先を探していたところ、兼ねてからバイオプラスチックの研究に向け取り組んでいたテルアビブ大環境研究所(イスラエル)の存在を知り、同研究所とテクニオンジャパン、ツカサぺトコ3者による共同研究(目標:9)が始まったといいます。
【写真説明】テクニオン・イスラエル工科大学(ツカサぺトコ提供)
同社によると、日本国内で食用のコンブ・ワカメとして使用された後、廃棄されてしまう茎などの残滓(ざんさい)総量は年間約15,000トンに及ぶといいます。2021(令和3)年3月には、同研究所との間にバイオマスを原料として、日本国内での培養や...